ナタリー PowerPush - a flood of circle
ビール片手にメンバーが語る “HISAYO加入後”と“これから”
メンバーがケツを蹴っ飛ばしてくれた
──アルバムで言うと「FUCK FOREVER」あたりから、言いたいことを言うモードというか、より遠慮がなくなってる感じがします。
佐々木 まさにそうです。
──これもやっぱりバンドの状況や3人の足元が固まったことが大きい?
佐々木 そうですね。姐さんと初めて作ったアルバムが「LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL」で、そのときに「感光」という曲で、ちょうど震災のあとだったんで「生きていて」っていう一番シンプルで簡単なメッセージを言った。自分の中で今必要なメッセージをちゃんと言うっていう気持ちがすごく高まったんですよ。でも、そのあともずっと自分の中には「世の中よくなっていかねえな」っていう違和感があって。政治とか、身の回りとか、自分自身のこととか、全部含めて「なんか納得いかねえな」みたいなことが怒りになって「FUCK」って言葉になった。テレビとかラジオで流せないって言われたりもしたけど、でもまあ、「それでも言っていいんじゃない?」っていうモードをメンバーが作ってくれた感じがしてますね。ケツを蹴っ飛ばしてくれたというか。
──HISAYOさんからは、2年4カ月ほど佐々木さんを見てきて、どういう人に見えます?
HISAYO やっぱ入ったときの印象とはけっこう違うんですよね。元から芯はあったと思うんですよ。バンドの環境が安定していったことによって、それをより素直に出せるようになった感じがする。それまで「これは言っていいのかな」って探るようなところがあったんですけど、「別にいいんじゃない?」「行け行け!」みたいになってきたのは確かです。
俺は1回死んだようなもん
──さて新曲の「Dancing Zombiez」はどういうふうにできてきたんでしょう?
佐々木 まず、今この時点で、ロックンロールバンドとしての正体をはっきりさせる必要があるっていう気持ちがあるんですよね。やっぱりなんか拭いきれない敗北感があって。世の中的には発言権がないかもしれないけど、俺はロックンロールで全部の物事が言えるっていう気持ちはずっと持ってて。俺はTwitterもブログもやってないけど、歌詞で全部言えばいいと思うし。そのときに思いついたのがゾンビっていうテーマで。
──というと?
佐々木 俺は1回死んだようなもんだなっていう感じがあるんですよ。けっこう前に派手に交通事故に遭ったときがあって。そんとき「もう死んだな」と思ったんですよ。だから、その後は一瞬にすべてを懸けなきゃ絶対ダメだっていう気持ちが沸いて。1回死んだなら、今よみがえんなきゃいつなんだっていう。
違和感こそロックンロールの源
──佐々木さんが曲を書くときって、「納得いかない」「違和感がある」というような感覚がモチベーションになっていますよね。それはどういうところからなんでしょう?
佐々木 俺、違和感ってすごく大事だと思うんですよ。違和感こそロックンロールの源だと思う。最初にTHE BEATLESを聴いたときも、ショックを受けたというか異物感がすごいあって。聴いたことない音楽だからびっくりするのもあるし、聴いたことないメッセージを聴いてびっくりすることもある。特に、歌詞を読んでハッと気付かされたりする瞬間って、俺はロックンロールが転がり出す瞬間だと思う。「なんか違う」とか「おかしいと思う」ってことを、青臭くてもダサくても恥ずかしくても堂々と言うっていうのがロックンロールの役割なのかなっていう気がしていて。
──なるほど。
佐々木 俺はこれを言わないと気が済まないって感じがすごいあるんですよ。俺にとってロックンロールというのは、好きとか、やりたいとかよりも、やらざるを得ないこと。そういうものがある以上、それに全部を懸けたい。そういう感覚がすごくあります。
──どんなバンドだって、最初に結成した頃は「バンド楽しい!」っていうところから始まるわけじゃないですか。そこからメジャーデビューが決まって、何もかもが初めてのフレッシュな時期があって。でもa flood of circleは、もはやそういう段階のバンドじゃない。でも、むしろそうじゃなくなったバンドを「続ける理由」みたいなものが音に染み付いてる感じがする。そのことですごく音楽がよくなってる感じがするんですよ。
佐々木 それはうれしいですね。俺らは初期衝動の時期が短かったんですよ。メンバーの失踪とかあって、フレッシュな時期がいきなり暗転したんで。でも、今はもうそれはどうでもよくて。辞めた奴らには幸せになってほしいけど、でも俺らは俺らでやらざるを得ない。もうやめられない。で、俺はとにかくボーカルで、自分でギター弾いてるし、詞も書いてて、わがまま言いやすいですよね(笑)。それをこの2人が受け止めてくれて、間違ってるときは違うって言ってくれる。初めてって言っていいほど、メンバーを信頼してる。だからある意味、初期衝動が今になって訪れてる感じはありますね。自分の態度さえはっきりさせとけば、いつでも新鮮な出来事は起きる。自分が中途半端な態度で音楽に向き合っちゃったときに、何も新しいことが起きなくなるっていう。
HISAYO わかる。だから今一緒にできてるってことですよ。佐々木亮介に意志がなくなったりすると、私はさーって引いちゃうんです。でも、ついていきたいって思う姿勢を常に見せてくれてるから。
収録曲
- Dancing Zombiez
- アイ・ラヴ・ロックンロール
- 俺はお前の噛ませ犬じゃない
- 月面のプール
ツアー情報
Tour Dancing Zombiez“ROCK'N'ROLL HELL!!! AFOCの地獄突きワンマンツアー”
- 2013年6月12日(水)愛知県 名古屋Electric Lady Land
- 2013年6月13日(木)大阪府 umeda AKASO
- 2013年6月16日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
※チケット一般発売中
a flood of circle(あふらっどおぶさーくる)
2006年に結成。メンバーは佐々木亮介(Vo, G)、HISAYO(B)、渡邊一丘(Dr)の3名。ブルースや70年代ロックをベースにしたフリーキーなサウンド、ボーカル佐々木の強烈な歌声と、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。結成当初は下北沢・渋谷界隈を中心にライブを行い、次第に活動地域を拡大。2007年7月に初音源となるミニアルバム「a flood of circle」をリリースする。同時期に新人バンドの登竜門「FUJI ROCK FESTIVAL '07」のROOKIE A GO-GOステージに出演し反響を呼ぶ。2009年4月、1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビューを果たすが、全国ツアー中の7月に当時在籍していたギタリストが失踪。しかしバンドは活動を止めることなくライブを継続し、同年11月にアルバム「PARADOX PARADE」を発表。2010年12月より現在の体制で活動している。2012年9月にインペリアルレコードに移籍。同年12月にミニアルバム「FUCK FOREVER」を、2013年4月にシングル「Dancing Zombiez」をリリースした。