ACIDMAN「This is ACIDMAN」開催記念インタビュー「センス・オブ・ワンダーと向き合い続ける フロントマン・大木伸夫の現在地」 (2/2)

もっともっと1人でも多くの人に届けたい

──「距離的な俯瞰」だけではなく、「時間的な俯瞰」も本当に大事だと改めて思いました。しかも、ポジティブな面に目を向けるというのは僕たちに今一番欠けていることかもしれないですね。

ポジティブな面に目を向けるということは、ネガティブな現実から目をそらすということではないんです。そこがなかなか伝わらないこともあるんだけど……しっかりとネガティブな現実を受け入れながらポジティブに生きる。うちの企業理念は「明るく・楽しく・元気よく」なんですけど、それに尽きるなって。幼稚園のときに先生に言われたようなことが、大人になって一番大事だと気付きます。

──歌詞以外の部分、例えばサウンド面やボーカル面でのアプローチに変化はありますか?

若い頃のように叫んだり、キーの高い楽曲を歌ったりするのは、やっぱり体力的にもだんだん難しくなってくると思います。人間ですから、どうしても衰えていく部分はありますよね。なので、そういう曲はあまり作らないようにしているところはあります。突発的にエモーショナルになったら性格的にたぶん止められないですけど(笑)、そういう衝動的なものよりも、最近はもっと、じんわりと心の奥に届くようなアンビエンス的なもの、響きで伝えるような音楽に惹かれるようになってきて。今後はそういう曲をどんどん作っていくかもしれません。

──そういう意味で、目指す音楽家はいますか?

以前、僕たちの楽曲「風追い人(前編)」「風追い人(後編)」(アルバム「新世界」収録)にピアノで参加していただいた坂本龍一さんのような響きを大事にしている音楽家に憧れます。彼の最後の作品「Opus」は本当に素晴らしく、心の奥に深く突き刺さりました。

──ほかのインタビューでご自身のことを「あまのじゃくで飽きっぽい」とおっしゃっていましたが、音楽を続けていくうえでのモチベーションはどこにありますか?

モチベーションを上げようとか考えたことが、実はあまりなくて。たぶん本当に子供の頃から世界の不思議とか世界の謎みたいなものに挑むのが好きだった少年が、そのまま音楽という表現手段に出会っただけなんです。そしてたまたま音楽とすごく相性がよかったという。ただ、「伝えたい」という気持ちは人一倍強い。もし自分の思っていることが、理想通りにちゃんと伝わったとしたら、「もう十分かもな」と考えが変わるのかもしれないですが、今のところはまだ何も達成できてないので、もっともっと1人でも多くの人に届けたくて活動しています。

大木伸夫

ここまできたらもう一生やるよね

──先ほどアルバムの話も出ましたが、これからの展望についても伺いたいです。

新しいアルバム「光学」が武道館ライブの直後、10月29日に出ます。今まさに絶賛レコーディング中で、残り3、4曲というところまで来ています。すごくいいものができていて、武道館モードでもあるんだけど、早く次のツアーでみんなに新曲たちを聴いてもらいたいです。

──前作「INNOCENCE」以来となりますよね?

4年ぶりですよね。昔の僕からしたら「4年後にやっと1枚?」という感じですが、この4年間に詰めてきた思いがたくさんあるんです。うまく言えないのですが、「この4年間考えてきたことが、全部詰まってる」という感じがしていて。すごく強いアルバムになるはずです。もう少し長い展望でいうと……「ここまできたらもう一生バンドをやるよね」。同世代の仲間、BRAHMANのTOSHI-LOWや細美(武士)くん、ストレイテナーのホリエ(アツシ)くんとかと集まったときも、よくそういう話になります。

──「一生バンドを続ける」って、すごい覚悟だと思います。

65歳までは絶対に続けたいと思っているし、それ以降でも、もしお客さんが来てくれる環境があるなら、もちろん「もっと売れたい」「もっと大きなところでやりたい」という気持ちは、ずっとある。その一方で、歳を重ねるごとにそんな事はどうでもよくなってくるというか(笑)。それよりも今バンドをやれていることがどれだけ尊いことかを噛みしめています。

──続けていること自体が価値だと。

そうですね。有名無名に関わらず、ずっと続けられている人たちってみんな本当にカッコいいと思うんです。たとえ動員が少なくても、それでも活動を続けられているバンドは超カッコいいし、そういうバンドに「勝ちたい!」と本気で思う。結局やりたいことをやって、続けられているという姿がすべてというか。そうやって続けていって、将来振り返ったときに「最高だったな」と思えるような、そういうバンドでありたいです。

公演情報

ACIDMAN日本武道館公演「This is ACIDMAN」

2025年10月26日(日)東京都 日本武道館

チケット一般発売:2025年8月26日

イープラス

ローソンチケット

チケットぴあ

プロフィール

ACIDMAN(アシッドマン)

1997年に結成された、大木伸夫(Vo, G)、佐藤雅俊(B)、浦山一悟(Dr)の3人からなるロックバンド。2002年に限定シングル「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」を連続リリースし、2002年10月にアルバム「創」でメジャーデビューを果たした。2007年7月に初の日本武道館公演を開催。生命や宇宙をテーマにした独特の詞世界、静と動の両面を表現する幅広いサウンド、映像とリンクした演出を盛り込んだライブなどが高い評価を得ている。2017年には、結成20周年の集大成として故郷埼玉のさいたまスーパーアリーナにて主催フェス「SAITAMA ROCK FESTIVAL "SAI"」を開催。2022年にもさいたまスーパーアリーナにて「"SAI" 2022」を行い、2日間で約4万人を動員した。2024年1月に映画「ゴールデンカムイ」の主題歌「輝けるもの」をリリース。2025年3月よりワンマンツアー「ACIDMAN LIVE TOUR "This is ACIDMAN 2025"」を開催。10月26日にはこのツアーのファイナルとして7年ぶり7度目の日本武道館公演「This is ACIDMAN」を行う。その3日後、10月29日にはニューアルバム「光学」&トリビュートアルバム「ACIDMAN Tribute Works」を同時リリースする。