ナタリー PowerPush - a flood of circle

ビール片手にメンバーが語る “HISAYO加入後”と“これから”

音楽でメシが食えるかどうかなんてどうでもいい

──バンドマンには、いろいろなタイプの人がいますよね。ほかの仕事をやりながら、生計を立てる目的ではなくバンドをやってる人もいる。バイトをしながら音楽だけで食えることを目指してる人もいる。一方で音楽だけで食えてる人もいる。そういう「ロックンロールと生活」という観点では、佐々木さんはどういうことを考えてますか?

佐々木 まず、金の話はどうでもいいんですよ。ミュージシャンとかバンドマンが音楽でメシが食えるかどうかなんか、どうでもいい。“音楽で”暮らしてくかどうかじゃなくて、“音楽と”暮らしてくかどうかが大事だと思う。たまたま10年、20年前に音楽業界にバブルが来てただけと俺は感じているし。だから、バイトしてバンドやってても何が悪いかって思うし。俺は今たまたましてないけど、してた時期ももちろんあったし。それを抜きにして、何を言ってるかのほうがよっぽど大事だと思うし。

佐々木亮介(Vo, G)

──なるほど。

佐々木 ただ、そうすると「じゃあ、金は気にしてないのになんでメジャーのテイチクにいるのか」っていうことになってくる。そこは矛盾してると思うんですけど、答えはシンプルで。俺はずっと今も、駅前で誰もいなくても歌ってたりしていて。そのとき1人のおっさんしか聴いてなくても、フェスに出て1万人が聴いてても、言いたいことは一緒なんですよ。そこは一切変わらない。変えたくない。で、なんでテイチクに来たかって言うと、ここの人を俺は信頼してるから。その人と一緒にやったら面白いことが生まれると思ってる。事務所もレコード会社も、「ここに来たら面白いことが起こる」って感覚だけを信じてるんですよ。それが聴いてる人にも伝わるんじゃないかなって信じてるし。

──それでもCDが売れたほうがいいわけですよね。

佐々木 なんでCDを売りたいかって言うと、もしかしたらもっと売れてワンマンに人が入ったりすると、そのときに見た景色で言える言葉が出てくるんじゃないかって俺は期待してるんですよ。下北沢SHELTERに10人しかいなくてすげえ悔しいって思う気持ちと、1000人を前に「もっと」と思う気持ちとは違うもので。だから、1万人を前にしたら、1万人の前でしか出てこない言葉や音とかがあるんじゃないかっていう気がする。それをやりたいんですよ。あとの理屈はあんまりないんですよね。

──お金とか生活は一言で言ってしまえば、関係ない、と。

佐々木 そう。だから、バイトしててもいいし。バイトしてるミュージシャンが卑屈になる必要なんか全然ないと思う。

ベースを持つと“鬼的な部分”が出てくる

──「ロックンロールと生活」というテーマで言うと、渡邊さんはどうですか? ステージの上の音楽と自分の生活って切り離されてるものですか? それとも続いているものですか?

渡邊 俺の場合で言うと、ドラム叩いてる俺も、松屋で1人でごはんを食べてる俺も一緒だし。だから、そこってどっちにしろ自分だから、着飾っても変わらないんだなっていう。そう思うようになりましたね。

──HISAYOさんはどうでしょう? ステージの上と下は地続きだと思います?

HISAYO 私は違いますよ。そこに関しては2人と違うと思う。地続きではないです。私やっぱりメイクをして衣装を着ることによって、そのモードに入ります。

佐々木 スイッチがありますからね。

HISAYO そう、それはやっぱり私には、a flood of circle以外にも100%で向かう場所があるから。a flood of circleで演奏する場合は、普段の私や他のバンドの私を全部取っ払ってスイッチを入れないといけない。

佐々木 そのスイッチの入れ方が俺はカッコいいなと思う。姐さんが「あ、フラッドのスイッチ入れたな」ってわかるときあるんですよ。それを見て「カッコいいな」と思う。

──HISAYOさんがa flood of circle用のスイッチを入れると、どういう自分が現れる感じなんでしょう?

