凛としていて強い花
──そしてシングル曲「for...」を経て、4曲目は逢田さんが初めて作詞を手がけた楽曲「Lotus」です。もともといつか作詞をしてみたいという気持ちはあったんですか?
作詞に興味はありました。自分がこれまで憧れてきたアーティストの方々が、皆さん自分で歌詞を書かれていたので。自分で書いた歌詞を歌って、それで人を感動させられるのはすごく素敵なことだなとずっと思っていたんです。なので、いつか自分も書いてみたいなって……。
──それが1stアルバムでさっそく叶って、しかも初めて作詞したのがリード曲という。
アルバムのどれかの曲でやってみようかというお話になったのですが、デモを聴いて「Lotus」は「Mirror Mirror」と同じくらい好きな楽曲だったので、最初は「プロの方に歌詞を書いていただいて、より完成度の高い曲にしたいです」と言っていたんです。でも、「そんなに好きなら、自分で書いたほうがいいよ」とスタッフさんに言っていただいて、じゃあがんばって書いてみようかなと。
──作詞するときから、これがリード曲というのは決まっていたんですか?
なんとなくこの曲かな、という雰囲気はありました。最初はもっと作詞しやすいバラード曲から始めてみようかなという気持ちはあったんですけど、今はがんばってみてよかったなと思います。リード曲ということで、ミュージックビデオも作ることができたので。
──作詞はスムーズにいきましたか?
いやー、もう全然です(笑)。完成したものがバージョンいくつなのかわからないくらい。テーマは最初から変えていないのですが、ワードのチョイスや表現方法をけっこう変えて書き直しました。
──この曲の決然とした感じやまっすぐさに、逢田さんの人間性、生き方がそのまま出ているような印象を受けました。「こういうふうに生きていきたい」という意思もうかがえますが、それを象徴する“蓮の花”というモチーフはどこから生まれたのでしょうか?
“清らかな心”という花言葉だったり、泥の中からきれいな花を咲かせる姿だったり、そういうのがすごく素敵だなと思って。ほかの花にもいいなと思った花言葉はあったんですが、蓮の花が一番心の中に残っていたんですよね。儚くて、切なげで、でも凛としていて強い……そういった雰囲気が、この曲の色にも合っているなと思いました。
──この曲では「もう少し、ほんの少しと求めても 虚しい程になにひとつと残らなくて」と思うようにいかない焦燥感が描かれながらも、サビでは「黒さえ白く塗りかえて 何度でも」と強い意志が歌われています。
自分の人生を振り返ってみて、今までは決して平坦な道ではなかったというか。それでも、なんとか自分の道を見つけてきたんです。人はみんな弱い部分を持っているけれど、自分の力で前に進んで、道を切り開いていける強さも持っているということをサビで伝えられたらいいなと思いました。
──ご自身で特に気に入っているフレーズを挙げるなら?
2番の「終わりあるからこそきっと愛しくて」というところですね。みんなそれぞれ家族や友達、恋人といった大切な人がいると思うのですが、私はあるときから大切な人とずっと一緒にいられるわけじゃないなと考えるようになって。そう思ったら、生きているのがすごく怖くなったんです。でも、考えてみたら、終わりがあるからこそ、大切な人との時間を愛おしく思えるというか。そういう人との時間をいかに大事に過ごせるかということが大切なんじゃないかなって。この曲を通して、みんなにそういったことを思い出してもらって、些細なことにも目を向けて大切にしようと思ってくれたらうれしいなという気持ちで書きました。
──初めて作詞されて、しかもそういった自分の人生観を反映した曲を歌うとなると、ほかの曲とはまた違った心境でのレコーディングだったのではないでしょうか?
とても緊張感がありました。自分に対する信頼感がなかったというか……。
──自分の言葉だからこそ、信頼感を持って歌えるのではなく?
ほかの楽曲はプロの方が歌詞を書いてくださっているので、歌うときに絶対的な安心感があるんですよ。自分で歌詞を書いたことで、「ここはこう表現したい」というイメージはよりしっかり持てたんですが、初めてだったからか、やっぱり若干不安な気持ちがあって。でも、思いはしっかりと歌詞に乗せられました。歌い終わったあと、すごく感動しましたね。
──今後の作詞も楽しみになりますね。
作詞は今後も続けていきたいです。いろんな自分に出会えるし、気持ちを活性化させて普段眠っているような自分を呼び起こすことができる作業だなって。いろんな活動を通して、もっともっと感情を豊かに動かしていきたいなと思いました。
洞穴で感情を吐露
──続く「REMAINED」では届かない恋心をしっとりと歌われています。情緒的な雰囲気が漂っていますね。
この曲は言葉の1つひとつがオシャレなんですよ。作詞を担当してくださったGiz'Moさんは、1stシングルのカップリング曲「コントラスト」も書いてくださっているんですが、そのときからワードチョイスがすごく好きだったので、今回また提供していただけてうれしかったです。
──切ない恋心を描いた曲かと思いますが、この曲からはどういう印象を受けましたか?
絶対に思いが届かない、洞穴の中にいる感じ……(笑)。
──洞穴(笑)。
本当にそれくらい深いところで感情を吐露しているというか。Aメロ、Bメロはじんわりと思いを伝えていくようなイメージで歌って、サビは切なさを込めながらも力強く歌いました。そのあたりの緩急の付け方が難しかったです。
──逢田さんは曲の世界観をしっかりと捉えて、かつそれを表現するのが上手な方ですよね。曲の全体的な世界観を見て、ニュアンスを付けていくといいますか。
世界観を捉えるというのは、無意識のうちにすごく気にしていたかもしれないです。1曲1曲に別々のストーリーがあって、それを演じるという感覚があります。でも、レコーディング中はもっとこう表現したいのに技術的に追いつかないという、悔しい葛藤のほうが多いかもしれません。もっと自分の表現を突き詰めていきたいです。
何回人生をやり直しても、同じ道に
──6曲目の「光と雨」はガラッと雰囲気がまた変わって、シティ感のある曲ですね。軽快なリズムと、ギターのワウの感じが心地いいです。
この曲もデモを聴いたときから、すごくオシャレで絶対入れたいと思っていた曲ですね。
──これまでリスナーとしてこういった曲に触れてきたことは?
あんまりなかったんですよ。大人っぽくて、今までに聴いてこなかったタイプの楽曲だなあと。だから自分としても新しくて、アルバムの中でもいいスパイスになるんじゃないかなと思いました。
──この曲は女優なのか歌手なのか、表舞台に立つために夢を持って進んできた人の歌かと思います。これまでこの道を真っすぐに進んできた逢田さんが歌うからこそ、より意味が生まれる曲のように感じました。
そう感じていただけたらうれしいです。自分もこういった表舞台の世界にずっと憧れてきたので、この曲は感情移入しやすかったですね。例えば「大丈夫 もしまた逢えたとしても 私はこの道を選ぶ」という歌詞とかも、確かに私は何回人生をやり直しても同じ道をいくだろうなと思うので。スッと歌えるような曲でした。
──どういうところを意識しながらレコーディングしていきましたか?
この曲はとにかく力を抜いて歌いたいなと。なるべく自然体で歌うことを第一にして、その中で大人っぽい表現ができたらいいなと思いました。あとはファルセットを使う箇所も多かったので、そういった部分をなるべくきれいに表現できるように。聴いていて心地のいい曲になったらいいなというイメージで歌っていきました。
──ライブで聴くと、体を揺らして聴けて心地いいでしょうね。
ああ、そうですね。ライブで映える曲だと思います。ライブ中、この曲で1回力を抜いてリラックスしていただきたいです。
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