Aimerの物語をたどってほしい
──「daydream」リリース後、両A面シングル「茜さす / everlasting snow」(2016年11月リリース)と、配信シングル「凍えそうな季節から」(2017年2月リリース)のリリースを経て、今回のベストアルバムに至るわけですが、今ベスト盤を出すAimerさんなりの意味とは?
去年「daydream」をリリースしてから、ベクトルが外に向いてきたというか、「第9回CDショップ大賞」で準大賞をいただいたり、たくさんの人に歌をキャッチしてもらえたっていう手応えがあったんですね。そのタイミングで、これまで歩んできた軌跡を新しい人にも聴いてもらいたいというのが、私なりの今出す意味ですね。
──Aimerさんの音楽への入り口として。
はい。個人的にはですね、私は、好きなアーティストの曲はオリジナルアルバムで聴きたいんですね。例えば誰かの曲を気に入ったら、その曲が収録されているアルバムはどういうコンセプトで作られたのか、知りたくなるんです。自分自身、4枚のアルバムを作ってみて、ますますその思いが強くなっているので、もし「blanc」と「noir」に巡り会ってくれたとしたら、それをきっかけに、それこそ今お話ししたような夜の物語もたどってもらえたらいいなって。
──アルバムと言えば、「blanc」と「noir」には、シングルカットされていないアルバム曲も収録されています。具体的には「ポラリス」(2013年11月リリースの1stミニアルバム「After Dark」収録)、「LAST STARDUST」(「DAWN」収録)、「s-AVE」(2015年9月リリースのSawanoHiroyuki[nZk]のアルバム「o1」収録)、「カタオモイ」と「Stars in the rain」(いずれも「daydream」収録)。菅野よう子さん作編曲、青葉市子さん作詞の「誰か、海を。」(2014年9月リリース)もミニアルバムの収録曲ですが、表題曲ということで除外するとして。
当然、どれも気に入っている曲なのですが、例えば「ポラリス」は、作詞面で1つ大きな転機になった曲なんです。私はもともと物語風の歌詞を書くのが好きで、誰かをどうしたいとか、自分の意思を表に出すことはなかったんですね。でも「ポラリス」では、はっきり「そんなこと もう言わせない」と書いています。歌詞の中でここまで強い意思表示をしたのは初めてなんですけど、でもそれに対して自分ではすごく納得がいってるんです。だからライブでも歌いたいし、皆さんに出会ってほしい曲の1つですね。
今まではなかった、聴く人の背中を押すような曲を
──「blanc」と「noir」には、それぞれ新曲も収録されています。まず「blanc」には「March of Time」と「歌鳥風月」という2曲のバラードが収められていますが、同じバラードでも対照的ですね。ここにも、Aimerさんの相反するもの、正反対なものを表現したいという意識が表れているのかなと。
ありがとうございます。
──「March of Time」は、言わば温かいバラードですね。
はい。こういった曲調にも挑戦できるようになったのは、5年間のキャリアを振り返ると、だいぶ後期からだと自分では思っていて。例えば、(野田)洋次郎さんがプロデュースしてくださった「蝶々結び」(2016年8月リリース)のカップリングだった「夏草に君を想う」も今言っていただいたような温かいバラードなんですけど、それも夜が明けてから歌えるようになった曲なので、「March of Time」もその延長線上にあると言えますね。
──この曲は、「時の経過」を意味する“march of time”という成句に、3月を意味する“March”をかけて、卒業を前にしたセンチメンタルな恋心を歌っていますが、歌詞についてはどのような着想から?
