A9|ヴィジュアル系シーンの異端児、15年間の変遷と変わらないもの

「No」と言わない人たちがそろった

──2015年にバンド名をA9に改めてからは、さらにエンタテインメント性を追求するようになって。バンドという枠すらも超えている印象ですが、それはやはり意図的なものだったんでしょうか?

 そうですね。12周年のときに、結成から2年目までの曲だけのライブ(2016年8月に東京・新木場STUDIO COASTで行われた「A9 XII ANNIVERSARY LIVE"NO NAME" -名前は未だ無い-」)をやったんですけど、近年の中では、お客さんがかなり集まってくれて。そのときに思ったのは、「曲がどうとか、歌やギターがどうという以前に、A9というコミュニティを形成してくれてるんだな」ということだったんです。2000年代前半のネオヴィジュアル系のバンドにワクワクしながら青春を過ごした人たちがいて、自分たちはその中心にいるんだなと。そのときから「A9をIP(知的財産権)として捉えて、どんなコンテンツを提供できるか」という考え方をするようになったんですよね。曲に合わせてみんなで同じ動きをするのもそうだし、僕たちが楽器を演奏しないで踊るのもそうなんですけど、A9を愛してくれている人たちに対して、どういう体験を提供できるかが一番大事だなと。そのためにはどんな曲をやってもいいし、新しく何かをやることにまったく躊躇しなくなりました。あとは、そのクオリティを上げていくだけだなって。どんな仕事もそうですけど、「このコンテンツを手に取れば、幸せになります」という約束の積み重ねじゃないですか。バンドもそうだと思うんですよね。

──今回の再録ベストもその一環であると。

 そうですね。15年やってるし、過去の曲をYouTubeでさかのぼるのも大変だと思うんですよ。今回のベストを導入部にして、面白いと思ってくれたら動画も観てほしいし、いろいろ掘ってもらえたらなと。自分たちとしては「アーティスト性が高いコンテンツもやってみたい」という段階に入ってるので、今後はそういうものも提供できるだろうし。多様性も大事だし、A9はそれができるバンドだとも思うので。インターネットの影響も大きいですね。このバンドで活動し始めてから2007年にiPhoneが発売されたんですが、インターネットが完全に浸透したことによって、コンテンツの意味が変わりましたからね。自分たちの活動が変化したのも、自然なことなのかなと。去年の14周年のライブは、ダンスや演劇もやりましたから。

ヒロト(G)

ヒロト もともとA9は、誰かが突飛なことを言い出しても「No」と言わない人たちがそろってるんです。結成2年目のときに「制服を着て演技をするミュージックビデオを撮ろう」という話になったんですけど、バンドという形にこだわったら「No」だと思うんですよ。でも、誰もそんなことは言わなかったし、そのスタンスはずっと変わってないのかなと。任天堂はもともと花札やカルタを作っていた会社でしたけど、それだけにこだわっていたら、今の任天堂はないわけで。それと同じというわけではないけど、A9も時代の変化と共に変わってきたんだと思います。今回の再録ベストにしても、「21曲再録しよう」という話になったとき、「やめたほうがいい」という意見があっても不思議じゃないと思うんですよ。「原曲が好きな人もいるんだから」とか。そうじゃなくて、「いいね、やろうぜ」ってなるのがA9なんですよね。

 成長はしてますけど、根本は変わってない感じがしますね。俺ももともと、エンタテインメントをやりたくて。A9の前のバンドでもライブで寸劇やってたり。

ヒロト やってた! 「解散ライブで寸劇やってる!」と思ったから。

 ラップバトルもやってましたね。

 バンドなのに(笑)。

Nao A9でも寸劇やってますけど、演技ができないなんて思ってないんですよ。むしろ「ここから俳優の道が開けるかも」っていう(笑)。

 実際に観た人は、ちゃんちゃらおかしいだろうけど(笑)。

ヒロト 去年は「ダンサーのNao」って言ってたよね。

Nao それくらい狂ってるということですね(笑)。一昨年くらいに「これからどういう活動をしていこうか」という話し合いの中で、「バンドなんだけど、形にこだわらず、いろんなことに挑戦しよう」という話もしていました。

──メンバーそれぞれ、違う分野で才能を発揮できているのもいいですよね。

 それはバンドを組む以前から変わっていないですね。例えば沙我くんは、一緒にバンドをやる前から「作曲のセンスがすごい」と言われてましたからね。

 今は沙我くんにA&R、プロデューサーの役割も引き受けてもらっていて。

沙我 Naoは経理を担当していて、ドラムよりも電卓を叩くほうが好きみたいですよ。

Nao 好きとは言ってない(笑)。独立するときに、マネージメントの人から「Naoくん、経理やって」と言われたからやってるだけなんで。まあ、性格も細かいし、このメンバーの中では向いてるんでしょうね。

