逢田梨香子|私のステージの幕開け

逢田梨香子が3月31日に1stアルバム「Curtain raise」をリリースした。

声優、そして「ラブライブ!サンシャイン!!」から生まれたスクールアイドルグループAqoursのメンバーとしても活動しながら、2019年6月にソロアーティストデビューを果たした逢田。11月にテレビアニメ「戦×恋(ヴァルラヴ)」のオープニング主題歌を表題曲としたシングル「for...」を発表したのち、このたび満を持して1stアルバムを発表する。

アルバムには逢田が初めて作詞を手がけたリード曲「Lotus」を含む全12曲を収録。バラエティ豊かな楽曲が並んでいながら、全編を通して美しく凛とした世界観が根付いている。

音楽ナタリーでは逢田に、自身の好きな楽曲を詰め込んだという1stアルバムについて話を聞いた。

取材・文 / 中川麻梨花 撮影 / 塚原孝顕 衣装協力 / HISUI, AMBIENT

自分の中の新しい引き出し

──昨年、ソロアーティストデビューの発表時に「これをきっかけに、今まで出逢ったことのない自分を見つけられたらいいなと思ってます」とコメントされていました(参照:Aqours逢田梨香子が今夏ソロデビュー「今まで出逢ったことのない自分を見つけられたら」)。デビュー作「Principal」、シングル「for...」、そして1stアルバム「Curtain raise」と3作品を作ってきて、新しい自分を見つけられた感覚はありますか?

逢田梨香子

さまざまな楽曲を通して、新しい自分をたくさん発見できているなという実感はあります。アルバムも本当に色とりどりの楽曲がそろっているので。いろんなクリエイターさんに、自分の中の新しい引き出しを開けていただけているような気持ちです。

──ソロ活動を通して、自分自身と向き合う時間も増えたのでは?

増えましたし、いろんなものに触れてみようという気持ちになりました。今まで自分の趣味じゃなかったジャンルのお洋服を手に取ってみたり、メイクや髪型を変えてみたり。ソロ活動を始めてから、かなり視野が広がりましたね。自分がどうしていきたいか、どうありたいかということも考えるようになりました。

──いざ1stアルバムを作ろうとなったときに、逢田さんの中にどういった作品にしたいという思いがあったんでしょうか?

そうですねえ……最初に「こういう1枚にしたい」という思いもあったのですが、とりあえず自分がいいなと思った楽曲をピックアップしたり、大ファンだったやなぎなぎさんに楽曲提供をしていただいたりして、最終的にこの1枚ができあがったというのが正しいかもしれません。

──好きな世界観の楽曲を集めていったという。

逢田梨香子「Curtain raise」初回限定盤Aジャケット

そうです。でも、ジャケットについては早い段階でスタッフさんと話し合って、コンセプトを決めていました。白の中から滲み出てくる芯の強さを表現できたらいいなと。それぞれの楽曲を通しても、そういったテーマは感じてもらえるんじゃないかなと思います。

──アルバムにはさまざまなジャンルの楽曲が収録されていますが、歌っている逢田さんが芯の強い方だからか、美しく凛とした雰囲気が漂うコンセプチュアルなアルバムのように感じました。

バラエティ豊かなアルバムになっているとは思うんですけど、不思議と統一感も感じますよね。1曲1曲が上品で、存在感があるというか。そういった楽曲をいただけたのは本当にありがたいことです。

入れるなら頭しかない

──「Curtain raise」というタイトルはご自身で決めたんでしょうか?

そうですね。何曲かそろったあたりで、そろそろタイトルを決めなきゃという話になったんですが、なかなかいいタイトルが思い浮かばなくて。1stアルバムということで、幕開けのような感じをタイトルに取り入れたいなと思って、何かいい言葉はないかなと調べていく中で「Curtain raise」という言葉に出会ったんです。ツアーのタイトルとしてもしっくりくるし、デビュー作の「Principal」の主人公がステージに立って、その幕が上がるような感じで、過去とのつながりも感じられるというか。ステージの幕が上がるような瞬間をシンプルに皆さんに見ていただきたいという気持ちでこのタイトルを付けました。

──まさに1曲目の「Curtain raise」は幕が上がる瞬間が表現されたような、高揚感あふれるインストナンバーになっています。

はい。2曲目の「Mirror Mirror」にしっかりとつないでくれます。

──「Mirror Mirror」は重厚感のあるシンフォニックなロックナンバーです。「Curtain raise」を経て、こういった鮮烈な楽曲につながるのはインパクトのあるオープニングですね。

逢田梨香子

曲順に関しては最初に私が並べて、その案を元にスタッフさんと話し合いながら入れ替えていったんです。ただ、私の中では2曲目「Mirror Mirror」とラストナンバー「ORDINARY LOVE」は絶対にこの位置がいいというこだわりがありました。

──「Mirror Mirror」はゴシック感があり、危うげな世界観が美しい曲になっています。これまでの2作品で歌ってきた曲とはまたガラッと違う雰囲気の、しかもこれだけ個性的な曲を2曲目に持ってきたのは大きな挑戦ですよね。

曲順を提案するときに、「通るかな?」とちょっと不安でした(笑)。でも、この曲でアルバムを始めたら、みんなの予想をいい意味で裏切れるんじゃないかなと。凛とした雰囲気の白いジャケットを見て、こういった重厚感のある楽曲が頭にくるのは、あまり想像がつかないと思うんですよ。初めてデモを聴いたときから、強い存在感を放っている曲だったので、もしアルバムに入れるなら頭しかないなと思っていました。

──「Mirror Mirror」をアルバムに入れたいと思った決め手はなんだったんでしょう?

これも直感が大きくて、イントロから「もうこれ!」という感じでした。これまで歌ってきた楽曲とはまた違ったダークな雰囲気を放っていて、こんな曲を入れたら、ファンの皆さんに楽しんでもらえるんじゃないかなと。デモの段階からインパクトのある曲だったんですが、児玉雨子さんが歌詞を付けてくださって、より強い曲になったと思います。

──歌詞では“鏡”をテーマに、自分自身がわからなくなっているようなダークな感情が描かれていますね。

鏡の世界の中の自分と、現実の自分との間で心が揺れ動いている感じです。「Mirror Mirror」は私の中で特に思い入れのある楽曲だったのと、自分が表現したいと思っていたものと児玉さんが描いてくださった世界観があまりにも近かったので、1回上がってきた歌詞を読んで、ちょっと欲が出てきてしまって。「このワードを入れていただけませんか?」と、言葉を箇条書きにしてお渡しして、それを足していただいたんです。

──具体的には歌詞のどのあたりですか?

もともと歌詞にはあったと思うんですけど、「私」というワードをもっと入れられないかなと。あとは「演じて」「どれが私なの?」とか。新しい言葉を足していただくことで、惑わせてしまうかなと思ったんですが、児玉さんはすごくきれいな形で取り入れてくださいました。

──芯のある歌声が印象的ですが、どのようなことを意識しながら歌われましたか?

この曲はレコーディングをするにあたって、一番プレッシャーがあって……。

──逢田さんにとって新しい表現の仕方ですよね。

そうなんです。前作の「for...」も芯のある歌声になっていたと思うのですが、「Mirror Mirror」では力強く歌うだけじゃなくて、じわじわと自分の感情を出していかなければいけなくて。そのさじ加減がすごく難しかったです。この曲でまず、リスナーの皆さんを驚かせることができたらうれしいですね。

次のページ »
凛としていて強い花