中村佑介が語る「トランスフォーマー/最後の騎士王」|マイケル・ベイの過剰なサービスと気遣いに敬意

「トランスフォーマー/ロストエイジ」で熱が沸騰!

──シリーズの大ファンだと聞いています。

僕、1978年生まれでアニメ版「トランスフォーマー」の世代なんです。小学校低学年ぐらいのとき、今は「G1」と呼ばれるシリーズ第1作(「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」)を観ていて。実写版のトランスフォーマーたちのもとになるキャラクター、コンボイやデストロン、バンブルなんかが出てくるんです。その頃誕生日によく「トランスフォーマー」の変形玩具を買ってもらってましたね。

──幼いときから好きだったんですね。

中村佑介

「トランスフォーマー」というコンテンツ自体は新しいアニメが始まったり、実写化された際にチェックはしていたんですけど、好きって言えるほど玩具などには触れてはいなかったんです。でも2014年に公開された「トランスフォーマー/ロストエイジ」で熱が沸騰して。

──それはどうしてですか?

これまでの作品と色合いが違っていたからです。3作目までは銀色のトランスフォーマーが多くて、色があまり感じられなかった。特にマイケル・ベイ監督は細部までこだわって緻密に映像を作るから、観ていると誰が誰だかわからなくなっちゃうんです。あとアニメ版に親しみがあったから、名前が同じだけど姿が違うトランスフォーマーも多くて余計に混乱しちゃったんですよね。

──確かに情報量が多くて何が起きているのか即座に判断できないシーンがあります。

「トランスフォーマー/最後の騎士王」より。

1作目からSF映画として楽しく観ていたんですが、キャラクターにはあまり愛着を感じなくって。でも4作目に、新作にも出てくるトランスフォーマーのドリフトであったり、ハウンドやクロスヘアーズが登場してオリジナリティを強く感じたんです。オプティマス・プライムやバンブルビーも含めて戦隊ものみたいな色合いにも魅力に感じて。それで誰が誰だかわかるようになって、愛着が生まれたんです。そこからフィギュアを買うようになりました。部屋には300体から400体ぐらいフィギュアがあります。

緻密に練られたトランスフォーマー同士の関係性

──アニメ版は熱心に観ていたんですか?

正直、子供のときはそこまで面白いと思えなかったんです。「機動戦士ガンダム」や「装甲騎兵ボトムス」が戦いに比重を置いているのに比べてトランスフォーマー同士の関係性に焦点が当てられていたので。「ガンダム」が「スター・ウォーズ」だとしたら、「トランスフォーマー」は「スタートレック」って感じ。戦うぞ!ってなったときも会話ばっかりしてるみたいな(笑)。子供心になんで戦ってくれないの?って思ってましたね。でも大人になって観返したら面白かった。

──アニメ版を観返した目から実写版はどうですか?

この実写シリーズは初代のアニメをリスペクトしていることがよくわかりました。映画だけ観ている人は、マイケル・ベイ監督が作った花火を見ている感覚、あるいはジェットコースターに乗っている気分で観ているかもしれませんが、ものすごい繊細に作られているんです。トランスフォーマー同士の関係が緻密に練られていて。

──新作でもその点は感じましたか。

感じました。僕は「トランスフォーマー」のストーリーって基本的にオプティマスとメガトロンの地球を巻き込んだ夫婦喧嘩の物語だと思ってるんです。2人は仲良しというか、BL的な関係に近い。

──(笑)。

今回の映画でも少し触れられていましたが、故郷のサイバトロン星の内戦で2人の関係は変わってしまうんです。だから知らない者同士の戦いではないですし、僕の考えではオプティマスがメガトロンを殺さないのは好きだからなんです! 改心してほしいと思ってる。だから今回もイチャイチャしてるだけ(笑)。メガトロンは毎回暴れますけど、人間は殺してない。本当はすごい優しいんです。オプティマスにかまってほしいだけと言うか、その関係が原作アニメと一緒なんです。

──新作では2人の過去を感じさせるセリフも登場します。

「トランスフォーマー/最後の騎士王」より。

あともともと、バンブルビーは初代アニメだとすごい小さくて、新作で言うところのスクィークスに近いマスコットキャラクターでした。実写版だと子供たちが感情移入できるような、成長していくトランスフォーマーになってると思うんです。今回の作品ではその成長するバンブルビーの姿が強く押し出されています。

──その言葉を証明するような感動的なシーンがありますね。

そうなんです。ダイナミックな見かけと反して、キャラクターの成長や関係が繊細に切り取られている。マイケル・ベイ監督は爆発やVFXを使ってそれを簡単に見せるというか、間口を広げてるんです。今回の5作目もその手腕が遺憾なく発揮されていますし、映画単体としてもシリーズで一番面白い。

