「ザ・ハイスクール ヒーローズ」スタッフ座談会 この夏一番熱い!ジャニーズJr. 美 少年主演の“本気の特撮”ドラマ|テレビ朝日 プロデューサー 服部宣之 / 脚本家 高橋悠也 / 監督 及川拓郎 / 東映 ゼネラルプロデューサー 塚田英明 / テレビ朝日 プロデューサー 井上千尋

ヒーローは自分のために戦わない(服部)

──そのほか、塚田さんと井上さんが特撮部分で特に力を入れたポイントはありますか?

「ザ・ハイスクール ヒーローズ」

塚田 デザインや造形もいつもの一流どころのメンバーが手がけています。怪人は「ゴレンジャー」の黒十字軍をモチーフに新しくアップデートしていて、いい質感になっています。あとはアクションです。栗田政明さんという倉田プロモーションの方が担当してくださって、非常にキレのある仕上がりになっています。

井上 友情と団結をテーマに置いているので、精神性はスーパー戦隊とまったく同じ地平にあると思っています。通常の特撮作品が30分の枠では描ききれない部分を、60分使って丁寧に描いている面がある。あとはちょっとマニアックな話になるのですが、実は仮面ライダー的な要素とのハイブリッドになっていて、今回ヒーローたちはアプリを起動して胸に付けた校章で変身するのですが、敵も似たシステムを使って魔人になるという設定です。これはヒーローと敵が同じ出自であるという仮面ライダーのおいしいところをいただきました。もちろんこの設定にした理由があるので先々の展開を楽しみにしてください。

──今回初めて特撮作品に参加した及川さんと服部さんにとって、驚いた点や難しかったポイントがあれば教えてください。

及川 作り方の部分で大変だなと思ったのは、撮影後に声を別録りすることですね。普通のドラマであれば撮影現場で“オンリー”と呼ばれる声録りをしたり、MAと呼ばれる音の最終調整作業に役者を呼んだりするものなんです。でも特撮作品のアクションシーンでは攻撃するときの声ややられたときのリアクションが必要なので、そのために役者を呼び、映像を観ながらすべてに声を当てていきました。さらに素材撮りという、1日中ブルーバックのセットにこもって刀を撮影する作業も初体験で。こういう地道な作業の積み重ねでできているんだなと感じましたね。

服部 僕は物語作りの部分で、塚田さんに教えていただいて「なるほど」と思ったことがありました。それはヒーローは自分のために戦わない、誰かのために戦うんだということ。あとは世界観として、こんなことが起こったとき周りの人はリアクションをしないのか?といったように、ヒーローや怪人の存在をどこまで許容させるかが難しかったですね。

塚田 リアリティの線引きはやりながら決めていくしかないですよね。このシーンで目撃者がいるんじゃないか、なんて言い出したらキリがないので(笑)。

井上 そもそも、劇中で誰も警察を呼ばないですからね。

一同 (笑)

“想像で当て書き”した(高橋)

──6人のキャラクターについても聞かせてください。それぞれ役名の中に1文字、 少年メンバーの名前の漢字が入っていますよね。

服部 名前を決めてくれたのは悠也さんですよね?

高橋悠也

高橋 そうですね。もともとはマスクのデザインに、 少年の皆さんのイニシャルが入っているほうがパンチが効いているんじゃないかという話になって。そのイニシャルが劇中でも使えるように、ご本人の名前から1文字ずつ役名に入れました。実は「エイトレンジャー」でも役名に俳優名を1文字ずつ入れているんです。

服部 当時のルールが今回にも生きているとは!

高橋 結果的にルールのようになっていますね(笑)。特撮作品は新人の役者さんを使うことが多いですが、今回すでにファンの多いジャニーズの方々に演じてもらうなら、ある程度 少年メンバーのキャラクターもしっかり打ち出せるような役になればいいんじゃないかという思いで、名前やキャラクターを作りました。

塚田 アルファベットが6人バラけていてよかったですね。

一同 (笑)

服部 ファンの皆さんはこういう細かいところをすごく喜んでくださるのでありがたいです。

「ザ・ハイスクール ヒーローズ」

井上 実はヒーローデザインを決めるうえで、マスクだけどうしても決まらなかったんです。学園モノということで、ブレザーのデザインは決まっていたんですが。

服部 ブレザーは王子っぽいデザインになるから、ジャニーズの皆さんに合いますよね。デザイナーの野中剛さんが細かいところにペン先のモチーフを入れていて、「なるほどそうやって発想していくのか」と思いました。

塚田 今回は6人のデザインの共通点が多いんですよね。アルファベットとネクタイの色以外はみんな一緒。学校の制服モチーフということもあってそうしました。

──「真夏の少年」でも 少年を演出した及川さんは、今回6人が演じた役をどうご覧になりましたか?

及川 悠也さんがそれぞれの持ち味を生かした人物像を見事に書いてくださったんです。今回も稽古期間があったのですが、去年ほど日数も掛からず、それぞれが役をつかむペースも早かったです。

高橋 僕は 少年の皆さんとご一緒するのは初めてだったのでそこまで詳しくはないのですが、「真夏の少年」を観て、服部さんと監督にヒアリングしてキャラクターを作っていきました。なので“想像で当て書き”したという……不思議な発言になってしまうのですが(笑)。

及川 名言ですね(笑)。

高橋 結果、監督から6人になじんでいると言っていただけましたし、僕もオールラッシュを観て「よかった、間違ってなかった」と安心しました。それぞれ思い入れはあるのですが、あえて言うならモモヒーロー / 桜井一嘉というキャラクターはすごく特殊で難しい役どころだったと思います。

服部 そうですね。確実に難しい役だと思います。

「ザ・ハイスクール ヒーローズ」

──一嘉はトランスジェンダーであることを打ち明けられずにいるという役どころですね。

服部 当然、最初から 少年の6人全員にヒーローを割り振るつもりで、ここに女性を1人入れるという考えはありませんでした。ではピンクをどんなキャラクターにするかと考えている中で、こういう時代だからこそしっかり“トランスジェンダー”というテーマに向き合ってみようと思ったんです。LGBTに詳しい方に監修にも入っていただいて、脚本のセリフなど1つひとつ確認しながら、丁寧に作り上げました。

井上 男性俳優が演じるピンクがスタート時のメンバーに入っているのは初めてですね。

塚田 仮面ライダーではエグゼイドやディケイドなどピンクのヒーローもいますが、スーパー戦隊では初めてです。

──ストーリーの中でヒーロー全員がピンクに変身したり、「動物戦隊ジュウオウジャー」で寺島進さん演じるジュウオウヒューマンが登場したり……といったこともありましたが、初期メンバーとしての男性俳優が演じるピンクは初めてということで。

服部 それも含めて、画期的なことを試せてよかったなと。ヒーローになることと、自分自身を解放することはイコールであるという大切なテーマを込めているんです。視聴者の皆さんにどう受け止めてもらえるのか楽しみですね。