プロデューサー白倉伸一郎&武部直美が「機界戦隊ゼンカイジャー」で“打倒仮面ライダー”狙う!?スピンオフ誕生秘話も

イマジン人気は異常なんです(武部)

──本編は第10話まで放送されましたが(※取材は5月10日に実施)、反響などから手応えは感じていますか?

武部 製作発表のときから反響はいただけていたんです。あの、茶番のような会見(笑)。

一同 (笑)

武部 ぜいたくにも声優さんに、大真面目に「ゼンカイジュランを演じることになりました、ジュランです!」みたいなことを生当てしてもらって(笑)。あの頃から「面白そう」と言ってもらえて、再生数も多かったんです。あとは「楽しい」というシンプルな感想が一番うれしいかな。

白倉 その通りだと思います。

武部 やっぱり声優さんってお芝居がすごく上手なので、びっくりします。今日も仕上げをやってきたんですが、隙間がないくらいびっしりとアドリブが入っているんです! それが聞き取りやすい声なので非常にレベルが高いと思います。

後列左からジュラン、駒木根葵汰演じる五色田介人、ブルーン。前列左からガオーン、榊原郁恵演じる五色田ヤツデ、マジーヌ。

──キカイノイド4人の人気ぶりは、お二人が手がけた「仮面ライダー電王」のイマジン人気に重なる気がします。「電王」企画段階の頃は、スーツのキャラクターがこんなに出てくるなんて、という不安の声もあったと聞きましたが……。

武部 そうですね。誰も人気が出ると思っていなかったモモタロス(笑)。あの頃は「せっかく付いてくれた大人の仮面ライダーファンがみんな離れることになる」と言われましたし。

白倉 音を立てて逃げていくのが目に見えると(笑)。「電王」は最後のほうまで「こんなにデンライナー内での着ぐるみのシーンが続くと、お客さんが逃げる」という反対意見が強かったんですよね。

武部 でも誰も予想していなかったことに、アニメファンの方々が観てくれるようになって面白かったですね。

──イマジンの成功例があったからこそ、今回は確信を持って進められたのでしょうか。

武部 どうでしょうかね……柳の下にいつもドジョウがいるとは限らないし……(笑)。やっぱりイマジン人気は異常なんです。だからこそ今回は二番煎じに見えなければいいなと。

白倉 あくまでこれはスーパー戦隊なんですよね。「電王」はまず野上良太郎という単体ヒーローがいて、イマジン側の主人公のようなモモタロスとの絆が物語の中心にあった。それに比べて「ゼンカイジャー」は、五色田介人という主人公はいるけど、介人とジュラン、介人とガオーンの絆が特別強く描かれるわけではない。スーパー戦隊では特定の絆よりも“仲間”という意識が上位にくるかなと。「電王」と見た目の印象は近いけど、作劇はだいぶ違う気がしています。

負けてばかりのヒーローにはしたくない(武部)

──第8話からは追加戦士のツーカイザーが登場しました。人間ヒーローが介人1人だったために早めの投入になったのでしょうか。

左からリッキー、森日菜美演じるフリント、増子敦貴演じるゾックス、カッタナー。

白倉 それもありますし、ゴールデンウイーク前に出しておきたかったという狙いもあります。「ゼンカイジャー」は追加戦士に限らずすべてのイベントを、ちょっとフライング気味にやっていきたいんです。追加戦士の前にライバル戦士を出すのもそう。「ちょっとそれ早すぎない?」くらいがいいかなと思っています。

武部 すでにオープニング映像には(本編ではまだ登場していない)追加戦士のロボも出しています。「ゼンカイジャー」ってちょっとツッコミ待ちなのかなと思うようになってきました(笑)。なぜかしわ餅?(※第9話にはカシワモチワルドが登場)とか、ツーカイザーはなぜ踊る?とか、ツッコみながら観るのが楽しい番組なのかなと。やりすぎくらいのほうが「観なきゃ損なんじゃ!?」と思ってもらえますよね。白倉が「ジオウ」の頃から言っていたことですが、今の世の中「次にこれが出ますよ」という宣伝をやりすぎて、みんな確認のために本編を観ているようなところがあって。せっかくリアルタイムで観るなら、「そろそろ追加戦士が出る頃かな」ではなく、予想していなかったものの登場に驚きたいですよね。

「機界戦隊ゼンカイジャー」

──カシワモチワルドしかり、ツーカイザーの踊りしかり、描くテーマはまっすぐでありながら表現はコメディ調なのが「ゼンカイジャー」の特徴かなと。「コロナ禍で世の中が大変なときこそ明るい作品を」という意識なのでしょうか。

武部 コロナに関係なく、「スーパー戦隊は明るく楽しく!」みたいな意識はありますね。実は、ゼンカイジャーは強くしたかったんです。子供は強い存在が好きですし、ピンチで負けてばかりいるようなヒーローにはしたくない。ツーカイザーもすごく強いですからね。

白倉 最初にスタッフにも「はたからスーパー戦隊を観ていると、5人が敵にやられる場面が多く感じる。なるべくやめようぜ」と言いました。

武部 「秘密戦隊ゴレンジャー」って敵にボカンボカンやられても、突っ伏すことなく煙の中からダーッと出てくるんですよね。ああいう強さが欲しい、と最初に言っていましたね。

白倉 ゴレンジャーは「うわあ!」となったそのカットで立ち直る。やられてないんですよ(笑)。

香村純子さんが「赤が並ぶのは納得できない」(武部)

「機界戦隊ゼンカイジャー スピンオフ ゼンカイレッド大紹介!」

──ここからスピンオフ「ゼンカイレッド大紹介!」についても伺っていければと思います。「スーパー戦隊のセンターは赤であるべき」と言ってゼンカイレッドが登場し、ゼンカイザーの座を奪おうとする……というストーリーが衝撃的ですが、まずは改めてなぜゼンカイザーが白いヒーローになったのか教えていただきたいです。

武部 ゼンカイザーもギリギリまで赤い予定でしたからね。でも脚本家の香村純子さんが、赤いゼンカイザーと赤いジュランが並んでいることに対して「どうしても納得できない」と言っていたんです。

──「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」を手がけた香村さんがそうおっしゃるとは意外です。

白倉 やっぱり5色並ぶのがスーパー戦隊であるとおっしゃっていました。

ゼンカイザー

武部 だからジュランを緑にする案もあったんですが、ゼンカイオー ジュラガオーンの半身が緑になるとパンチが弱くなると言う方もいて。ならばと思ってゼンカイザーをレインボーにすることになったのですが、そこはさすがプロのデザイナーさん。ただの虹色ではなく、真ん中を赤くすることによって赤成分を多くしてくださったんです。レインボーでありながら赤が際立って、いいデザインだなと思いました。

──白というよりレインボーなんですね。

白倉 このデザインは“1人ゴレンジャー”なんです。本当にこうしてよかったなと思いますね。ほかのスーパー戦隊のレッドと並んだ時に目立つし、いまだに見ていて飽きないところがある。

武部 アカレンジャーを参考にデザインしてみて、あらためて石森章太郎先生のデザインはさすがだなと思いました。歴代レッドを見ていると正直今なら選ばないようなデザインもあるのですが(笑)、アカレンジャーは古く見えないし今でもかっこいいと思えるんですよね。