ホット・ロッド、コグマン、スクィークスはキャラ立ちがすごい

──本作から登場するキャラクターが複数います。

ホット・ロッド、コグマン、スクィークスとみんな役割が違っていて、どれもよかったですね。ホット・ロッドはもともとバンブルビーの相棒なんです。サイバトロン星での友人で。だからスピンオフ作品も作られるバンブルビーの次につながっていく重要な存在になるんじゃないかな。

──劇中でもいきなり「ビー」と愛称で呼んでますね。

「トランスフォーマー/最後の騎士王」より。

そうそう。意識的なんだと思いますが、デザインも似てますよね。バンブルビーの色違いって感じ。あと、ほかのオートボットたちとも性格が全然違ってカッコつけてるというか、粋というか、お調子者って設定もよかった。

──コグマンはいかがでした?

コグマンは武術も使えるニンジャ執事みたいな感じで、生真面目で暴走してしまうところもあったりして、キャラが立ってましたね。あとコグマンとスクィークスは「スター・ウォーズ」のC-3POとR2-D2みたいだった。

──コグマンは実際に劇中で「C-3POみたい」と言われていました。

「トランスフォーマー/最後の騎士王」メイキング

スクィークスとイザベラのコンビに関しては、子供たちはこの子たちに感情移入するんだろうなって思いました。スクィークスは「壊れている」ってイザベラが言うように、変身できないし、言葉もしゃべらない。過去作でのバンブルビー的なポジションになっていくんでしょうね。

──イザベラ役のイザベラ・モナーはいかがでした?

めちゃめちゃかわいかった。次からのヒロインはこっちに移りそうですよね? イザベラ自体のスピンオフ作品を観たいって思いました。どうやってスクィークスと出会ったのかとか、どうして崩壊した街で暮らしていたのかとか知りたいです。

──確かに。2人の出会いは気になりますね。

あと新キャラクターだけじゃなくてメインキャラクターたちも変わってますよね。ドリフトは車種が変わって、色も青から赤になっていましたし。ぱっと見同じに見えますけど、バンブルビーもシリーズ5作ですべてデザインが違うんです。あとメガトロンは毎回見た目もガラッと変わりますけど、今回は特に変わっていてカッコよかった。みんなナイト(騎士)風にアレンジされている印象を受けました。

「トランスフォーマー/最後の騎士王」
2017年8月4日(金)全国ロードショー
「トランスフォーマー/最後の騎士王」
ストーリー

幾度となく人類を救ってきたオプティマス・プライムが地球を去ったあと、メガトロン率いる悪の集団ディセプティコンは勢力を伸ばし続けていた。正義の集団オートボットのリーダーになったバンブルビーはケイド・イェーガーとともに地球を守ろうとするが、世界は荒廃していく。そんなある日、廃墟と化した街で助けた少女イザベラやバイク型のトランスフォーマー・スクィークスなどとともに暮らしていたケイドのもとに、不思議なトランスフォーマー・コグマンがやってくる。コグマンによって謎の英国老人バートン卿の豪邸に案内されたケイド。そこにはオックスフォード大学の教授ヴィヴィアンも招待されていた。2人はバートン卿によって1000年以上前から始まり、独立戦争、ナポレオン戦争、第2次世界大戦などの歴史のターニングポイントにトランスフォーマーが深く関わっていたことを知る。そんな中オプティマスが地球に帰還。守護神が戻ってきたことで再び平穏が訪れるかと思われたが、彼は仲間であったバンブルビーと人類に刃を向け……。

スタッフ

監督:マイケル・ベイ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、マイケル・ベイ、ブライアン・ゴールドナー、マーク・バーラディアン
脚本:マット・ホロウェイ、アート・マーカム、ケン・ノーラン

キャスト

ケイド・イェーガー:マーク・ウォールバーグ
ヴィヴィアン:ローラ・ハドック
イザベラ:イザベラ・モナー
ウィリアム・レノックス:ジョシュ・デュアメル
シーモア・シモンズ:ジョン・タトゥーロ
バートン卿:アンソニー・ホプキンス

「トランスフォーマー/最後の騎士王」

「トランスフォーマー/最後の騎士王」
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中村佑介(ナカムラユウスケ)
1978年生まれ、兵庫県出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業後、ロックバンドASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットを手がけ脚光を浴びる。その後、さだまさしやSAILSのCDジャケット、「謎解きはディナーのあとで」シリーズの表紙などを描く。また湯浅政明監督、森見登美彦原作のアニメーション「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」でキャラクター原案を担当。2017年9月18日まで、あべのハルカス内にある大阪芸術大学スカイキャンパスで活動15周年を記念した個展「中村佑介展 15 THE VERY BEST OF YUSUKE NAKAMURA」が開催される。