──アズマは原作ファンから非常に人気が高いキャラクターです。「最初は不安があった」と舞台版のときのインタビューでお話しされていましたが、今回はいかがでした?
舞台を経て、僕の中でアズマという役は完成していたので、そういう意味では不安はありませんでした。でも三浦さんには「映像でもっともっと繊細な淵を見せたいから何倍も深く作ってきて」と言われたので、原作を読み返して構築し直しました。とにかく原作により近付けることができれば、アズマという役は完成すると思っていたので。
──松坂さんも猪塚さんも、舞台と映画で同じ役を演じられています。今回、変化を付けたことはありますか?
舞台では見せきることのできなかった、内に秘めている繊細な部分を表情で出そうとしました。あとはやっぱりセクシーさが重要なので、舌使い1つとってもアズマはどうやってお客さんに奉仕をしているんだろうとか細かく考えました。パンツも衣装合わせのときにいろいろ試したんですけど、「やっぱり舞台のときに使った銀色のTバックじゃないですかね。アズマってこうだと思うんですよね」という話になって。
──松坂さん演じるリョウとのシーンで印象的なエピソードがあれば教えてください。
リョウとがっつり絡むシーンは1日で撮りきってしまったんです。リハーサルで練習したときも、舞台を経ている2人なのでまあうまくいって! 1時間もかからなかったのかな? すごくスムーズに体の交わりを……。桃李とは「すぐ終わったね」と言い合っていましたし、相当体の相性がいいのかなと思います(笑)。
──NGはなかったのでしょうか?
撮影時は細かい部分を何度も何度もやったんですけど、動きをミスすることはなかったんです。僕がこうしたいと思ったら桃李はすぐ腰を浮かせてサポートをしてくれたりして。
──現場では松坂さんとどのようなコミュニケーションを取られましたか?
彼に合わせてトークはするけど、こちらから何かを壊して話すことはやめようと思っていました。撮影期間中、桃李はリョウでいなければ崩れちゃうんじゃないかなという感じだったので。そこはやっぱり少し引いて、そっとリョウを見守っていました。
──アズマはコンプレックスを抱えた役ですが、猪塚さんはご自身のコンプレックスなど内に抱えたものをさらけ出せるタイプでしょうか?
いやあ……抱えるタイプですねえ。めったに人に相談しないし、逆に相談を受けるほうが多いです。だからリョウみたいに受け止めてくれる人がいたら、僕自身もさらけ出せるのかもという思いがあります。
──主人公のリョウは娼夫の経験を経て変化や成長をしますが、猪塚さんがこの作品に出演したことで変化、成長したところがあれば教えてください。
アズマとしてですが、自分の抱えてるものを文字通りすべて脱ぎ去ってさらけだせた。「これができたんだからもっともっといろんなことができる」と思える役だったんです。自分のお芝居の幅が広がった作品だし、間違いなくターニングポイントになっています。
──朗読劇やキャスターなどさまざまなことに挑戦されていますが、今後挑んでみたいことや目標はありますか?
やっぱり映画が楽しくて大好きなので、舞台でずっと培ってきたものを生かして映画にもっともっと貢献したい。いろんな幅の役を映画界に残したいなという思いが強いです。がんばります。
会員制ボーイズクラブ「Le Club Passion」
領の友人
「Le Club Passion」の客
- 「娼年」
- 2018年4月6日(金)全国公開
- ストーリー
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東京の名門大学に通う森中領は、日々の生活や女性との関係に退屈し、無気力な生活を送っている。ある日、バイト先のバーに会員制ボーイズクラブのオーナー、御堂静香が訪れたことから、領は娼夫の仕事をスタートさせることに。彼は娼夫として女性たちと対峙していく中で、1人ひとりの中に隠されている欲望や繊細な部分に触れ、やりがいを見つけていく。
- スタッフ / キャスト
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監督・脚本:三浦大輔
原作:石田衣良「娼年」(集英社文庫刊)
企画製作・配給:ファントム・フィルム
出演:松坂桃李、真飛聖、冨手麻妙、猪塚健太、桜井ユキ、小柳友、馬渕英里何、荻野友里、佐々木心音、大谷麻衣、西岡德馬、江波杏子ほか
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※R18+指定作品
©石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会
- 猪塚健太(イヅカケンタ)
- 1986年10月8日生まれ、愛知県出身。アミューズの21歳から40歳までの俳優が所属する「劇団プレステージ」に所属し、俳優として活動。ミュージカル「テニスの王子様」など数々の舞台で活躍するほか、テレビドラマや「深夜食堂」「斉木楠雄のΨ難」などの映画に出演。朗読劇やキャスターにも挑戦している。また、10月から12月にかけて舞台「魔界転生」が控えている。