音楽ナタリー Power Push - Aimer

尊敬するアーティストたちと描く 夢のような「daydream」

導かれるまま、相性のままに作り上げたAimerの音

──実はここまでお話を聞いてきて、逆にこのアルバムにある1曲が入っていることがとても不思議に思えてきてるんです。

どの曲ですか?

──阿部真央さんの曲のカバーバージョンにして、阿部さんとのデュエット曲「for ロンリー with 阿部真央」なんですけど、これって2014年のシングル「誰か、海を。」のカップリング曲でしたよね(参照:Aimer「誰か、海を。」インタビュー)。しかもアルバム収録バージョンのアレンジや音使いはシングルバージョンのまま。

はい。

──「daydream」は「これまでのAimerの世界を壊す」というコンセプトのもと制作されたアルバムだ、というお話を聞いているうちに「なぜ2年前の曲を収録したんだろう?」って気になったんですけど……。

あっ、真央さんの曲を入れたのは、ただ入れたかったからですね(笑)。

──あはははは(笑)。シンプル!

TakaさんやTKさんや野田さんとの出会いが「insane dream / us」と「蝶々結び」を生んで、その縁が内澤さんやスキマスイッチさんへとつながって、「daydream」というアルバムを生んだその出会いも当然大切なものなんですけど、5年の活動を通じて出会った方は皆さんだけじゃない。今回アルバムに収録した「ninelie」(※2016年5月のシングル曲)を書いてくださった澤野(弘之)さんやその曲を一緒に歌ったchelly(EGOIST)さんもそうですし、2、3年前にツアーのゲストに呼んでいただいたり(参照:“お力添え”ツアー、阿部真央&Aimerの仲よし対バンで幕開け)、楽曲を提供していただいたりした(参照:Aimer「After Dark」インタビュー)真央さんもやっぱりそうで。特に当時の自分にとって真央さんとの出会いはまさに夢、「daydream」みたいな体験だったし、あの「for ロンリー」をシングルのカップリング曲として終わらせてしまうのはすごくもったいない気がしたので収録してみました。

──だから今回のアルバムのコンセプトから外れるものではない、と。

Aimer

そうですね。あと今回のアルバム収録曲って実はデュエット曲が多いんです。「ninelie」では当然chellyさんと私が歌っていますし、「insane dream」ではTakaさんも歌っている。それに「us」ではTKさんと、「蝶々結び」では野田さんやハナレグミさんと声を重ねているっていうのもあって、「じゃあ真央さんと一緒に歌っている曲も入れたいな」と思ったのも「for ロンリー」を収録した理由ですね。

──「Aimerの世界を壊す楽曲を、Aimerの声で歌うことでAimerの曲に仕立てる」という、ある種の矛盾の上に、さらに「Aimerの声以外の声を重ねてもAimerの曲になる」という、もう1つの矛盾を重ねている。その、すごく複雑でアンビバレントな感じはとても面白いです。

言われてみると、そうですね(笑)。でも今回は本当に導かれるままに作り上げたというか。自分のやりたいことありきではなく、相手ありき。もちろん自分自身の好みや感動も音には刻まれていますけど、個人的にやりたいことをやること以上に尊敬する方たちと一緒に作った音を記録してみたいという欲求のほうが強かったんです。だからこのアルバムの曲はどれも私だけのものではない。それぞれご一緒した方との相性や関係性の中から生まれてきたものだと思っています。それでもどれもAimerの曲だと思っていただけるのであれば、さっきもお話した通り、やっぱりそれはすごく誇らしいことですね。

世界を壊された先に見えているもの

──あともう1つ、このアルバムで目を引いたのが曲順で。Takaさんの作った「insane dream」から始まって、同じTakaさんの「Stars in the rain」で終わる、このトラックリストがすごく美しいな、と思いました。

ありがとうございます。「insane dream」は今回いろんな方たちとご一緒するきっかけになった曲だから絶対に1曲目にしようと思っていて、「Stars in the rain」はその「insane dream」のあと、Takaさんと作り上げた曲なんですけど、メロディができあがったときから「この曲は物語を終わりに導く曲だな」という印象を受けたので、「この曲でアルバムを終わらせよう」というイメージを持って詞を書いたんです。

──“名うてのアーティスト陣と共作する”という現実の物語の始まりの曲になった「insane dream」で「daydream」というアルバムの物語自体を始めて、その現実の物語を一緒に始めたTakaさんと共に、アルバムの物語自体を終わらせた。すごくロマンチックなお話ですよね。

