ジャニーズJr. 美 少年主演のドラマ「ザ・ハイスクール ヒーローズ」が、テレビ朝日系で毎週土曜23時から放送中。TELASA(テラサ)では、その裏側に迫るオリジナルコンテンツ「特撮美 少年」が毎週ドラマ本編終了後に独占配信されている。
仮面ライダーやスーパー戦隊を手がけてきた東映スタッフも参加し、劇中に「秘密戦隊ゴレンジャー」のアカレンジャーも登場するなど、特撮作品としての“本気ぶり”が話題となっている本作。今回映画ナタリーでは、スタッフの座談会をセッティングした。美 少年の初主演ドラマ「真夏の少年~19452020」も担当したプロデューサー・服部宣之と監督・及川拓郎、現在放送中の「機界戦隊ゼンカイジャー」も手がけるプロデューサー・井上千尋、「特捜戦隊デカレンジャー」などで知られるゼネラルプロデューサー・塚田英明、そして「エイトレンジャー」「仮面ライダーゼロワン」に参加した脚本家・高橋悠也が、特撮面でのこだわりや美 少年の魅力を熱弁。そして“門外不出”のメイキングまで公開する「特撮美 少年」の見どころも語ってくれた。
また特集後半には、主人公の父・真中大志役を務め、アカレンジャーの声も担当した関智一のコメントも掲載している。
取材・文 / 浅見みなほ撮影 / ツダヒロキ
東映さんの力をお借りして本気の特撮作品を作ろう(服部)
──「ザ・ハイスクール ヒーローズ」のドラマ情報が解禁された際、美 少年の皆さんの主演ドラマ第2弾であること、そしてスタッフの布陣に特撮面での本気が感じられることが大きく話題になっていました。まず企画の成り立ちから伺えますか。
服部宣之 この土曜夜の放送枠は今年の1月から「オシドラサタデー」という名前で、ジェイ・ストームさんと共同制作でやらせていただいています。普段は30分枠なのですが、美 少年さんと一緒にこの夏を盛り上げようということで1時間枠でお届けしています。どんなことができたら楽しいだろうかと考えるうちに、いわゆる戦隊ヒーローという案が挙がって。実現させるなら、東映さんの力をお借りして本気の特撮・本気のヒーローものを作ろうとなったのが発端です。そこで井上や塚田さんの特撮チームに来てもらいました。
──その流れで、テレビ朝日でスーパー戦隊シリーズ、仮面ライダーシリーズなどのチーフプロデューサーをされている井上千尋さん、東映で「特捜戦隊デカレンジャー」「仮面ライダーW」などのチーフプロデューサーを務めてきた塚田英明さん、そして東映で「獣電戦隊キョウリュウジャー」「仮面ライダードライブ」などを担当されてきた大森敬仁さんが集結されたのですね。
井上千尋 去年の秋頃、「ヒーロードラマをやりたい」と聞いて、「手間もお金も掛かって、なかなか大変だぞ」と最初は反対したんですよ(笑)。でもやるのであれば東映さんと組んだほうが本格的で面白いものができるし、それはテレ朝だからこそできることだと話したのを覚えています。
塚田英明 東映としてはこれまでと違う形での受注なのでいろいろと相談も必要だったのですが、多くのことが変わりつつある時代なので新しいことにチャレンジしていこうということで、「それならば本気でやりましょう」とお返事しました。それで私と大森という、特撮をよく知っている人間が参加する形になりました。
井上 タイミングとしてはすごくよかったですね。塚田さんは「魔進戦隊キラメイジャー」も終わっていたし、大森さんもちょうどチーフ作品を持っていなかったので。そもそもこのお二人がそろうなんてありえないですよ。
塚田 そうですね(笑)。
高橋悠也 大森さん、少しライダーは休みたいって言ってたのに……結果的にこうして特撮をやってますね。
一同 (笑)
──そして「仮面ライダーゼロワン」などを手がけた高橋さんが脚本に参加されました。
高橋 僕、“特撮畑の人間”と言っていただいているのですが、特撮の世界では新参者なんです。ジェイ・ストームさんとは2010年代に「エイトレンジャー」という作品をやっていたので……当時は東映さん非公認だったのですが、今回は正式にできるんだ!という喜びがありました。
井上 悠也さんはもう宿命です。「エイトレンジャー」のあとに「仮面ライダーエグゼイド」をやり、「仮面ライダーゼロワン」をやっているわけで……。
高橋 そう、だから僕は特撮というより、ジェイ・ストームさん側の人間なんですよ(笑)。
一同 (笑)
「美 少年のためにがんばろう」という団結感が生まれた(及川)
──監督の及川拓郎さんは、美 少年の皆さんとは「真夏の少年~19452020」に続くタッグですね。
及川拓郎 「真夏の少年」の美 少年がとてもよかったので、服部さんと「またこのメンツで何かやりたいですね」と話していたんですよ。そこで主演ドラマ第2弾の企画が決まったと聞いたら、まさかの特撮ものということで。予算も掛かるだろうし大変そうだとは思ったのですが、東映が入って特撮の技術的な部分も底上げされるということで、楽しみでしかなかったですね。
服部 そういう意味で、スタッフはこのバランスが最高だなと思ったんですよ。特撮のプロと、僕らのような通常のドラマをやっている人間の割合が、6:4か7:3くらい。普通のドラマ側の人間がちょっと少ないくらいのほうがいいだろうなと。すごくいい座組で新鮮だと思います。
