映画ナタリー Power Push - 「にがくてあまい」

草野翔吾×川口春奈×林遣都インタビュー

美味しい食と愛がいっぱい、さあ召し上がれ!

付き合いたてのカップルみたいで恥ずかしかった(川口)

──川口さんと林さんは、初共演でした。草野監督が感じた印象を聞いていかがでしょうか?

川口 監督が言われたように、林さんは職人肌という感じがしました。

 ふふっ(笑)。

川口 自分が思っていた以上に、お芝居って緻密な計算のうえでやっていることなんだなと思ったし、すごいなって。私は感情で進めていくタイプなので、一緒にやっていて面白かったです。

フードコーディネーターの赤堀博美(奥)から調理指導を受ける林遣都(手前)。

──渚には“料理を作る”という描写もありますね。

川口 林さん、切る練習とかめちゃくちゃしてましたよ。けがしちゃうくらいハマってやられてて。あと、ゲイバーにも行ってましたよね(笑)。

草野 それはちょっと誤解を生むような……。

林遣都

 勉強しに行ってましたね(笑)。僕が感じた川口さんの印象は、とにかく接しやすかったということ。撮影期間って短いし、僕はあまり共演する方々と仲良くなったりしないんですけど今回は違いました。仲良くなれたことが生かせる役だったので、よかったと思います。あと落ち着いている人だなと。ここは好きにやって!というシーンの撮影でも、遠慮なくやれたのは僕としてはけっこう珍しかったです。

──好きなようにやってみて!というのは、どのシーンですか?

 料理をマキに教えるシーンがあって……。

川口 茶碗蒸しのシーンね。あれは一番恥ずかしかった。

 僕も恥ずかしかったけど、川口さんとだからやれた感じがあったし、この作品にとってもいい空気が出た印象に残っているシーンです。

草野 あのシーンは、マキと渚の関係性が出る重要なシーンだと思ったので、調理の最初から最後までを2人にお任せで撮ることにしました。あのシーンだけは「絶対に自分でやります!」って、自宅に持ち帰って自分で編集したんですよ。

川口 へえー!

草野 僕が学生時代に作った自主映画のような撮り方をこのお二人を迎えてできて、本当に幸せでした。ああいう空気感が出せるから、映画でやる意味があるというか、生身の人間でやる意味があるのかなと思います。

川口 私はとにかく恥ずかしかった。できあがった作品を観ても「あっ、恥ずかしがってるな」と。まるで、付き合いたてのカップルみたいで(笑)。

草野 それがすごくよかったです!

──川口さんが印象に残っているシーンはどこですか?

「にがくてあまい」メイキング画像より、川口春奈(左)と林遣都(右)。

川口 お酒を飲んでちょっと酔っ払うお芝居がどうしていいかわからなくて、大変だったかな。マキがビール持って、ちょこっと顔を出して「渚、一緒に飲もう」って。普段、緊張とかしないんですけど、あのときはどうしていいかわからなくて、久しぶりにドキドキしました。

 あれは最高ですよ! キュートですよね。

草野 僕はモニターを見ながら、「かわいい!」って心を射抜かれるまでやろうと思ってたんです(笑)。だから今、林さんが「キュート!」だと言ってくれてよかったです。

人見知りなのに、かまってちゃんなんです(川口)

──先ほど「落ち着いた印象だった」と言われていた川口さんですが、一方でおちゃめな面もあったと聞いています。

 そうそう、現場で膝カックンとかしてくるんですよ。ちょっかいが多くて……。

川口春奈

川口 私、人見知りなのに、かまってちゃんだから。お話もしたかったので、ちょっかい出してました(笑)。

 こっちが「なんだよ!」って、ちょっと強く言うと、急に不機嫌になったりして。それも含めていたずらなのかな?って、わからないんですよ。

川口 ただの子供ですよ(笑)。

 でも僕も楽しくなって仕返しをすると、反応がないことがあったりして……。

草野 翻弄されてるね。

 でも、そういうやりとりも楽しかったです。

──今回の作品テーマの1つ“食”の役割について教えてください。

草野 原作でも魅力的に描かれているとても重要な要素なので、こだわらなきゃいけない部分でした。映画の流れの中で、濡れ場とかキスシーンとか、いわゆる“愛の行為”の代わりに料理が置かれているようになるといいなと。料理が出ると、2人の関係が何か変化していくというふうにしたかったんです。

──お二人は実際に料理を食べられたそうですね。

川口 すごくおいしかった! ゴーヤの茶碗蒸しなんて、おいしくないだろうなと思ってたんですけど、誰よりも食べていたと思います。

草野 茶碗蒸しだけは映画オリジナルのレシピで、僕が考えたんですよ。最終的にはフードコーディネーターの赤堀(博美)さんにお任せしていますが、こうすればゴーヤの茶碗蒸しができる気がするんですけど?って。

