ミュージシャンがきれいごとを言わなかったら誰が言う
──悲しいことに今、また戦争が始まって、SNSでも意見の食い違いや対立が起きています。そんな中で、大木さんが主張されていることは、どっち側についてどうこうとは、まったく別次元の話だと感じました。大木さんの中には、そういう対立軸がそもそもないのでしょうか?
それはまったくないです。僕、思想は強いけど、右とか左とかじゃない。宇宙は138億年の歴史があって、その中のたまたまこの瞬間に人間がいるだけなんです。国も違えば、考え方も違う。僕は20年先じゃなくて、100年、200年、1000年、1万年の規模で物事を考える。そうすると、生死をさまようほどの危機でもない限り、殺し合う理由はない。あまりにもナンセンスだと思います。
──まったくおっしゃる通りです。
とにかく、まずは手を取り合うところから始めるしかない。過去の争いが積み重なって今がある以上、先人たちや亡くなった人たちのためにも、宇宙や命のスケールで物事を見て、失うものをなるべく少なくしていくべきだと思うんです。宇宙の時間軸で考えれば考えるほど、同じ人類が争い合うことの無意味さを痛感する。もちろん、「戦争反対」と言うだけで済むほど簡単な話じゃない。それでも──たとえきれいごとでもミュージシャンが言わなかったら誰が言うんだ?とずっと思っています。
──それがアーティストの役目でもある、と。
僕らは政治家でもないし、「正しいこと」を断言できる人間でもない。ただ、美しいことを歌おうとしている。美しさって、想像をはるかに超えたものを届けて、聴いてくれる人に少しでも日常を超えてもらうことだと思うんですよね。その「日常を超えた感覚」に触れてもらうのが、アートの役割だと思っています。
いいものはもうできてる
──武道館公演を経て、これからやっていきたいことや課題などは見えてきましたか?
今回の映像作品を観て思ったのが、ACIDMANには課題点がないんですよね。もうできているから、あとは伝えるだけ。これがうまく伝わったら、とんでもないことになるなって、映像を観てひしひしと感じたんです。ただ、僕は事務所を経営しておきながら、売るセンスがない(笑)。だから強いて課題を挙げるとしたら、いいものはもうできているので、これをどう売っていくか、というところですね。
──映像作品の見どころ、そしてファンの方にどんなところを観てほしいですか?
会場に来てくれた人にとっては、あの瞬間がきちんと切り取られているので、ライブの生々しさをもう一度体感できる映像になっていると思います。来られなかった人にとっても、限りなく現場に近い疑似体験ができるはずです。
──本作には、ツアーのドキュメンタリー映像も収録されているそうですね。
各会場でリクエストを募って1曲だけ演奏しましたが、そのときの様子が全国分まとめて入ってます。それぞれワンコーラスずつですが、そのままスマホで撮ったような空気感の映像が一気に流れる構成で、1時間以上あります。各地のお客さんの声も入っていて、僕は毎回そこで泣いちゃうくらい感動するんです。ファンの皆さんが「ACIDMANを好きでよかった」と思えるような作品になったと思います。
──3月28日には、本作のリリースを記念した先行上映会が東京・ユナイテッド・シネマ豊洲で開催されます(※取材は3月上旬に実施)。
僕らは挨拶をするだけですが……正直、うらやましい(笑)。映画館の大音量と大画面でライブを味わえる機会って、めったにないと思うので。もちろん生のライブが一番だし、家で観るのも最高。そのうえで、映画館でライブを観る体験はかなり貴重だと思います。武道館に来た方でも、大音量・大画面だとまた違う感覚になると思います。
──そして4月からは、13thアルバム「光学」を携えた全国ツアー「ACIDMAN LIVE TOUR “光学”」が始まります。ファイナルは千葉・幕張メッセ国際展示場9・10ホールですね
幕張メッセでワンマンをやるのは18年ぶりなので、最初この話を聞いたときは正直「とんでもなくハードルが高いな」と思いました。武道館とは会場の性質がまったく違うので。武道館が“立体”だとしたら、幕張は“平面”で、ある意味ライブハウスの延長線みたいな見え方になると思うんです。でも、そういう場所だからこそ「どこまで光が届くのか」というテーマは面白いんじゃないかと最近は話していて。考えるほどに、だんだん「幕張もありかも」と思えてきました。
──今はそのあたりもポジティブに捉えられているんですね。
本音は怖いですよ。できれば勝負なんてしたくない(笑)。でも、武道館のあとに18年ぶりの大きな場所で挑戦できるチャンスがあるだけでありがたい。「光学」の“光”がどこまで届くのか、それをぜひ観に来てほしいなと思ってます。
公演情報
ACIDMAN LIVE TOUR “光学”
- 2026年4月9日(木)神奈川県 KT Zepp Yokohama
- 2026年4月18日(土)宮城県 石巻BLUE RESISTANCE
- 2026年4月29日(水・祝)静岡県 LIVE ROXY SHIZUOKA
- 2026年5月10日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
- 2026年5月15日(金)大阪府 NHK大阪ホール
- 2026年5月22日(金)埼玉県 ウェスタ川越
- 2026年5月24日(日)福岡県 DRUM LOGOS
- 2026年5月29日(金)宮城県 Rensa
- 2026年6月6日(土)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2026年6月14日(日)沖縄県 桜坂セントラル
- 2026年6月27日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場9・10ホール
プロフィール
ACIDMAN(アシッドマン)
1997年に結成された、大木伸夫(Vo, G)、佐藤雅俊(B)、浦山一悟(Dr)の3人からなるロックバンド。2002年10月にアルバム「創」でメジャーデビューを果たした。2007年7月に初の日本武道館公演を行い、以降、現在までにオリジナルアルバム13枚を発表、日本武道館公演を7度開催している。生命や宇宙をテーマにした独特の詞世界、静と動の両面を表現する幅広いサウンド、映像とリンクした演出を盛り込んだライブなどが高い評価を得ている。2024年1月に映画「ゴールデンカムイ」の主題歌「輝けるもの」をリリース。2025年3月よりワンマンツアー「ACIDMAN LIVE TOUR "This is ACIDMAN 2025"」を実施。10月にはニューアルバム「光学」とトリビュートアルバム「ACIDMAN Tribute Works」を同時リリースした。4月より全国ツアー「ACIDMAN LIVE TOUR “光学”」を開催し、ファイナルを約18年ぶりとなる千葉・幕張メッセ国際展示場で行う。
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