音楽ナタリー Power Push - Aimer

尊敬するアーティストたちと描く 夢のような「daydream」

今年7月にTaka(ONE OK ROCK)とTK(凛として時雨)と共に作り上げた「insane dream / us」、8月に野田洋次郎(RADWIMPS)プロデュースの「蝶々結び」という2枚の強力なシングルをリリースしたAimer。そんな彼女から最新オリジナルアルバム「daydream」が早くも届けられた。

このアルバムは彼女が今夏の一連のシングルで見せた制作スタイルをさらに推し進めた1枚。Taka、TK、野田に加え、プロデューサー陣に内澤崇仁(androp)、スキマスイッチを迎え、2011年のデビューから5年で築き上げた「Aimerの世界観を壊す」のコンセプトのもと、刺激的な楽曲の数々を作り上げている。

Aimerは今回のアルバム参加メンバーとの出会いをある種の“daydream”、白日夢のような体験だと語っている。果たしてその“夢”はいかにして現実のものとなったのか。そして今、自身の世界観の破壊を試みた理由とは。話を聞いた。

※本文中「Hz」の「z」はストローク付きが正式表記。

取材・文 / 成松哲

名うて制作陣に敬意のもとに見る“白日夢”

──今回のアルバムタイトル、すごくいいですね。

ありがとうございます。

──Aimerさんのアルバムタイトルを並べてみると1stアルバムが「After Dark」で2ndアルバムが「Midnight Sun」。そして前作の3rdアルバムが「DAWN」。つまり夜が明けた。

はい。「DAWN」を作ったことで自分の中では1回夜が明けた。5年間歌い続けてきた夜の物語が終わったという感覚がありました。

──そして続く今作は「daydream」。確かに夜明けのあと、昼の話ではあるんだけど、意味は“白日夢”。あれ? 夢なの?って。そこがすごく面白かったです。

そう言っていただけるとうれしいですね(笑)。おっしゃる通り「DAWN」のあとのアルバムだから、今回はアートワークも含めて昼を意識して作ってはいるんですけど、思い切り降り注ぐ昼の光を表現するのは少し私らしくない。昼の話ではあるけど夢かもしれない「daydream」という言葉を選べたのはAimerらしいな、と思っています。そして自分が憧れている方々とコラボする“夢”も実現できたし。

──でも、今作でONE OK ROCKのTakaさんや凛として時雨のTKさん、RADWIMPSの野田洋次郎さん、andropの内澤崇仁さん、スキマスイッチと共作しているのは夢ではない。紛れもない事実です。

そうではあるんですけど、好きで聴いていて、しかも尊敬していた皆さんと音を鳴らせたのは自分にとって身に余る光栄ではありますから。私が追いつきたいと思っている方々とご一緒できたことは“夢”心地ではあるし、“夢”を1つ叶えたということでもあって。「daydream」は皆さんへの尊敬の念や敬意を込めたタイトルでもあるんです。

ここで1回やんちゃしてみよう

──その皆さんとはどういう経緯で共作することに?

7月のシングルの「insane dream / us」でTakaさんやTKさんとご一緒して、8月の「蝶々結び」で野田さんやハナレグミさんとご一緒した。その一連の流れという感じですね。

──前回のインタビューではTakaさんと知り合うきっかけを得て、その後、Takaさんが懇意にしている野田さんとも知り合ったところから2枚のシングルができた、とおっしゃってましたよね(参照:Aimer「insane dream / us」「蝶々結び」インタビュー)。

はい。

──そして「DAWN」リリース時には、「1つの物語を夜明けへと導いた今、何をするべきか考えている状態」だとも言っていた(参照:Aimer「DAWN」インタビュー)。

去年「DAWN」を作って夜明けを迎えたとき、ゼロに戻ったというか。「このあとどういう歌を歌っていこうか」っていうことはあまり考えてはいなかったんですけど、ちょうどその頃、Takaさんと知り合って。その後も続いていったご縁や偶然の出会いに自分の身を委ねていたら、こうなったというのが正直なところなんです。

──強力な面々が参加するアルバムだから、もっと主体的。大きな意思や決意のもと制作されたのかと思ってました。

Aimer

内澤さんやスキマスイッチさんには私からお願いさせていただいたんですけど、まったくまっさらな状態、ゼロの状態から自ら「一緒にアルバムを作りましょう」って発信できたかというと、それはきっとできなかったと思います。やっぱりTakaさんや野田さんと知り合えたことから生まれたアルバムですね。

──偶然が生んだアルバムということ?