 大の大人が5人いるんだから、それなりにやれることはあるかなと。「メンバーのバランスがいい」というのは、昔から言われてるんですよ。最初は“たまたま”だったけど、長く活動を続けているうちに、それぞれの役割もできてきて。それはほかのバンドにはない武器だし、メンバーの絆を大事にしながら、A9として世の中に何が提供できるか考えていきたいですね。

今の時代に対するアンチテーゼになるような価値観を

──アルバムリリース後、4月26日から「BEST OF A9 TOUR『ALIVERSARY』」と題した全国ワンマンツアーが始まります。かなり細かく地方を回るツアーですね。

沙我 でも、意外とスケジュールは余裕があって。

 週末が中心なので、社会人のお客さんに優しいツアーだと思います。

ヒロト 15周年のうちに、今まで行ったことがなかった県を回りたいという裏テーマがあって。山口、宮崎、滋賀あたりは、ワンマンで行くのは初めてなんですよ。

 これで47都道府県コンプリートですね。

──ファイナルは8月10日の東京・日比谷野外大音楽堂です。

 野音についても話し合ってますけど、まだ“さわり”くらいですね。節目でもあるので、原点回帰をテーマにしたいなと……言えることはそれくらいです(笑)。

──今年の1~3月には台湾、香港、上海で単独ツアーも行っていました。これからも海外を視野に入れていこうと?

 そうですね。3年半ぶりのアジアツアーだったんですが、アジアの皆さんはヴィジュアル系をいち早く認めてくれたし、日本のバンドとして、できる限り海外での活動もがんばりたいなと。

──日本のヴィジュアル系シーンを盛り上げたいという気持ちもありますか?

 ジャンルとしてのヴィジュアル系自体、産業としては終わっているので、それはなんとも言えないですね。男性がメイクしてステージに上がることが衝撃だったのは、基本的に80年代の話だと思うんです。今やまったく珍しいことではないし、皆さんがイメージしているただきらびやかなヴィジュアル系は何もセンセーショナルじゃないので。過去のヴィジュアル系を作ってきた方々の素晴らしさは揺るぎないですが、その下の世代である自分たちが同じことをやるのは違う。そうじゃなくて、今の時代に対するアンチテーゼになるような価値観を発明しないといけない。僕らも含めて、そのことにもっと意識的になる必要があると思います。

A9

ツアー情報

BEST OF A9 TOUR「ALIVERSARY」CASE OF 花鳥
  • 2019年4月26日(金)東京都 高田馬場AREA(NUMBER SIX.限定公演)
  • 2019年5月4日(土・祝)東京都 TSUTAYA O-EAST(ヒロト生誕祭)
  • 2019年5月10日(金)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2019年5月12日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2019年5月18日(土)山形県 山形ミュージック昭和Session
  • 2019年5月19日(日)岩手県 Club Change WAVE
  • 2019年5月25日(土)岐阜県 CLUB ROOTS
  • 2019年5月26日(日)京都府 京都FANJ
  • 2019年5月28日(火)香川県 DIME
  • 2019年5月30日(木)山口県 LIVE rise SHUNAN
  • 2019年6月1日(土)宮崎県 SR BOX
  • 2019年6月2日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2019年6月8日(土)山梨県 甲府Conviction
  • 2019年6月9日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
BEST OF A9 TOUR「ALIVERSARY」CASE OF 風月
  • 2019年6月15日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2019年6月16日(日)奈良県 奈良NEVER LAND
  • 2019年6月22日(土)新潟県 NEXS Niigata
  • 2019年6月23日(日)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN(沙我生誕祭)
  • 2019年7月6日(土)福岡県 DRUM LOGOS(将生誕祭)
  • 2019年7月7日(日)長崎県 DRUM Be-7
  • 2019年7月13日(土)宮城県 Rensa
  • 2019年7月15日(月・祝)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2019年7月18日(木)滋賀県 B-FLAT
  • 2019年7月20日(土)愛媛県 松山サロンキティ
  • 2019年7月21日(日)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2019年7月26日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2019年7月28日(日)大阪府 BIGCAT(Nao生誕祭)
BEST OF A9 TOUR「ALIVERSARY」FINAL A9 15TH ANNIVERSARY
  • 2019年8月10日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