及川 そうですね。毎日が新鮮です。
塚田 僕ら、普通のドラマもやってますけどね! 特撮専門ではないので(笑)。
一同 (笑)
──服部さんや及川さんが「真夏の少年」で美 少年の皆さんに感じた魅力について詳しく教えてください。
及川 当時は芝居経験のないメンバーがほとんどだったので、1カ月ほど稽古をやらせてもらったんです。最初は自分のセリフをどうしゃべるかというところから入ってしまって、役者間でのコミュニケーションが取れなかった。それにヤンキー役だったので、演技のうえで迷っているところも感じました。ただ、普段からパフォーマンスで自分を見せることに長けている人たちなので、コツをつかんだ瞬間にメキメキ成長していくわけです。それに現場での居方や、「本当に面白いものを作るんだ」という純粋な思いが気持ちよかった。めったにないことだと思うんですが、美 少年の6人がスタッフ全員から愛されていて、「とにかく彼らのためにがんばろう」という団結感が現場に生まれていたんです。周囲にそう思わせるほどの魅力を感じて大好きになりましたし、絶対にまた一緒に作品を作りたいと思いました。
服部 僕も同じです。特に現場が始まってからの2、3カ月での成長曲線は感動的でしたね。彼らのためだったらまた面白い企画を考えたいと思えました。去年は初めての演技ということもあり、ドキュメンタリーのようなイメージで、ひと夏の彼らの成長を追いかける狙いがあったのですが、次回はもっと役者としての芝居力が問われるものを一緒にやってみたい……そんな思いがこの企画につながりました。狙い通り、悠也さんの脚本と及川さんの演出で、去年とはまた違う彼らのよさが引き出されているんです。もはや親のような気持ちで、こんな顔をするようになったのか、こんな芝居ができるようになったのか、と感じながら見ています。
関智一さんはベストマッチな人選(塚田)
──劇中には「秘密戦隊ゴレンジャー」のアカレンジャーが登場しますが、このアイデアは構想段階からあったのでしょうか?
井上 登場させたいという思いはありましたね。
服部 ただそれをよくぞ東映さんがOKしてくださったなと(笑)。怒られるんじゃないかなと思いましたよ。
及川 一見、怒られそうなことをやっていますからね。
塚田 今回はスーパー戦隊のようでスーパー戦隊ではない。「ゴレンジャー」をリスペクトしているというキャラクター設定からストーリーが派生していくので、アカレンジャーという1つのよりどころができたのはよかったと思いますね。
服部 「ゴレンジャー」は劇中で父と子をつなぐ接着剤でもあるし、この時間だからこそ観ていただける大人の視聴者層と、ジャニーズファンの若い方々をつなぐ接着剤にもなるかなと思っています。
塚田 ちょうど今高校生くらいの子を持つお父さんが、「ゴレンジャー」を観ていた世代ですもんね。
井上 僕も「ゴレンジャー」はリアルタイムで観ていました。お子さんをメインターゲットとする日曜朝と違って、土曜の23時台でやるには「ゴレンジャー」が必要だったと思います。
──そんなアカレンジャーの声は関智一さんが担当されています。特撮作品好きで知られる関さんは、「仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦」などでアカレンジャーに声を当てた経験もお持ちですね。
服部 僕は本当に無知だったので、関さんがアカレンジャーを演じた経験があることや、あんなに特撮好きだということも知らなかったんです。オファーしたのは、以前「泣くな研修医」というドラマで木村昴さんに出てもらって、声優さんが実写で演じることでこんなに味が出るものなのかと思ったのがきっかけで。それで、「桜の塔」の関さんのお芝居を拝見して、今回井上に「関さんに頼んでみたいんですけど……」と話してみたら、「いや、過去にアカレンジャーやってるよ!」って(笑)。さらにスーパー戦隊が相当お好きだと聞いて、一層関さんにお願いしたいと思いました。
塚田 ベストマッチな人選だったということですよ(笑)。
井上 今回出てくるアカレンジャーは、「ゴレンジャー」のアカレンジャーそのものではないんですよね。ある種、主人公・真中大成の想像の中の存在であって。
服部 僕にとっては、アカレンジャーと大成の父親を同じ方に演じてもらうことが重要だったんです。大成から見たときのヒーローはアカレンジャーであり、お父さんでもあるので。まあ、こんなもっともらしい理由は、あとから考えたんですが……(笑)。
一同 (笑)
及川 関さんは非常に「ゴレンジャー」がお好きなんですよね。東映さんがセットにたくさん「ゴレンジャー」グッズを用意してくださったんですが、関さんが「もしよかったらこれ使ってください」と自分がかつて集めていたピンバッジを持ってきてくれて。実はそれもセットに使われているんですよ。
井上 関さんは、子供の頃にアカレンジャーになりきって街のパトロールをされていたそうですしね。
次のページ »
ヒーローは自分のために戦わない(服部)