そうですね。あとの曲順はスタッフさんと話し合いながら並べていったんですけど、最初と最後だけは自分で決めていたので、そこに注目していただけるとうれしいです。

──あと“dream”で始まって、“star”で終わっている。「After Dark」「Midnight Sun」「DAWN」と過去のアルバムがそうであったように、「“day”dream」というアルバムにあっても、Aimerさんは夜を基調に物語を紡ぐんだなあ、っていうのも面白かったです。

そうですね。でもここで描かれているのはまだ完全な夜ではないんですよ。ただこれまで描いてきた夜とは少しだけニュアンスが違う、未来への希望も込められた作品なので、そのあたりも感じ取っていただけたらうれしいです。

──このタイトルを見て「Aimerさんは、次回作ではまた新しい夜のお話を始めるのかな?」なんて思っていたんですけど……。

いえ、今は「DAWN」を作り終えたときと同じ気持ち。「Aimerの世界を壊した今、何をするべきなんだろう」って考えている状態ですね。

Aimer Hall Tour 2016

  • 2016年9月21日(水)埼玉県 三郷市文化会館
  • 2016年9月24日(土)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
  • 2016年9月25日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2016年10月2日(日)新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
  • 2016年10月8日(土)福岡県 福岡国際会議場 メインホール
  • 2016年10月10日(月・祝)宮城県 電力ホール
  • 2016年10月16日(日)北海道 道新ホール
  • 2016年10月28日(金)大阪府 オリックス劇場
  • 2016年10月30日(日)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2016年11月6日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA

※全公演ソールドアウト

ニューアルバム「daydream」 / 2016年9月21日発売 / SME Records
初回限定盤A [CD+Blu-ray] / 4600円 / SECL-1983~4
初回限定盤B [CD+DVD] / 3600円 / SECL-1985~6
通常盤 [CD] / 3000円 / SECL-1987
CD収録曲
  1. insane dream
    [楽曲提供・プロデュース:Taka(ONE OK ROCK)]
  2. ninelie(with chelly [EGOIST])
    [楽曲提供・プロデュース:澤野弘之]
  3. twoface
    [楽曲提供・プロデュース:内澤崇仁(androp)]
  4. Higher Ground
    [楽曲提供:Taka(ONE OK ROCK)]
  5. for ロンリー(with 阿部真央)
  6. 蝶々結び
    [楽曲提供・プロデュース:野田洋次郎(RADWIMPS)、ギター&コーラス:ハナレグミ]
  7. カタオモイ
    [楽曲提供・プロデュース:内澤崇仁(androp)]
  8. Hz
    [楽曲提供・プロデュース:スキマスイッチ]
  9. 声色
    [楽曲提供・プロデュース:TK(凛として時雨)]
  10. closer
    [楽曲提供・プロデュース:Taka(ONE OK ROCK)]
  11. Falling Alone
    [楽曲提供・プロデュース:Taka(ONE OK ROCK)]
  12. us
    [楽曲提供・プロデュース:TK(凛として時雨)]
  13. Stars in the rain
    [楽曲提供:Taka(ONE OK ROCK)]
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
  • MUSIC VIDEO
  • Aimer Live Tour“DAWN”ライブ映像(※Blu-rayのみ収録)
  • BONUS TRACK「甲鉄城のカバネリ」SPECIAL ENDING MOVIE
Aimer(エメ)

女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるアクシデントの末に独特の歌声を獲得する。2011年から音楽活動を本格化し、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たす。以降、「夏雪ランデブー」「機動戦士ガンダムUC」といったアニメ作品のテーマソングを担当する。2014年6月に2ndアルバム「Midnight Sun」と、澤野弘之らとのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時発売し、同年9月には菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表した。2015年7月に3rdフルアルバム「DAWN」をリリース。2016年7月にONE OK ROCKのTaka(Vo)と凛として時雨のTK(Vo, G)が提供およびプロデュースした楽曲を収めた両A面シングル「insane dream / us」、8月にRADWIMPSの野田洋次郎(Vo, G)制作の「蝶々結び」を収めたシングルをリリース。9月にTaka、野田のほか、内澤崇仁(androp)、スキマスイッチが楽曲提供およびプロデュースをした新曲を含むアルバム「daydream」を発表した。