コレサワ|彼女の歌になぜ共感するのか、5人の評者がそれぞれの視点で語る

コレサワの1stシングル「憂鬱も愛して」が8月5日にリリースされた。

この曲はコレサワがデビュー前の2014年3月に自主制作盤として発売し、現在は入手困難となっている幻の楽曲をリアレンジしたもの。音楽ナタリーではシングルの発売を記念して、ライターとアーティストによるクロスレビューを企画した。「憂鬱も愛して」という楽曲やコレサワというアーティストの魅力について、5人の評者がそれぞれの視点で迫る。

あの子がヒーローになった日上野三樹

上野三樹

コレサワとは音楽の中にだけ存在する架空の親友である。みんなではしゃいで枕投げをした旅の思い出だってあるし、失恋して夜中に泣いて電話をかけてくることだってあるし、新しい恋が始まればこっちの話なんて上の空で妄想に夢中なんだ。いつだって生きることと恋に必死でジタバタしていて振り回されちゃうんだけど、なんだか憎めない。だってコレサワが歌ってること全部、感じていること全部、身に覚えのある話だから。その痛みも喜びも、なんかわかるから。

生身の、と言ったら変だけどコレサワに初めてインタビューをさせてもらったのは5年前で。「今日できあがったんです、見ます?」と、立派なクマの被り物を見せてくれた。あのときは「れ子ちゃん」というキャラクターをここまで貫き、浸透させるとは思わなかった。何より「れ子ちゃん」がいてくれるからこそ、コレサワが楽曲の中で描くリアルすぎる描写がファンタジックに中和される。それに曲を聴いたリスナーが「私はこんなことがあったよ」と「れ子ちゃん」に話しかけたくなるような効果もあるのだろうか。YouTubeのコメント欄、いつもめちゃくちゃに盛り上がっている。

新曲「憂鬱も愛して」は実はコレサワの楽曲の中ではパーソナル濃度が低いのではないかと思う。そのぶん、今のこの世界中のモヤモヤと、その渦中にいる「君」の思いに全力で向き合おうとする究極のエモーショナルソングに仕上がっている。「思い出せばぎゅっと 悲しくなることがあって」と歌うサビの泣きフレーズは、まさにコレサワ節の真骨頂だが、その小さいながらも消えることのない痛みの種を、何度も何度も握りしめて、さて、それからどうするか──。曲の構成、アレンジ共に、カオティックな熱を帯びながら、1つの答えをちゃんと導き出すところにコレサワのすさまじい進化を感じた。親友だった君が急に、ヒーローに見えたんだ。

上野三樹(ウエノミキ)
音楽ライター / ウェブサイト「YUMECO RECORDS」主宰。株式会社ロッキング・オンを経て、フリーランスに。「音楽と人」「anan」「RealSound」などで執筆中。
「コレサワ 2nd Anniversary君におんがえしツアー」恵比寿ザ・ガーデンホール公演の様子。(撮影:小坂茂雄)

真実のナイフを笑いながら突きつける鹿野淳

鹿野淳

なんでスイカに塩をかけてしまったのか?
なんでカレーライスにカツを乗っけてしまったのか?
なんであんな人に心を奪われ、我を顧みることもなくあんなこともこんなことも捧げ、空っぽになるために充電を繰り返したのか?
なんで終わりが見えるとすぐに永遠という言葉でその闇を塞いだフリをするのか?
なんで誰もいないベッドより誰かが一緒にいるベッドのほうが冷たいのか?
それはきっと全部人間だから。愚かで滑稽で欲張りで、表があるとそれを裏からしか見ることができない生き物だから。傷ついたり失わないと、喜びや幸福を確認できないハートしか持ち合わせていないから──。ご飯を食べても洋服を買ってもローンを組んでも、僕らは自分たちの生理や業になかなか気付けない。そんなことをしても、あんまり痛くはないから。
だけど音楽はイタいし痛い。人が求める歌ほど痛いし、ポップという言葉でデコレートして、死にたくなったり傷つけたくなるようなことを1人ひとり部屋の中に隔離して、裏側からベッタリと歌い鳴らし、伝え、刺す。
コレサワもそう。コレサワの産む全部がそう。もちろんこの曲もそうだし、きっとこれからの曲もそう。しかもコレサワの音楽はメロディアレンジが快適すぎて、余計に歌の中に込めた凶器がはっきりと響く。厄介だー厄介だー厄介だったら厄介だー。
「憂鬱も愛して」じゃない、「憂鬱しか愛せない」って、コレサワは真実のナイフを笑いながら突きつける。それもたぶんずっと、続くこと。コレサワはそれしか歌えない。なぜかと言えば、それだけをずっと歌ってほしいから。

鹿野淳(シカノアツシ)
音楽評論家。「ROCKIN'ON JAPAN」での副編集長を経て「BUZZ」「ROCKIN'ON JAPAN」の編集長を歴任する。2004年に株式会社FACTを設立。2007年3月に「MUSICA」を創刊した。2014年からはロックフェス「VIVA LA ROCK」のプロデューサーを務めている。

女性の立場で女性を描く、現代の女心の代弁者永堀アツオ

永堀アツオ

コレサワの歌声はキュートだ。片足を少し上げるかのような語尾の跳ね方もチャーミング極まりない。そんな、ガールポップ好きの男性リスナーのハートを鷲づかみにするような中毒性のある歌声を持っている彼女だが、ライブの現場では7:3くらいの割合で女性の観客が多く、カップルの姿も見かける。また同性アーティストからの人気も高く、インディーズ最後の配信曲で、YouTubeでの動画再生回数が4000万回を超えた「たばこ」(2017年3月配信)は数々の女性シンガーソングライターにカバーされ、みゆはんやhalca、トミタ栞、SHE IS SUMMERなどへの楽曲提供も行っている。さらにアイドルやガールズグループへのインタビューでも、「最近、ハマってる音楽は?」という問いに、彼女の名前が挙がることが多い。その理由を聞くと、女性たちは口をそろえて「声がかわいい」と答え、「歌詞がわかりすぎる」と続ける。