HISAYO Twitterとか見てる人はわかると思うんですけど、私、けっこう普段はポワポワしてるんですよ。「コジコジ」読んで、「コジコジになりたい」みたいに思ってる(笑)。でもベースを持つとスイッチが入るんですよね。で、フラッドの場合は、私の中でも一番“鬼的な部分”が出てくる(笑)。

佐々木 俺、それはすごいわかる。俺もよく「普段とステージで、雰囲気全然違うね」みたいなことを言われたりするんですよ。でも、もちろんステージでは気合い入ってるっていうのはあるんだけど、作ってるわけじゃなくて。だから、きっと姐さんの中にも、毎日“鬼”がいるわけですよ。

HISAYO いるいる(笑)。

結局残ってるのは本当に情熱がある人だけ

──この先に向けても、いいモードで曲ができている感じでしょうか?

佐々木 そうですね。ちょうど今バシバシ作ってる時期で、めちゃめちゃいい感じにできてますね。初期衝動よりもとがってきてるような部分もあるし。

渡邊一丘(Dr)

渡邊 歌詞は絶対変わってきたよね。

HISAYO おおっ!?

渡邊 亮介から見たリアルが、いい感じに鮮明になってる。そのリアリティが手に取るようにわかるというか。それがすごく気持ちいいなって思うんですけど。

佐々木 自分の考えが鮮明になってる感じは確かにあるかもしれない。さっきの金の話に戻るんですけど、実は今、金についての曲を作ってるんです。「I'm free」という曲なんですけど、俺は自由だって曲じゃなくて、俺はタダだっていう曲。政治的なことでもなんでも、文句を発するのって結局みんな金を払ってるからなんじゃないかなっていう。俺は個人的にはそういう感じじゃないんですよ。その人が好きでやってるってことしかない。だから、音楽業界が不振で予算や人員を削減して、結局残ってるのは本当に情熱がある人だけなんですよね。バンドマンだって、儲からないってやめるのは簡単で、気合い入れてやってる奴しか残らないと思ってるんです。情熱はタダだから。俺は自分に価値なんかないって思ってるんです。でも、だからやってる。開き直りですけど、逆ギレ込みでそういう曲を作ってる。

──「Dancing Zombiez」も逆ギレ感ありますよ、相当。だって「死んで、蘇れ」って歌ってる曲なんだから。

佐々木 そうですね(笑)。でもそれを言う気持ちよさもあるし、サムいかもしれないけどマジでそう思ってるので。今、マイノリティみたいな存在としてのロックンロールがまだあるとしたら、それがチャンスになるんじゃないかって思う。開き直ってでも、逆ギレでも、それを言いきるっていうのがチャンスになるんじゃないかなって気がしてます。

ニューシングル「Dancing Zombiez」 / 2013年4月24日発売 / 1200円 / インペリアルレコード / TECI-298
「Dancing Zombiez」
収録曲
  1. Dancing Zombiez
  2. アイ・ラヴ・ロックンロール
  3. 俺はお前の噛ませ犬じゃない
  4. 月面のプール
ツアー情報
Tour Dancing Zombiez“ROCK'N'ROLL HELL!!! AFOCの地獄突きワンマンツアー”
  • 2013年6月12日(水)愛知県 名古屋Electric Lady Land
  • 2013年6月13日(木)大阪府 umeda AKASO
  • 2013年6月16日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO

※チケット一般発売中

a flood of circle(あふらっどおぶさーくる)

2006年に結成。メンバーは佐々木亮介(Vo, G)、HISAYO(B)、渡邊一丘(Dr)の3名。ブルースや70年代ロックをベースにしたフリーキーなサウンド、ボーカル佐々木の強烈な歌声と、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。結成当初は下北沢・渋谷界隈を中心にライブを行い、次第に活動地域を拡大。2007年7月に初音源となるミニアルバム「a flood of circle」をリリースする。同時期に新人バンドの登竜門「FUJI ROCK FESTIVAL '07」のROOKIE A GO-GOステージに出演し反響を呼ぶ。2009年4月、1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビューを果たすが、全国ツアー中の7月に当時在籍していたギタリストが失踪。しかしバンドは活動を止めることなくライブを継続し、同年11月にアルバム「PARADOX PARADE」を発表。2010年12月より現在の体制で活動している。2012年9月にインペリアルレコードに移籍。同年12月にミニアルバム「FUCK FOREVER」を、2013年4月にシングル「Dancing Zombiez」をリリースした。