Aimer|「絶対に私が歌いたい」 梶浦由記とのタッグで新境地へ

今回のシングルは狂ったように何回も聴いた

──そして、先ほど少し触れられた「ポラリス(haruka nakamura ursa remix)」はエレピと生ピアノ、そしてアコギによる、アンビエントないしはエレクトロニカ的なリミックスになっていますね。

以前「AM02:00」をharukaさんにリミックスしていただいたんですけど(2013年発売の1stミニアルバム「After Dark」に収録された「AM02:00(haruka nakamura La Nuit remix)」 )、今回ご縁あって再び。「ポラリス」の原曲はそれこそ「Sailing」のような壮大な感じのアレンジだったんですけど、こちらは音数も少なくて、ピアノがすごく優しくて、安らかな気持ちになるというか。うん、どんなに拙かったとしても、昔の自分を否定しないで、その時々の自分を受け入れて生きていきたいなという気持ちになりました(笑)。

──ははは(笑)。

そういう意味でも、このシングルの終わりの曲としてもぴったりだなって。「I beg you」からの、この落差の激しい曲たちも、つなげて聴くと自然とそこにたどり着ける感じは、すごく気に入ってますね。「ありがとうございます」と、harukaさんにお伝えしたいです。

──そのお話しぶりですと、リミックスはお任せだった?

はい。おかげさまで、この曲も何回も聴きたい曲になったし……いやでもホントに「ポラリス」は、リミックスといえど「あのときの自分の声はこんなんだったんだな」って改めて感じましたね。私は、自分の昔の曲を何回も聴くことはあんまりないんですよ。だから今回、過去の自分の表現を思い出す機会をもらえて感慨深いというか。うん、さっきも言いましたけど、涙が出てきちゃう(笑)。

──ちなみに「ポラリス」は旅人を乗せた船の歌ですが、これは「航海」をモチーフにした「Sailing」に引っかけてリミックスに選ばれた?

そうですね。シングルに収録するセルフカバーも何かしら表題曲とつながりのあるものを選んでいますし、そういうふうにひと続きの物語みたいにしたいと思っているので。

──おっしゃる通り今回のシングルは「物語」でありつつ、5曲ともまったく表情が異なっている。

そう聞こえていたとしたらうれしいです。実は何回も聴きすぎて、客観的に聴けなくなっちゃったんですよね。私はシングルにしてもアルバムにしても、完成してからけっこう聴き直すんですけど、今回はもう狂ったように聴いてまして。やっぱり自分としても気に入ったからというのもあるし、それをまた自分で客観的に捉えたいと思って聴くんですけど、聴くたびにどんどん客観性が失われていくっていう(笑)。

──最初の「聴いた人がどう受け取ってくれるのかがすごく気になる」という発言ともつながりますね。

今回のシングルは、制作期間がほとんどツアーと重なっていたんですね。だからこそ自分の声帯と向き合いながら作れた1枚だし、各曲のレコーディングでそのときの私のすべてを注いだし、それまでに培ってきた歌声や表現をそこに閉じ込めることができた。そのことは何回聴いても納得できて、自分にとっても大きな意味のある、特別な1枚になった。それだけは確かです。

本当の意味で自分の声帯を理解できた

──ところで、Aimerさんは「Ref:rain / 眩いばかり」(2018年2月発売の14thシングル)リリース時のインタビューで、冬のツアー(「Aimer LIVE TOUR 17/18 "hiver"」)を通して「デビューから7年くらい悩んでいたことに解決の糸口が見えてきたと言うか、ようやく霧が晴れてきた感じがあるんです」とおっしゃっていました(参照:Aimer「Ref:rain / 眩いばかり」インタビュー)。

はいはい。

──そして「そろそろ自分の歌というものを確立できそうな手応えを感じています」とも。このときはあえて突っ込まなかったのですが、確立できました?

もちろん、まだまだ悩むことはあるんですけど、自分の理想とする声色のコントロールが可能になったという意味では、“hiver”ツアーで1つ確立できました。それを経て、まさに今やっているツアー(「Aimer Hall Tour 18/19 "soleil et pluie"」)で、ようやく、本当の意味で自分の声帯のことを理解できたんです。つまり霧が晴れて、声色の奥にある声帯がクリアに見えている状態ですね。

──それは、声帯を傷めないように付き合うとか、そういうことですか?