 めっちゃおいしかったです。今でも覚えてます、あの味。

草野 物語上、持ち運べるものが欲しかった。でもタッパーに入れてっていうのはいやだったんです。高級プリンの容器みたいなものに詰められる料理がいいなと。あと、冷たいもの。それで、ゴーヤの冷製茶碗蒸しを考えたんです。物語的なところから考えたのでおいしさは二の次だったんですけど、そう言ってもらえてよかったです(笑)。

──では最後に、これから「にがくてあまい」を鑑賞する人々へメッセージをお願いします。

バイクに晴れ着姿でまたがる川口春奈(中央)。

川口 とてもオシャレな作品です。バイクに乗ってるといきなり野菜が降ってきたりとか、マンガっぽい部分もあって楽しい。そして、いろんな愛がいっぱい詰まっています。

 ずっと観ていられる作品だなと思いました。日常を描きながら、普段大事にしなきゃならないことをいっぱい気付かせてくれる。それから、人が生きていく中で、「このままでいいんだ」と思わせてくれる、とっても前向きな作品です。

草野 皆さんが持つ作品へのイメージとは、きっと何か違うものが見えてくるはずです。原作から変更をしている箇所もありますが、魂は描けていると思うので、原作ファンの方や、そうでない方にも楽しんでいただければうれしいです。

左から林遣都、川口春奈、草野翔吾。
Contents Index
キャラクター紹介
川口春奈×林遣都×草野翔吾インタビュー

「にがくてあまい」/ 2016年9月10日より全国にて公開中

「にがくてあまい」

容姿端麗で野菜嫌いのキャリアウーマン・江田マキは、ある晩、イケメンの男子校教師・片山渚と出会い、一方的に恋に落ちる。ところが渚はゲイのベジタリアンだった。マキは、ひょんなことから渚の家で同居生活をスタートさせるが、ことあるごとに2人は衝突し、まったくかみ合わない。だが、渚の作るこだわり野菜たっぷりの料理にマキの心と体は癒されていく。そして渚もまた、マキと触れ合う中で次第に心を開く。やがて2人は、これまで目を伏せてきた家族との問題や過去の悲しい出来事と向き合おうと動き出す。

スタッフ
  • 監督:草野翔吾
  • 脚本監修:上田誠(ヨーロッパ企画)
  • 脚本: 大歳倫弘
  • 原作:小林ユミヲ
  • 主題歌:OKAMOTO'S「Burning Love」
キャスト
  • 江田マキ:川口春奈
  • 片山渚:林遣都
  • 立花アラタ:淵上泰史
  • 青井ミナミ:桜田ひより
  • 馬場園あつし:真剣佑
  • ヤッさん:SU
  • 江田豊:中野英雄
  • 江田操:石野真子
川口春奈(カワグチハルナ)

1995年2月10日、長崎県生まれ。雑誌ニコラの2007年度モデルオーディションでグランプリを受賞し、専属モデルとしてデビュー。2009年に「東京DOGS」でドラマデビューを果たす。2012年に「桜蘭高校ホスト部」で映画初主演を飾る。主な出演ドラマに「放課後はミステリーとともに」「GTO」「夫のカノジョ」「探偵の探偵」、出演映画に「好きっていいなよ。」「幕末高校生」「クリーピー 偽りの隣人」など。2017年2月に「一週間フレンズ。」の公開を控えている。

林遣都(ハヤシケント)

1990年12月6日、滋賀県生まれ。2007年、主演映画「バッテリー」で俳優デビューし、日本アカデミー賞をはじめとするその年の多くの新人賞を受賞した。ドラマ「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」(関西テレビ・フジテレビ系)に心療内科医師・中島保役で出演中。世界190カ国で配信されているNetflixオリジナルドラマ「火花」ではお笑いコンビ・スパークスの徳永太歩役を務めた。今後「グッドモーニングショー」「しゃぼん玉」の公開を控える。また舞台初出演作「M&Oplaysプロデュース 家族の基礎 ~大道寺家の人々~」が東京・Bunkamura シアターコクーンで9月28日まで公演中。

草野翔吾(クサノショウゴ)

1984年生まれ、群馬県生まれ。早稲田大学在学中に制作した長編映画「Mogera Wogura」には大杉漣や麿赤兒が出演し、劇場で上映された。2012年公開の「からっぽ」は、第4回沖縄国際映画祭パノラマスクリーニング部門や、第27回高崎映画祭の“若手監督たちの現在”に選出。海外の映画祭でも上映された。またMVやCMなども数多く手がけ、THE BAWDIES「NO WAY」はSPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDSにて優秀作品に選ばれた。

スタイリスト / 丸山晃(川口春奈)、菊地陽之介(林遣都)
ヘアメイク / 板倉タクマ:ヌーデ(川口春奈)、SHUTARO:vitamins(林遣都)