映画ナタリー Power Push - 「にがくてあまい」

草野翔吾×川口春奈×林遣都インタビュー

美味しい食と愛がいっぱい、さあ召し上がれ!

INTERVIEW

片山渚は自分にないものばかり持ってて、やりがいを感じた(林)

──Webマンガ原作ですが、映画化にあたって勝算ありと感じたポイントはありますか?

草野翔吾

草野翔吾 ゲイやベジタリアンという個人的なモチーフを扱いながらも、普遍的なテーマの物語でもある。面白いところに着地するだろうと思いました。見え方もポップにできるだろうなと。そして、マキと渚を生身の人が演じるうえで、川口さんと林さんは、それぞれの人物像をしっかり立ち上げてくれるお二人だろうと。これはイケるなと思いました。

──川口さんと林さんは、どんな印象を持ちましたか?

川口春奈 脚本をいただいたとき、スラスラ読めるテンポ感と、それだけじゃないじんわりくる部分も描かれていたので、純粋に飽きない作品になればいいなと思いました。マキに関してはやればやるほど大好きになっていったし、無邪気な感じがすごく好きでしたね。マキを通じて、自分だけじゃなく、みんなもいろんな思いをしながらがんばってるんだと感じました。

林遣都

林遣都 僕は普段、少女マンガってあまり読まないので、ダメな女性とカッコいい男性が登場する時点で、キラキラしたドタバタコメディを想像してたんです。でも話が進むにつれて、すごくリアルなやりとりとか、ディープなところも描かれてて。同性愛者という役柄はこれまでにもやったことがありますが、渚は完璧主義者で料理もうまいとか、自分にないものばかり持ってる人物なので、さらにやりがいを感じました。

──ラブコメを土台にしながらも、素の自分を出せず悩む人々の姿や家族との関わりなどのエピソードも描かれていますね。

草野 時間配分も含めて、きっちりとしたラブコメの構成を意識しました。開始何分でこういうことがあって……ということから始まってラストに至るまで。それでも、マキと渚であれば普通のラブコメの関係性にはならずに、もう一段深い愛の形や新しい人間関係が描けると思いました。

川口 あらすじだけを読むと、ラブコメだと思いがちなんですけど、ふたを開けてみると、みんな不器用で人間臭くて、笑いだけじゃない、家族の話や心が温かくなる要素があるんです。

 自分の考えがはっきりしていて、周りなんて関係ないと思っていた渚は、マキのようにまっすぐいろんなものを吸収して変わっていく人と間近で接することで、初めて、改めて物事を考え出すようになったと思います。それから、誰と出会って、何を感じ合って受け取り合うかって、生きるうえですごく重要なことだと感じました。やっぱり自分らしく生きることが一番いいなと。もともと、「みんな違って、みんないい」みたいな言葉が大好きなんですが、渚を演じることで、改めてそう感じました。

林さんは職人気質の役者! 川口さんは天才!(草野)

──現場では草野監督から演技面などで注文はありましたか?

川口春奈

川口 いっぱい言われすぎて、あんまり覚えてない(笑)。

草野 そんなに言ってないと思うけどなあ(苦笑)。

川口 笑ったり泣いたり怒ったりという感情を、全力で表現してほしい、表情が汚くなってもいいからということかな。

草野 マキは表情豊かな女性だと思ったので。表情については、けっこうお願いしましたね。

──林さんは監督からかなり高いレベルを求められたとか。

監督の草野翔吾(左)と打ち合わせをする林遣都(右)と真剣佑(中央)。

 そうですね。優しそうに見えますが、草野監督は厳しい方でした。

草野 ええ! 全然、そんなことないと思うけど(笑)。

 やってほしいことや、ここまでのレベルのものを作ってほしいと提示されるんですが、そのハードルが高いんです。ハードルを与えてもらった分、それを越えたいという思いもあるので、すごくモチベーションが上がりました。

──ゲイの渚役を演じるにあたり、リサーチなどされたんですか?

