Pick Up!

ネクライトーキー モブなりのカンフー
がむしゃらなバンドの歩みがにじむ、“ステゴロ一辺倒”なメジャーデビュー5周年を飾る1曲
文 / 竹内陽香(音楽と人)
メジャーデビュー5周年記念と銘打たれた4曲入りEP「モブなりのカンフー」。ここにはアニバーサリーを賑々しくお祝いするような雰囲気はあまりないけれど、移り変わりの早い今の音楽シーンにおいて、メジャーという舞台で5年間生き抜いてきたバンドのアティチュードが表れている。
作詞作曲を担当している朝日(G)が生み出す楽曲は、何も持っていない自分に対する苛立ちや虚しさ、生活の中で生まれるネガティブな感情がつづられるものが昔から多い。それをポップなバンドサウンドに乗せることでポジティブに変換する。そのギャップが彼らの魅力であり、同じような思いを抱えるリスナーの心を揺さぶってきた。
その姿勢は5年経った今でも変わっていない。EPのリード曲にあたる「モブなりのカンフー」の主人公は、スポットライトが似合う主役やヒーローではなく、ピカピカのスニーカーが少し嫌になってしまうような、ちょっと卑屈で自分に自信が持てない人物。アニバーサリーのお祝いタイミングくらい、主役だぞ!と堂々としてもいいはずなのに、そうなれないところがネクライトーキーの愛おしいところだ。
しかし、「どうせ自分はちっぽけな存在なんだ」と悲観するだけではない。何も持ってないなりに自分には何ができるのかを見つめ、示した戦い方が「ステゴロ一辺倒」という潔さもヨシ。サウンド面では、ドラムもギターもキーボードも細かく動きまくって3分強を駆け抜けていく。そんな疾走感あふれるぐちゃっとした演奏も、がむしゃらに走り続けてきたバンドの歩みがにじんでいるよう。
「どうせ自分なんて」と卑屈になりすぎていたらここまでバンドは続いてこなかったはず。しんどいことだらけの毎日の中でちょっとでもマシな自分になりたくて、いつだって「ステゴロ一辺倒」でがむしゃらに進んできたからネクライトーキーの今がある。だから5周年を記念するならば、これ以外の曲はやはりなかっただろう。これからも彼らの音楽は、主役にはなれない捻くれ者や日陰者たちの心を掬ってくれる。
ネクライトーキーMV「モブなりのカンフー」/ NECRY TALKIE - Mob Narino Kung Fu
ネクライトーキー(ネクライトーキー)

2017年結成のもっさ(Vo, G)、朝日(G)、藤田(B)、中村郁香(Key)、カズマ・タケイ(Dr)からなるバンド。邦楽、洋楽、ゲームミュージックなどを取り込んだ遊び心のあるポップなメロディや、コミカル、ネガティブ、毒気、切なさを内包した歌詞、もっさのあどけなさの残る歌声が特徴の楽曲で人気を集める。2020年1月にアルバム「ZOO!!」でメジャーデビュー。2025年1月にワンマンライブ「祝!メジャーデビュー5周年記念公演」を東京・下北沢ERAで開催し、3月に2nd EP「モブなりのカンフー」を配信リリースした。5月からはライブハウスツアー「ゴーゴートーキーズ!2025 北上」を開催し、2nd EPの数量限定CDをライブ会場で販売。
ネクライトーキー - necrytalkie-official
ネクライトーキー / NECRY TALKIE (@Talkie_official) | X
ネクライトーキー _ Necry Talkie(@necry_talkie_official) - Instagram