「パラサイト 半地下の家族」で知られるパク・ソダムが主演する「パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女」が1月20日に全国で公開される。本作は凄腕ドライバーと数多の追手が命懸けのカーチェイスを繰り広げる韓国発アクションエンタテインメント。どんな荷物も配達する“特送”ドライバーをパク・ソダム、彼女と行動をともにする“依頼物”の少年をチョン・ヒョンジュンが演じた。
映画ナタリーではアクションコメディ「ベイビーわるきゅーれ」で一躍脚光を浴びた映画監督・阪元裕吾のレビューを公開。マンガ家・河井克夫による描き下ろしレビューマンガも掲載しているので、お見逃しなく!
文 / 阪元裕吾(レビュー)、田尻和花(コラム)レビューマンガ / 河井克夫
追う者、追われる者…
キャラクター紹介
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キム・ソウォン(演:チョン・ヒョンジュン)
海外逃亡を図る父親に付いて来た少年。スポーツ賭博の八百長ブローカーである父親から大金の入ったバッグと貸金庫の鍵を託されたことで、悪徳警官ギョンピルに命を狙われる羽目に。
阪元裕吾からレビューが到着!
逃亡劇としての“愉しさ”が第一優先に描かれている
こんにちは! 映画監督の阪元裕吾です。「ベイビーわるきゅーれ」や「最強殺し屋伝説国岡」「グリーンバレット」といった殺し屋モノ、ジャンルで言うとアクションコメディを中心に撮っております。ご縁がありましてレビューの寄稿をさせていただくことになりました。映画ナタリーさん、ありがとうございます!
今回鑑賞させていただいた作品は「パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女」という作品でして、韓国のアクション映画になります。主演は「パラサイト 半地下の家族」のやさぐれ長女で有名なパク・ソダムさん。凄腕の運び屋・ウナがひょんなことからワケアリの少年を拾ってしまい、組織や警察から逃げるはめになる逃亡劇ですね。
あらすじは何度も聞いたことのあるやつなのですが、結論から感想を書きますと、純粋に超楽しいアクションエンタメでした! 全編飽きずに軽やかに走り抜け、文字通り劇場でドライブ出来る作品なのは間違いないです!
こういう作品をもっと映画館で見たいし、日本でも撮られればいいのにと心から思いました。その理由をこれから書いていきますね。
なによりも逃亡劇としての“愉しさ”が第一優先に描かれていること。これにつきます。
この作品にはドラマやアクションが停滞する隙がありません。常に何かが走り続けます。
ウナ、すなわち追われる側が走り続けるのはもちろんのこと、主人公側が停滞すると今度は追う側が走ります。話が進むにつれて優秀なハンターも増えていきます。常に止まらない逃亡劇が楽しいんです。
ウナの過去はセリフで少し触れられる程度で、湿度の高い感傷的な回想シーンなどはありませんし、敵とも因縁があるわけでもありません。凄腕ドライバーがたまたま出会った少年を助ける。とてもシンプルな話です。ややこしい陰謀もなければ、恋愛要素もありません。
だからこそウナのブレない精神に惚れます。「パラサイト」でパク・ソダムさんの魅力に堕ちた人は、今作もきっとハマると思います。猫好きで面倒見の良いやさぐれドライバー。惚れてしまいますね。
特に好きなシーンはウナとともに追われている少年が、とある衝撃的な事実を知ってしまい号泣してしまうくだりです。普通の映画ならそこでドラマに寄ってしまうと思いますが、この映画はそこで「少年の泣き声を聞かれ、敵に居場所がバレてしまう」というサスペンスに即座に切り替わります。このストイックさには驚きました。サスペンスを常に回し続け、エンタメとして面白くあり続けようとする今作の矜持を感じるシーンでしたね。
もちろんサスペンスだけじゃなく、アクションも楽しい作品です。冒頭の狭い路地カーチェイスも見たことないものでしたし、思いっきりアクセル踏む場面とキュウッとブレーキを踏む場面の緩急のリズムが本当に素晴らしい。とにかく見ていて気持ちの良いカーチェイスでした。さらに類を見ないほどマイナスドライバーが活躍する映画でもあります。どんなシーンなのかはぜひ劇場で見てほしいです。
とにかく108分、飽きることなくサクッと見れて、見終わったあとは誰もが「おもしろかったー」と思える作品だと思います。ややこしかったり壮大な映画が増えている昨今、このストイックでシンプルな作劇をぜひ! おすすめです!
プロフィール
阪元裕吾(サカモトユウゴ)
1996年1月18日生まれ、京都府出身。「べー。」で残酷学生映画祭2016グランプリ、「ハングマンズノット」でカナザワ映画祭2017の期待の新人監督賞を受賞する。髙石あかり、伊澤彩織のダブル主演作「ベイビーわるきゅーれ」が大きな評判を呼び、続編となる「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」が2023年3月24日に封切られる。
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河井克夫がレビューマンガを描き下ろし!