 プロデューサーの知り合いの方から参考になる言葉やヒントをたくさんいただきました。皆さん口をそろえておっしゃるのが、お店のドアを開けて入ってきただけで、ゲイかどうかがわかると。すると監督が、「じゃあ、(林さんは)それを目指してください!」って(苦笑)。「ゲイという役も料理に関しても、上っ面にならないものを目指しましょう」と。

草野 上っ面でやるのが一番ダメだと思ってたんです。クランクイン前、林さんと一緒にゲイバーに行ってお話を聞いたんですが、そのときの林さんの観察する目がすごかったんですよ。

 新鮮だったんですよね。

草野 あんなに悩んでたのに、クランクインの際にはできあがっていたので、モニターを見ながら、「すげー!」と思いました。さっき僕のことを「厳しい」と言ってたけど、僕からしたら、僕こそ林さんに厳しい目で見られているような感覚がありました。川口さんの撮影をしているとき、「これって、なぜこういう撮り方をしてるんですか?」とか聞いてきたりね。だから、聞かれたことにはちゃんと答えられるようにしよう、答えられなくても一緒にちゃんと考えようと進めたから、林さんには厳しいと映ったのかもしれない。僕は林さんにとっての鏡になっていたような気がします。

──川口さんから見た草野監督の印象はいかがですか?

左から川口春奈、草野翔吾、林遣都。

川口 こだわりの塊という感じがします。それと作品に対する愛、パワーがすごかった。だから、監督のイメージするものに沿えるようにとがんばりました。

草野 川口さんと林さんって、お芝居に対するアプローチが真逆と言ってもいいくらいなんです。林さんはディスカッションして、理詰めで積み上げていくタイプで、職人気質の役者!って感じがする。川口さんは感性の人で、天才だなと感じました。

Contents Index
キャラクター紹介
川口春奈×林遣都×草野翔吾インタビュー

「にがくてあまい」/ 2016年9月10日より全国にて公開中

「にがくてあまい」

容姿端麗で野菜嫌いのキャリアウーマン・江田マキは、ある晩、イケメンの男子校教師・片山渚と出会い、一方的に恋に落ちる。ところが渚はゲイのベジタリアンだった。マキは、ひょんなことから渚の家で同居生活をスタートさせるが、ことあるごとに2人は衝突し、まったくかみ合わない。だが、渚の作るこだわり野菜たっぷりの料理にマキの心と体は癒されていく。そして渚もまた、マキと触れ合う中で次第に心を開く。やがて2人は、これまで目を伏せてきた家族との問題や過去の悲しい出来事と向き合おうと動き出す。

スタッフ
  • 監督:草野翔吾
  • 脚本監修:上田誠(ヨーロッパ企画)
  • 脚本: 大歳倫弘
  • 原作:小林ユミヲ
  • 主題歌:OKAMOTO'S「Burning Love」
キャスト
  • 江田マキ:川口春奈
  • 片山渚:林遣都
  • 立花アラタ:淵上泰史
  • 青井ミナミ:桜田ひより
  • 馬場園あつし:真剣佑
  • ヤッさん:SU
  • 江田豊:中野英雄
  • 江田操:石野真子
川口春奈(カワグチハルナ)

1995年2月10日、長崎県生まれ。雑誌ニコラの2007年度モデルオーディションでグランプリを受賞し、専属モデルとしてデビュー。2009年に「東京DOGS」でドラマデビューを果たす。2012年に「桜蘭高校ホスト部」で映画初主演を飾る。主な出演ドラマに「放課後はミステリーとともに」「GTO」「夫のカノジョ」「探偵の探偵」、出演映画に「好きっていいなよ。」「幕末高校生」「クリーピー 偽りの隣人」など。2017年2月に「一週間フレンズ。」の公開を控えている。

林遣都(ハヤシケント)

1990年12月6日、滋賀県生まれ。2007年、主演映画「バッテリー」で俳優デビューし、日本アカデミー賞をはじめとするその年の多くの新人賞を受賞した。ドラマ「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」(関西テレビ・フジテレビ系)に心療内科医師・中島保役で出演中。世界190カ国で配信されているNetflixオリジナルドラマ「火花」ではお笑いコンビ・スパークスの徳永太歩役を務めた。今後「グッドモーニングショー」「しゃぼん玉」の公開を控える。また舞台初出演作「M&Oplaysプロデュース 家族の基礎 ~大道寺家の人々~」が東京・Bunkamura シアターコクーンで9月28日まで公演中。

草野翔吾(クサノショウゴ)

1984年生まれ、群馬県生まれ。早稲田大学在学中に制作した長編映画「Mogera Wogura」には大杉漣や麿赤兒が出演し、劇場で上映された。2012年公開の「からっぽ」は、第4回沖縄国際映画祭パノラマスクリーニング部門や、第27回高崎映画祭の“若手監督たちの現在”に選出。海外の映画祭でも上映された。またMVやCMなども数多く手がけ、THE BAWDIES「NO WAY」はSPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDSにて優秀作品に選ばれた。

スタイリスト / 丸山晃(川口春奈)、菊地陽之介(林遣都)
ヘアメイク / 板倉タクマ:ヌーデ(川口春奈)、SHUTARO:vitamins(林遣都)