「March of Time」は、まず3月というテーマが最初にあって、そこに付随する別れや寂しさを土台に、今までなかったような、聴く人の背中をちょっと押せるような曲を書きたいなと思って。卒業って、本来は新たな門出であって、祝福されるべきものなんですけれど、一方で3月のままとどまっていたい、誰かとの別れを惜しむ気持ちもある……そんな対極を意識しました。
Aimer史上もっとも“和”に傾倒した1曲
──「March of Time」が温かいバラードだとすれば、「歌鳥風月」は冷たさを感じる静謐なバラードであり、前者が昼の歌だとすれば、後者は夜の歌だと言えますね。
確かに、そう考えると。
──そのコントラストも美しいなと。
ありがとうございます。「歌鳥風月」の曲調もまた、自分にとっては新しいものがあると思っていて、それは、ひと言で言えば“和”ということになりますね。「茜さす」も和の要素を取り入れた曲ではあったんですけれど、ここまで和に傾倒した曲というのは初めてだなって。
──歌詞のほうも、和の美意識に貫かれていますね。
先ほど、桜を例にとって「日本的な価値観」と言いましたけれど、この曲の歌詞を書きながら、私自身の美意識も、そうした価値観に根ざしている部分があるんだなと自覚しました。言ってみれば、一途に思い焦がれる気持ちや、奥ゆかしさというものを美しいと思うような、そういう感覚ですね。
──この2曲はアレンジも対照的ですよね。つまり、「March of Time」はバンド演奏にストリングスも入っていますが、「歌鳥風月」はほぼピアノの伴奏のみ。
そう、「歌鳥風月」はすごく、声がダイレクトに、生々しく伝わるような仕上がりになっているので、歌録りに苦心しましたね。今できる範囲で精一杯、声をコントロールして歌ったんですけど、3年くらいしたら録り直したくなるかもしれません(笑)。
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今のAimerの決意を込めた新曲「zero」
- Aimer「BEST SELECTION "blanc"」
- 2017年5月3日発売 / SME Records
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初回限定盤A
[CD+Blu-ray]
3980円 / SECL-2139~40 -
初回限定盤B [CD+DVD]
3580円 / SECL-2141~2 -
通常盤 [CD]
2980円 / SECL-2143
- DISC 1(CD)収録曲
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- 六等星の夜
- 蝶々結び
- あなたに出会わなければ~夏雪冬花~
- ポラリス
- Re:pray
- 星屑ビーナス
- broKen NIGHT
- カタオモイ
- 君を待つ
- 茜さす
- 雪の降る街
- everlasting snow
- March of Time
- 歌鳥風月
- DISC 2(初回限定盤Blu-ray / DVD)収録内容
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- 「蝶々結び」MUSIC VIDEO
- 「Re:pray」MUSIC VIDEO
- 「あなたに出会わなければ~夏雪冬花~」MUSIC VIDEO
- 「ポラリス」MUSIC VIDEO
- 「君を待つ」MUSIC VIDEO
- 「カタオモイ」MUSIC VIDEO
- 「broKen NIGHT」MUSIC VIDEO
- 「茜さす」MUSIC VIDEO
- 「雪の降る街」MUSIC VIDEO
- 「everlasting snow」MUSIC VIDEO
- 「六等星の夜」MUSIC VIDEO
- 「寂しくて眠れない夜は」LIVE from Aimer Hall Tour 2016@東京国際フォーラム ホールA(2016/11/06)
- 「夏草に君を想う」LIVE from Aimer Hall Tour 2016@東京国際フォーラム ホールA(2016/11/06)
- Aimer「BEST SELECTION "noir"」
- 2017年5月3日発売 / SME Records
-
初回限定盤A
[CD+Blu-ray]
3980円 / SECL-2144~5 -
初回限定盤B [CD+DVD]
3580円 / SECL-2146~7 -
通常盤 [CD]
2980円 / SECL-2148
- DISC 1(CD)収録曲
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- StarRingChild
- Brave Shine
- insane dream
- Stars in the rain
- 眠りの森
- LAST STARDUST
- 凍えそうな季節から -extended ver.-
- 誰か、海を。
- ninelie
- holLow wORlD
- us
- s-AVE
- RE:I AM
- zero
- DISC 2(初回限定盤Blu-ray / DVD)収録内容
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- 「凍えそうな季節から」MUSIC VIDEO
- 「Stars in the rain」MUSIC VIDEO
- 「Brave Shine」MUSIC VIDEO
- 「us」MUSIC VIDEO
- 「誰か、海を。」MUSIC VIDEO
- 「眠りの森」MUSIC VIDEO
- 「insane dream」MUSIC VIDEO
- 「RE:I AM」MUSIC VIDEO
- 「ninelie」MUSIC VIDEO
- 「StarRingChild」MUSIC VIDEO
- 「s-AVE」MUSIC VIDEO
- 「ninelie」LIVE from Aimer Hall Tour 2016@東京国際フォーラム ホールA(2016/11/06)
- 「Cold Sun」 LIVE from Aimer Hall Tour 2016@東京国際フォーラム ホールA(2016/11/06)
- Aimer Live in 武道館 “blanc et noir”
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- 2017年8月29日(火)東京都 日本武道館
- Aimer(エメ)
- 女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるアクシデントの末に独特の歌声を獲得する。2011年から音楽活動を本格化し、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たす。以降、「夏雪ランデブー」「機動戦士ガンダムUC」といったアニメ作品のテーマソングを担当する。2014年6月に2ndアルバム「Midnight Sun」と、澤野弘之らとのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時発売し、同年9月には菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表した。2015年7月に3rdフルアルバム「DAWN」をリリース。2016年7月にONE OK ROCKのTaka(Vo)と凛として時雨のTK(Vo, G)が提供およびプロデュースした楽曲を収めた両A面シングル「insane dream / us」、8月にRADWIMPSの野田洋次郎(Vo, G)制作の「蝶々結び」を収めたシングルをリリース。9月にTaka、野田のほか、andropの内澤崇仁(Vo, G)、スキマスイッチが楽曲提供およびプロデュースをした新曲を含むアルバム「daydream」を発表し話題を集める。2017年5月にベストアルバム「BEST SELECTION "blanc"」と「BEST SELECTION "noir"」を同時リリース。8月に初の東京・日本武道館単独公演を行う。