この“わかる”と感じることができる“共感”という名の感情こそ、コレサワが同性から圧倒的な支持を得ている大きな理由の1つだろう。ポップなメロディ、かわいい歌声、そして、平凡な日常の小さな痛みや悩み、不満や哀しみを切り取った等身大の歌詞。3拍子そろったシンガーソングライターは、女性の立場で女性を描く、現代の女心の代弁者である。コレサワにとって初のシングルとなる「憂鬱も愛して」もまたシンパシーの連鎖を呼ぶだろう。2014年3月にライブ会場限定でリリースしていた幻の名曲をリアレンジ&リレコーディング。少し切なくて、少し凛とした詞がとてもいい。彼女は、憂鬱を忘れるのではなく、愛してあげようと呼びかける。こんな感情や経験は、性別・年齢を問わず、きっと誰にだって──。

永堀アツオ(ナガホリアツオ)
1973年生まれ。実家は街のレコード屋。大学在籍時よりフリーライターとしての活動を始める。雑誌「音楽と人」「FINE BOYS」「SPRiNG」「Steady」、「Real Sound」「Fanplus music」「WHAT's IN? tokyo」などにインタビュー記事を寄稿。
コレサワ(撮影:小坂茂雄)

温かみも寂しさもどこか共感できる天月-あまつき-

天月-あまつき-

音楽という形ない存在の中で、
コレサワさんの描く作品は気付けば傍にいてくれるような
温かみも寂しさもどこか共感できる作品だと感じています。

僕自身、コレサワさんの楽曲をカバーさせていただく中で
自分が体験したことのない経験でも、
身近な歌詞や親近感のあるメロディのおかげで目の前にある世界を想像しながら歌うことができました。

ほかの楽曲然り、「憂鬱も愛して」もなぜか意味もなく夜更かししてしまった日、眠れなくなった夜、ひとりぼっちの朝
さまざまな日常の中で救ってくれる一瞬が存在します。

恋愛ソングと一概に括るのも難しい話ですが、
必ずしも想い人がおらずとも、こうであったらいいな、
こんな思いをしてみたいななど想像の中の世界に飛び込むことができる
コレサワさんの恋愛ソングとしての魅力が、
また1つ世に出ていくのをとてもワクワクしております。

天月-あまつき-(アマツキ)
インターネットの動画共有サイトを中心に活動する男性ボーカリスト。力強くもどこか少年らしさを感じさせるハイトーンのボーカルを武器に、ライブを精力的に行っている。2018年8月には初の東京・日本武道館単独公演を開催。2019年6月、テレビアニメ「7SEEDS」のオープニングテーマを収録したシングル「スターライトキセキ / Ark」をリリースした。

苦しみや悲しみは決して誰かと比べられるものではなくて、常に1対1橋口洋平(wacci)

wacci

コレサワさんの歌のイメージって、ちゃんとそこに舞台が用意してあって、クセがありつつもなぜか他人とは思えない愛すべき登場人物が、泣いたり笑ったり怒ったり嫉妬したりする様を、耳を通して「見せてくれる」感じがあって。

歌詞というものはそもそも文章と違ってある程度文字数も限られてくるわけで、その中で説明臭くならない絶妙なバランスで言葉を割り振って、結果として「見せる」だけじゃなく「伝わる」作品として3~5分の曲になってパッケージされてくるのが、なんていうか職人だなと、いつも感動してました。

でも今回の「憂鬱も愛して」は、まず恋愛だけがテーマになってないのもあると思うんですけど、与えられた文字数のほとんどすべてを主人公の心理描写にベットしていて!
いやーかっこいい!!となりました(笑)。いや、こういう曲もきっと書かれてるとは思うんですが、上記のようなイメージもあってか、逆に僕には新鮮でした。

聞けば何やらデビュー前にリリースした幻の1曲だとか。なるほど、この人はここから始めているのかと。これだけ心を描けるから、舞台を用意しても、登場人物は歌の中でちゃんと生きられるんだなと改めて思いました。

あと何よりこの歌、きっと舞台も登場人物もいらないですね。
それらはこの歌を聴くすべての人が、きっとすでに持ってる。
自分で見た景色や、胸の奥にある気持ちをこの歌に重ねてくことで、たくさんの色を放っていく1曲なんだと思います。

苦しみや悲しみは決して誰かと比べられるものではなくて、常に1対1。
つらいときはつらいとちゃんと感じていいんです。
「自分だけじゃないけど 自分だけな気がするくらい」
から始まる歌、絶対信頼できます。

世界中が大変なことになっている今
この歌が多くの人の心を救うことを願っています。

橋口洋平(ハシグチヨウヘイ)
日常を切り取り、どんな人のそばにでも寄り添って歌う5人組バンド・wacciのボーカルを務める。2009年にバンドを結成し、2012年にメジャーデビューを果たす。人気曲「別の人の彼女になったよ」を含めwacciのほぼすべての楽曲の作詞、作曲を手がけている。
コレサワ(撮影:小坂茂雄)

ライブ情報

コレサワ無観客ライブ配信「HEART BREAK TOUR!!~Home Party~」

配信日時:2020年8月9日(日)17:00~(予定)

※記事初出時、曲名の表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。