映画ナタリー Power Push - 「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」
宮藤官九郎×長瀬智也×神木隆之介 3人の戦友が語る、“地獄の軽音楽部”誕生秘話
宮藤官九郎の監督最新作「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」が6月25日に公開される。長瀬智也、神木隆之介出演で贈る本作の舞台はずばり“地獄”。不慮の事故で命を落とした高校生の大助が、赤鬼・キラーKの“鬼特訓”のもと人間に転生するため奮闘する。7年ぶりの映画主演となる長瀬は毎回90分かけた特殊メイクでキラーKに扮し、大助役の神木はコミカルな演技や拷問シーンにも果敢に挑んだ。
映画ナタリーでは「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」特集を2回にわたって展開する。第1弾にあたる今回は、宮藤、長瀬、神木の3人にインタビュー。これまでも映画やドラマで現場をともにしてきた3人だからこそ知っているそれぞれの意外な一面や、“地獄”という世界観をどう作り上げていったのかを語ってもらった。
取材・文 / 浅見みなほ インタビュー撮影 / 北浦敦子
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オファーが来たときは「やっとか!」って(長瀬)
──“地獄”がテーマということで、長瀬さんのビジュアルもすごいことになっていますね。制作のきっかけを教えていただけますか?
宮藤官九郎 “地獄”っていうテーマと長瀬くんのキャスティングはほぼ同時に思い付きました。長瀬くんとはこれまでいろいろな作品をやってきましたが、意外とロックを扱った作品はなくて。そもそも長瀬くんは日本のジャック・ブラックじゃないかと思っていて。だったら「スクール・オブ・ロック」みたいなのはどうかなと。長瀬くんがギターを持って芝居してるイメージがずっとあったんです。それで“地獄で軽音楽部の顧問をしてる鬼”っていうアイデアから、「地獄の軽音楽部」っていう仮タイトルを思い付きました。ということは誰かに音楽を教えていなきゃいけない。それで高校生の大助っていうキャラクターを考えたときに、地獄に落ちていることをあまり自覚してないやつがいいなと思って、わりとすぐに神木くんが浮かんだ(笑)。……それで、ヒロインは皆川猿時(笑)。その3つをイメージして作りましたね。
長瀬智也 「スクール・オブ・ロック」みたいな、音楽を題材にした映画は監督も僕もお互い好きだったんです。たまに一緒にお仕事させてもらうときにもそんな話をしていて。だから今回お話が来たときは「やっとか!」っていう気持ちもありました。特に共通の好きな映画もあったので、その時点でなんとなく世界観が思い描けていたし。
宮藤 「テネイシャスD(~運命のピックをさがせ!)」ね! これもジャック・ブラックのやつなんですけど。
長瀬 それはサタンが出てくるんですよ。だから今回の鬼役っていうのもさじ加減がわかってました。本当の鬼というよりも、「俺たちは地獄からやって来た」って言ってるKISSのジーン・シモンズのような、ロックを通しての鬼。
──神木さんはオファーを受けたとき、どう思われました?
神木隆之介 僕は、「地獄ってどういうことですか?」っていうのを何回も聞きました(笑)。びっくりしてしまったので。大助の役どころを聞いたときは、地獄に落ちるなんてこれが最初で最後だろうなって。
宮藤 別の作品でもう1回地獄に落ちろって言われたら嫌だもんね(笑)。
神木 学校で軽音楽部には入っていたのですが、お仕事でギターを弾く役はやらせていただいたことがなかったので。でも、長瀬さんと一緒だと聞いて、「安心だ」って思いました(笑)。
──軽音楽部だったんですね?
神木 友達とスタジオへ行っていました。それがこうやって作品に結び付くとは思っていなかったですけど、軽音楽部でよかったなと思いました。
長瀬くんは1コマずつ全部キメ顔だった(宮藤)
──宮藤さんと長瀬さんは、2000年のドラマ「池袋ウエストゲートパーク」から始まり、映画「真夜中の弥次さん喜多さん」やドラマ「タイガー&ドラゴン」「うぬぼれ刑事」と、長く一緒にやって来られていますよね。
宮藤 長瀬くんのすごい話があって、「うぬぼれ刑事」の1話を普通にムービーで撮っていて、あとで「あっ、ここでキメ顔してもらえばよかったな」と思ったんです。でも仕方ないからいいやと半ばあきらめて編集作業に入って、ストップモーションで1コマずつ送っていったら……全部キメ顔だったの(笑)。
長瀬 はっはっは!