そういうこともですし、逆に「このぐらい傷めたらこういう音が出るのか」とか。私の声帯ってものすごい面倒臭いんですよ、付き合うのが。ホントに慎重に扱わないとすぐに壊れちゃうし。それはデビューした7年前からわかっていたけれど、どこか漠然としていたんですね。でも今なら、例えば「ポラリス」での自分の声は「声帯がこういう状態だったからああだったんだ」っていうのがわかるというか。あるいは自分の声帯を楽器に例えるなら、いつの時代にどこのメーカーが作ったもので、どういう特性があるとか。

──ああ、チューニングがどうこうではなくて、楽器そのものの癖みたいな。それこそ何年代のビンテージのグレッチだったらこういう音が鳴るとか。

それに加えて、昔はその音しか出せなかったんです。つまりその音がいいから出すんじゃなくて、それしか選ぶものがなかった。でも、今はもっともっといろいろな音も出せる。例えば昔は嫌いだった音も、エッセンスとして足そうとか、そういうこともできるようになってきましたし。

──「Ref:rain」がまさにそうでしたね。

そうですそうです。そうやってだんだん納得できるものを表現できるようになってきて、その1つの到達点が、やっぱり「I beg you」なのかなと。

──最初のほうで「選択肢がありすぎて」というのは、それだけ手札を持っていたということですよね。

ああー、そうか。あと、やっぱりこの曲はいろんなものを要求してくるから、それに応えるのも楽しかったんですよ。昔だったらもう必死で、そんな余裕はなかったと思うんです。だから、まさに今歌えてうれしかった曲だし、これからもっとそういう曲を歌っていきたいですね。なおかつ、それをライブでもお届けすることによって、これからやってくる“今”の表現を皆さんと共有していきたいです。

Aimer「I beg you / 花びらたちのマーチ / Sailing」
2019年1月9日発売 / SME Records
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Aimer「I beg you / 花びらたちのマーチ / Sailing」通常盤

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CD収録曲
  1. I beg you
  2. 花びらたちのマーチ
  3. Sailing
  4. Mine -Mellow Yellow ver.-
  5. ポラリス(haruka nakamura ursa remix)
初回限定盤DVD収録内容

Aimer Fan Club Tour "été"

  • After Rain
  • 7月の翼
  • 星の消えた夜に
  • Re:pray
  • Ref:rain
  • tone
  • セプテンバーさん
  • Black Bird
  • 夏草に君を想う
ツアー情報
Aimer Hall Tour 18/19 "soleil et pluie"
  • 2019年1月13日(日) 兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2019年1月14日(月・祝) 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2019年1月18日(金) 新潟県 新潟テルサ
  • 2019年1月20日(日) 石川県 本多の森ホール
  • 2019年1月25日(金) 大阪府 フェスティバルホール
  • 2019年1月26日(土) 大阪府 フェスティバルホール
Aimer(エメ)
女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるというアクシデントを経験し、それがきっかけとなり独特の歌声を獲得する。2011年から音楽活動を本格化させ、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たした。以降、「夏雪ランデブー」「機動戦士ガンダムUC」といったアニメ作品のテーマソングを担当。2014年6月に2ndアルバム「Midnight Sun」と、澤野弘之とのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時発売し、同年9月には菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表した。2016年7月にONE OK ROCKのTaka(Vo)と凛として時雨のTK(Vo, G)が提供およびプロデュースした楽曲を収めた両A面シングル「insane dream / us」、8月にRADWIMPSの野田洋次郎(Vo, G)制作の「蝶々結び」を収めたシングルをリリース。9月にTaka、野田のほか、andropの内澤崇仁(Vo, G)、スキマスイッチが楽曲提供およびプロデュースをした新曲を含むアルバム「daydream」を発表し話題を集める。2017年5月にベストアルバム「BEST SELECTION "blanc"」と「BEST SELECTION "noir"」を同時リリース。8月に初の東京・日本武道館単独公演を行い、1万3000人を動員した。2018年2月にCocco提供の「眩いばかり」を含むニューシングル「Ref:rain / 眩いばかり」を、9月に映画「累-かさね-」の主題歌「Black Bird」を収録したシングルをリリース。2019年1月に劇場版「『Fate/stay night[Heaven's Feel]』II.lost butterfly」の主題歌「I beg you」を収めたトリプルA面シングルを発表した。