昨年結成5周年を迎え、「Aqours 5th Anniversary 地元愛! Take Me Higher Project」と銘打ったアニバーサリープロジェクトを行ってきたAqours。プロジェクトのメインだったドームツアーは新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止となってしまうも、10月、12月にオンラインライブを行い、9人は前を向いて進んできた。
そしてアニバーサリーイヤーも終盤を迎え、3月31日にリリースされるのがAqoursの結成5周年記念シングル「smile smile ship Start!」。表題曲にはここから新たに舵を取り、夢に向かって前進していく9人の希望に満ちた思いが詰まっている。
音楽ナタリーではシングルのリリースを記念して、2年生の高海千歌役の伊波杏樹、桜内梨子役の逢田梨香子、渡辺曜役の斉藤朱夏にインタビューを行った。未知なる世界に飛び込んでいくAqoursの揺るぎない信念を、3人の言葉からぜひ感じ取ってほしい。
取材・文 / 中川麻梨花
この9人だからこそ乗り越えてこられた
──デビュー5周年を迎えました。きっとものすごく濃い5年間でしたよね。
伊波杏樹 5年間、本当によくやってきたなあって思います。
斉藤朱夏 しみじみ(笑)。
逢田梨香子 体感としてはあっという間ですけど、1stシングルに向けて合宿に行ってた頃を思い出すと、長い年月やってきたなと。
伊波 ライブもコンスタントにやってきたしね。濃かったなあ。
逢田 人生の半分くらい費やしてきたような。そのぐらいの濃さですね。
──5年間でAqoursの表現もいろいろと進化していると思います。アニメとのシンクロを大切にしながら、東京ドームで「想いよひとつになれ」を披露した際には、梨子が8人と合流するというテレビアニメにはなかったシーンを追加して、物語のその先を描いたり。そういった表現やグループのあり方において、5年間で変化あるいは進化したという感覚はありますか?
伊波 全体的にその実感はありますね。例えばパフォーマンス面で言うと、最初は9人の振りさえそろわなかったけど、場数を踏んでいくにつれて9人でお互いの空気をちゃんと感じ合ったり、アイコンタクトを取ったりするようになって。みんなで曲を届けようという気持ちが強くなって、楽曲への愛も大きくなっていったからこそ、パフォーマンスもどんどん進化していったんじゃないかなと思います。特に1stシングルの「君のこころは輝いてるかい?」とかは、5年間ずっと歌い続けてきて、もう本当にパフォーマンスが完成しているんじゃないかな。
斉藤 目をつぶっても踊れそう!
伊波 それぐらいやってきてるよね。大きな成長だなと思います。
斉藤 5年間やってきて、私はAqoursって目指すところがすごく高いなとずっと思っていて。大きな壁がたくさんあったり、結成した当初はいろんな声も聞いたりして、正直心にくるなということもあったけど、この9人だからこそ乗り越えてこられた。この9人じゃなかったら、きっと乗り越えることができなかっただろうなって。だから、これから先も楽しみだし、「Aqoursどうなっちゃうんだろう?」というワクワク感がすごく大きいです。前は不安なこともあったけど、今は「なんだってやってやろうじゃないか! この9人だからできるぞ!」というすごく力強い気持ちでいますね。そういう気持ちの変化は、一緒に長い時間を過ごしてきて、絆が生まれたからこそだと思います。
──Aqoursの皆さんはライブのMCなどでも「この9人でよかった」とおっしゃっています。特にどういうときにそう感じますか?
斉藤 ライブ中、目が合った瞬間ですね。ちょっと目が合っただけで「この9人でよかったな」ってすごく思う。この9人じゃなかったら今のパフォーマンスはできないし、一瞬一瞬がすごく大切だなと感じて。
伊波 目が合ったとき、朱夏じゃなくて、曜ちゃんに見えるんですよね。
斉藤 わかる! 私も杏樹が千歌ちゃんに見える。
伊波 梨香子は梨子ちゃんに見えるし。「ラブライブ!」ならではなんですかね。
斉藤 ステージに立っているときのあの感覚は不思議だよね。
伊波 みんなそれぞれ、千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんの笑顔を見たいがためにめちゃくちゃ努力してきたし、千歌ちゃんたちの一番の理解者でありたいと思ってやってきて、絆をつないできて。だからやっぱりこの9人は欠けちゃダメだし、千歌ちゃんは私にしかできないって思いたい。いや、今まではずっとそういうふうに思ってきたんですけど、今だったら思える。
逢田 私は5年間での変化というと、それこそ先ほどおっしゃっていた東京ドームでの9人での「想いよひとつになれ」から、「ラブライブ!サンシャイン!!」という作品のあり方がちょっとずつ変わってきているのを感じます。もちろんアニメがすべてというのは今でも変わっていないんですけど、新しい挑戦が増えてきて、なんとなく作品自体が開けていっているというか。今年はAqoursの実写PVを作ることが決まっていますが、それもきっとこれまでだとありえなかった。新しい試みなので、不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私たち自身はAqoursとしてもっともっと可能性を切り開いていきたいなと思っています。私たちがどうにか千歌ちゃんたちをファンの方々に届けていきたい。そういう意味で、Aqoursはどんどん進化してきているのかなと思います。
こんなにいっぱいエネルギーをもらってたの?