宮藤 加藤あいさんと改札ですれ違って、追いかけていくときの顔が。「ここで止まってほしい!」って思ったところ、1コマずつ全部違うキメ顔だったから。「うわー! もうキマってた!」って(笑)。
──(笑)。宮藤さんと神木さんは、2011年のドラマ「11人もいる!」以来のタッグですね。
宮藤 うん。神木くんは「11人もいる!」で、ずっと貧乏で苦労してる大家族の長男っていうキャラクターだったのに、最終話で大学に入った途端にチャラくなるっていう演技が最高におかしかったんです。
長瀬・神木 ふふふ(笑)。
宮藤 伊達メガネかけて、完全に家のこと忘れてはっちゃけてる感じが。最終的に「君、かわうぃーねー!」って言ってたもんね。
神木 はい(笑)。
宮藤 ああいうのはやっぱり、やってみないとわからないっていうか。連ドラって6話から8話くらいで、完全に“なし”なことを1回振ってみることができるんですよね。そこで今まで見れなかったものが見れた。
次のページ » 目の前にいるのは長瀬さんじゃなくて鬼なんです(神木)
CONTENTS INDEX
ABOUT THE MOVIE
「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」2016年6月25日より全国公開
ストーリー
普通の高校生・大助は、同級生のひろ美のことが大好き。しかし修学旅行中のある日、大助は不慮の事故で命を落としてしまう。彼が目を覚ますと、そこは真紅に染まった空が広がり、ドクロが転がる“地獄”だった。慌てる大助を待ち構えていたのは、地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属ロックバンド・地獄図(ヘルズ)のボーカル&ギターを務める赤鬼のキラーK。彼によると、閻魔大王の裁きにより人間に転生するチャンスがあるという。「ひろ美ちゃんにもう一度会いたい!」と願う大助は、キラーKの“鬼特訓”のもと、生まれ変わりをかけた地獄めぐりをスタートさせるが……。
スタッフ
監督・脚本:宮藤官九郎
主題歌:地獄図「TOO YOUNG TO DIE!」
キャスト
キラーK:長瀬智也
大助:神木隆之介
なおみ:尾野真千子
ひろ美:森川葵、宮沢りえ
COZY:桐谷健太
邪子:清野菜名
松浦:古舘寛治
じゅんこ:皆川猿時
修羅:シシド・カフカ
鬼姫:清
えんま校長:古田新太
その他キャスト:坂井真紀、荒川良々、瑛蓮、みうらじゅん、Char、野村義男、ゴンゾー、マーティ・フリードマン、ROLLY、快速東京、木村充揮、関本大介、ジャスティス岩倉、烏丸せつこ、田口トモロヲ、片桐仁、平井理央、中村獅童ほか
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PROFILE
宮藤官九郎(クドウカンクロウ)
1970年7月19日、宮城県生まれ。1991年より大人計画に参加し、「真夜中の弥次さん喜多さん」「少年メリケンサック」「中学生円山」といった作品の監督を務めるほか、多くの脚本、演出などを手がける。ドラマでは「池袋ウエストゲートパーク」「うぬぼれ刑事」「11人もいる!」「あまちゃん」などの脚本を担当。俳優としての出演作も「ゲゲゲの女房」「バクマン。」ほか多数。1995年に結成したパンクコントバンド・グループ魂ではギタリストを務め、作詞作曲も担当している。
長瀬智也(ナガセトモヤ)
1978年11月7日、神奈川県生まれ。1994年にTOKIOのメンバーとしてデビューし、2014年にはジャニーズ史上初めて夏フェス「SUMMER SONIC 2014」に参加。1995年にドラマ「カケオチのススメ」で初主演を果たし、以降ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」「ムコ殿」「タイガー&ドラゴン」「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」「うぬぼれ刑事」などに主演。出演映画には「ソウル」「真夜中の弥次さん喜多さん」「ヘブンズ・ドア」などがある。
神木隆之介(カミキリュウノスケ)
1993年5月19日、埼玉県生まれ。1999年「グッドニュース」でドラマデビュー。2005年に主演作「妖怪大戦争」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。「11人もいる!」「サムライせんせい」などテレビドラマで活躍する一方、「劇場版 SPEC~天~」「桐島、部活やめるってよ」「るろうに剣心 京都大火編 / 伝説の最期編」「脳内ポイズンベリー」「バクマン。」などに出演。2016年公開待機作に「太陽」や声の出演をする劇場アニメ「君の名は。」ほか。
2016年6月23日更新