さすがにすべてを皆さんに委ねてしまったわけではないですね。今おっしゃっていたアルバムに対する決意みたいなものはもちろんあって、それは身を委ねているうちに生まれました。Takaさんやいろんな方と出会ったことで「ここで1回やんちゃしてみよう」という思いが芽生えてきて(笑)。しかも今年デビュー5周年だったこともあって「『DAWN』を作って自分の物語は一旦夜明けを迎えたことだし、5年という1つの区切りの時期だし、一度Aimerの世界観を壊してみても面白いのかも知れない」「今しかできないことをやってみよう」という、今回のアルバム全体の全体像が見えてきた感じですね。なので今回参加していただいた皆さんにも「今まで作り上げてきたAimerの世界観っていうのはまったく意識しなくていいです」「むしろ壊してください」とお願いさせていただきました。

ニューアルバム「daydream」 / 2016年9月21日発売 / SME Records
初回限定盤A [CD+Blu-ray] / 4600円 / SECL-1983~4
初回限定盤B [CD+DVD] / 3600円 / SECL-1985~6
通常盤 [CD] / 3000円 / SECL-1987
CD収録曲
  1. insane dream
    [楽曲提供・プロデュース:Taka(ONE OK ROCK)]
  2. ninelie(with chelly [EGOIST])
    [楽曲提供・プロデュース:澤野弘之]
  3. twoface
    [楽曲提供・プロデュース:内澤崇仁(androp)]
  4. Higher Ground
    [楽曲提供:Taka(ONE OK ROCK)]
  5. for ロンリー(with 阿部真央)
  6. 蝶々結び
    [楽曲提供・プロデュース:野田洋次郎(RADWIMPS)、ギター&コーラス:ハナレグミ]
  7. カタオモイ
    [楽曲提供・プロデュース:内澤崇仁(androp)]
  8. Hz
    [楽曲提供・プロデュース:スキマスイッチ]
  9. 声色
    [楽曲提供・プロデュース:TK(凛として時雨)]
  10. closer
    [楽曲提供・プロデュース:Taka(ONE OK ROCK)]
  11. Falling Alone
    [楽曲提供・プロデュース:Taka(ONE OK ROCK)]
  12. us
    [楽曲提供・プロデュース:TK(凛として時雨)]
  13. Stars in the rain
    [楽曲提供:Taka(ONE OK ROCK)]
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
  • MUSIC VIDEO
  • Aimer Live Tour“DAWN”ライブ映像(※Blu-rayのみ収録)
  • BONUS TRACK「甲鉄城のカバネリ」SPECIAL ENDING MOVIE
Aimer(エメ)

女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるアクシデントの末に独特の歌声を獲得する。2011年から音楽活動を本格化し、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たす。以降、「夏雪ランデブー」「機動戦士ガンダムUC」といったアニメ作品のテーマソングを担当する。2014年6月に2ndアルバム「Midnight Sun」と、澤野弘之らとのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時発売し、同年9月には菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表した。2015年7月に3rdフルアルバム「DAWN」をリリース。2016年7月にONE OK ROCKのTaka(Vo)と凛として時雨のTK(Vo, G)が提供およびプロデュースした楽曲を収めた両A面シングル「insane dream / us」、8月にRADWIMPSの野田洋次郎(Vo, G)制作の「蝶々結び」を収めたシングルをリリース。9月にTaka、野田のほか、内澤崇仁(androp)、スキマスイッチが楽曲提供およびプロデュースをした新曲を含むアルバム「daydream」を発表した。