音楽を愛する思いでつながりたい

──「insane dream / us」や「蝶々結び」はTakaさん、TKさん、野田さんとスタジオに入ってプリプロとディスカッションを重ねながら作ったとおっしゃってましたけど、制作スタイルは今回のアルバムの新録曲でも変わらず？

いや、それぞれ皆さん、やり方やスタイルは違ってました。実は「insane dream」を作っている時点で、いろんな方々と共演するアルバムを作ることは決まっていたので、Takaさんとの5曲は「insane dream」を作ったときに一緒に作っていて。TKさんとの新曲の「声色」も「us」を作ったときに一緒に作った曲ですね。ただ内澤さんの「twoface」と「カタオモイ」や、スキマスイッチさんの「Hz」はデモを先にいただいて、そのあと詰めていく感じでしたね。

──デモ制作前に皆さんとお会いしたりは……。

内澤さんとスキマスイッチさんとも顔合わせという感じでお会いしてはいますけど、それだけですね。

──じゃあ、そういう作り方が功を奏しましたね。2組ともAimerさんに対する先入観がないから、キレイにAimerの世界観をぶっ壊している。いい意味でやりたい放題ですよね（笑）。

そうですね（笑）。そしてそれが皆さんに対して一番望んだことではありました。皆さん、熱い思いがあってご自身の音楽性を貫いている方だし、私もその皆さんの愛している音楽を愛しているから、それを発揮していただきたかったし、その「音楽を愛している」という思いでつながりたかったんです。

──そうしたら「twoface」のような、まさに今とても勢いのあるギターロックバンドのフロントマンが作り上げた、ヘヴィでストレンジなギターロックができあがった。

はい。ただ、これからこのアルバムを聴いてくださる皆さんはビックリはするかもしれないけど「これはAimerの楽曲ではない」と思われるかというと、そうはならないとは思っています。

壊された世界で鳴り響くAimerとしての歌声

──実際聴かせていただくに、今作も紛れもなく“Aimerさんの作品”だったんですけど、アレンジや参加クリエイターは違うのに聴き手にそう思わせる要因ってなんだと思います？

少し矛盾してしまうかもしれないんですけど、今回は「Aimerの世界を壊す」というチャレンジと同時に、「『Aimerが歌うとどんな曲もAimerの曲になるんだね』と思っていただく」というチャレンジをしてみたいなと思っていたから、それが成功したのかもしれないですね。5年間Aimerとして歌ってきた中で「自分の歌が自分の歌として聞こえる理由」については常に考えていましたし、その一方で「自分の声で歌えば自分の歌になる」という自負もやっぱりあるんです。確かに今回アルバムに参加してくださったのは尊敬すべき先輩方なんですけど、音楽を前にした瞬間だけはお互い丸裸になれるし、そうなればきちんとAimerの歌を歌えるという予感はしていました。皆さんの作り上げる音と私の声が純粋に向き合った状態でなら、たとえAimerの世界を壊すような音を前にしても、それに負けない声で歌えると思っていました。

──だから「twoface」のような、これまでのディスコグラフィにはないようなハードなロックチューンも“Aimerの曲”に昇華できた、と。

そう思っています。

──もう一方で内澤さんの「カタオモイ」やスキマスイッチさんの「Hz」のような曲を歌うAimerさんも新鮮でした。

そうですか？

──「カタオモイ」はタイトル通りストレートなラブソング。そして、自身に音楽の魅力を教えてくれたラジオへの愛の歌である「Hz」では「イエイ！」と歌っている。どちらもこれまでのAimerさんの楽曲にはなかったモチーフやフレーズですよね。

確かに「こういう言葉を歌うのか」っていう驚きはありました（笑）。でもやっぱりAimerの世界観を壊していただけるようにお願いしていたところに届いた言葉だったからうれしかったですし、歌詞カードの字面だけを見るとビックリするのかな？という気持ちはあれど、曲を聴いていただければ「こういうのもAimerだな」とも思っていますし。だから「こういう言葉を歌うのか」という驚きはありつつも「こんな言葉を歌っちゃって大丈夫かな？」みたいな気持ちはなかったですね。

──確かに「twoface」同様、違和感や無理をしている印象は受けなかったです。「Aimerさん面白いこと歌ってるなあ」「Aimerさんが新しい扉を開いた」という新鮮な驚きはあったものの。

自分自身そのつもりでしたから、そう感じていただけたらうれしいですね。「DAWN」というアルバムでAimerという人間の1つの物語を終わらせられたこと、Takaさんや野田さんと出会えたこと、デビュー5周年を迎えたこと。そういういろんな偶然が重なった今のタイミングだからこそ作れる音楽を精一杯、思う存分作れたことはすごく誇らしく思っていますし、尊敬している人と一緒に好きな音楽、しかも新しい音楽を追求できたことは涙が出るくらいうれしいことでしたし。当たり前のことかもしれないんですけど、これからも「こういう音を発したい」「こういう音楽を作りたい」という気持ち、言ってしまえば音楽を愛することを大事にして活動していこうって改めて決意できた感じはしています。