──新型コロナウイルス感染拡大の影響で残念ながら中止になってしまいましたが、昨年9月からドームツアー「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 6th LoveLive! DOME TOUR 2020」が行われるはずでした。
斉藤 ドームツアーに向けて私たちはずっとリハをし続けていたんですが、そんな中で「中止です」と聞いて……メンバーみんなで一緒にその知らせを聞いたんですよ。もう、今までにないくらいの空気感だった(笑)。ドーンって、一気に落とされちゃった感じ。
伊波 空気がやばかったよね。
逢田 ドームツアーのリハをする日だったんですよ。「これからリハするぞー!」というときに聞いて……。でも、中止と言われたあとも、またいつかライブをやるときのためにフルでリハーサルをやろうということになって、もうとんでもない気持ちで踊ってました(笑)。
斉藤 みんなごちゃごちゃな気持ちでリハやってたよね。でも、正直個々で聞くんじゃなくて、あのときみんなで一緒に聞けてよかったなと思う。たぶんみんな同じ思いだったと思うし、ドーンと落とされた時間も全部共有できてよかったというか。
逢田 やっぱりみんながその場に一緒にいてくれたから、すごく心強かった。去年の緊急事態宣言中はみんなで集まれる日も全然なくて、解除されたあとに気を付けながらリハをしていたんですけど、みんなで一緒にいるその時間がいかに私たちにとって大切なものだったのか、気付かされました。ドームツアーが中止になって、みんなと過ごす時間がなくなってしまう……Aqoursとして私たちが生きられる時間も、ドームツアーが中止になってしまうことで、短くなってしまうんじゃないかという不安も大きかったですね。だからこそオンラインライブという、表現できる場を与えてもらえたことに希望を感じました。
斉藤 気持ちを切り替えて、オンラインならではのやり方を考えていく時間も楽しかったよね。中止になったのはめちゃくちゃ悔しいけど、新しいライブをみんなと楽しんで作れてよかったです。
──10月、12月とオンラインライブがありましたが、10月のライブはTwitterで世界トレンド2位、12月のライブは世界トレンド1位を獲得して大盛り上がりでした。
伊波 オンラインライブは未知の世界で、やる前は正直ちょっと怖い気持ちもありました。でも、Aqours、「ラブライブ!サンシャイン!!」を好きでいてくれる人たちに届けられるものがなくなってしまう怖さのほうが大きかった。ちょっとでも忘れられる瞬間がないようにしたかったというか。画面の向こうにどうやってパフォーマンスを届けようかという模索はしましたけど、結果めちゃくちゃ楽しく終えることができて、気持ち的にも1つギアを上げることができたのでよかったです。
斉藤 ドームツアーは中止になっちゃったけど、「いつか絶対やる」って、みんな気持ちは1つだから、Aqoursは前を向いて歩いています。やっぱりめちゃめちゃ悔しいですからね。
伊波 それは拭えないよね。私は「千歌ちゃんだったら中止と言われて、どういう気持ちになるかな?」ということしか考えられなかったです。「どういうことを考えて乗り切るのかな? なんだったら乗り越えるというよりも、次のことを考えるんだろうな」と思って、立ち直って前に進みましたね。
──2月には「オダイバ!!超次元音楽祭」で1年ぶりにファンの方々の前でパフォーマンスされましたが、いかがでしたか?
斉藤 めっちゃ楽しかった……ヤバいっすね(笑)。
伊波・逢田 (笑)。
斉藤 もちろんみんな席に座って、声を出さない形ですけど、いてくれるだけで全然違う!
伊波 安心感がすごいよね。「こんなにいっぱいエネルギーをもらってたの?」みたいな。ありがたみをすごく感じた。
逢田 ライブのあり方を思い出させてくれたというか、今までみんなでやってきたライブの記憶が走馬灯のようによみがえってきて(笑)。あんなにみんなでステージに立ってきたのに、1年で感覚を忘れちゃってたんですよね。呼び覚ましてくれて、うれしかったです。
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私たちはまだまだ先へ進めるんだ