宇垣美里が語る「新世紀エヴァンゲリオン」|キーワードは「共感」、衰え知らずの平成ギガヒットアニメに惹かれる理由

「シン・ゴジラ」の庵野秀明が監督を務め、社会現象を巻き起こしたテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」。1995年の放送開始からその勢いはとどまることなく、約25年もの間、国と世代を超えたファンを魅了し続けている。そんな中、すべての始まりとなったテレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」と劇場版「EVANGELION:DEATH (TRUE)2」「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」が、Netflixで全世界独占配信されている。

映画ナタリーでは、シリーズのファンである宇垣美里にインタビューを実施。大学生のときに出会った「新世紀エヴァンゲリオン」に惹き付けられる理由や、時を経て感じた新たな魅力を存分に語ってもらった。また、au Netflixプランでは動画コンテンツが約100時間分楽しめるデータ量25GBが付属するため、本作全26話をスマートフォンで一気見することも可能だ。アニメジャーナリストの数土直志が選んだお薦め作品リストでも気になる作品をチェックしてみよう。

取材・文 / 佐藤希 撮影 / 入江達也 作品リスト選者・解説文 / 数土直志

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本当に「それな!」って思います(笑)

──宇垣さんはもともと「エヴァンゲリオン」(以下「エヴァ」)シリーズがお好きということで、今回いろいろとお話を伺っていきたいと思います。

はい、すごく好きです!

──1991年にお生まれなので、テレビ放送をリアルタイムで楽しむ世代ではなかったと思うんですが、宇垣さんと「エヴァ」シリーズの出会いはいつだったんでしょうか?

大学のときに先輩に薦められて観ました。名前も葛城ミサトさんと同じく“みさと”ですし(笑)。近くのレンタルビデオ屋さんで借りて、全26話をドワーッと一気見してしまいました。大学生ってものすごく時間があるし、実家がけっこう厳しい家であまりアニメを観ることができなかったこともあって、一人暮らしを機にアニメにハマっていったんです。

──宇垣さんの思う「エヴァ」シリーズの魅力はどういうポイントなんでしょうか?

「新世紀エヴァンゲリオン」より、碇シンジ。

誰しも登場人物の中に必ず共感できるキャラクターがいるところだと思います。特に主人公のシンジくんですが、みんななんとなく彼の気持ちが理解できると思うんです。私はもちろん「エヴァに乗れ」と言われたことはないんですが、多感な年頃の少年が思いがけず戦闘に出ることになってしまい、その中で生まれる葛藤にシンパシーを感じますね。ほかにも、シンジくんが周囲の人たちとのやり取りで、少しずつ何かをつかめていくのか、いかないのかというところも共感しやすいのかなと思います。

──なるほど。

宇垣美里

私が「エヴァ」に出会ったのが大学生のときだったから、ということもあると思います。大学生って根なし草みたいな状態じゃないですか。フワフワしていて、自分がこれからどうなるかもよくわからないし、もはや何も考えたくないみたいな。そういうときだから、心に刺さったんだろうなと思います。

──シンジのセリフに「楽しいこと見つけて、そればっかりやってて、何が悪いんだよ!」というものがありますね。

本当に「それな!」って思います(笑)。

──「わかるわかる」と感じるセリフが多いです。

あと皆さんけっこう「エヴァ」は“履修”してらっしゃいますよね。「ATフィールド」とか「笑えばいいと思うよ」とか、登場する言葉がわかっていると共通言語ができて、同志との会話の中で「フフッ」って笑えて楽しいです。「おめでとー」(拍手する)とか(笑)。二次的な遊びができるんです。

アスカのように尊大な態度で自分を守ってしまう

──テレビシリーズの頃には、綾波レイと惣流・アスカ・ラングレーのどちらかで意見が割れたみたいです。ちなみに宇垣さんはどっち派ですか?

「新世紀エヴァンゲリオン」より、惣流・アスカ・ラングレー。

うーん……かわいいな、守ってあげたいなと思うのはレイなんですけど、共感できるのはアスカですね。

──本日もアスカのプラグスーツと弐号機のような赤いワンピースを着ていただいてありがとうございます!

(笑)。彼女に対して、同族嫌悪的に「うるさい女だな」と思う場面もあるんですけど、弱いが故に吠えたり強がっちゃったりしてしまう姿が理解できるし、かわいいなと思うんですよね。

──アスカは自信家のように見えますが、シリーズ後半では彼女の内に秘める弱さが垣間見えるシーンも増えてきます。親の愛情を得られなかったという点ではシンジと同様ですよね。

宇垣美里

実は弱い部分があるし、愛された記憶が薄いということを抱えながらも「だってあたしは美人だし、すごいんだもん!」と言い聞かせるように自分を鼓舞している姿って苦しいんだろうけど、かわいくて応援しちゃいます。どちらかというと私もメソメソするよりは「うるさい、私は最高だぜ!」ってがんばるタイプなので共感できるポイントは多かったですね。

──宇垣さんも負けん気が強いタイプなんですね。

アスカのように尊大な態度で自分を守ってしまうタイプですね。でもそれは逆に自尊心が低いことの裏返しだと思うんですよ。アスカの場合だと、普通ならばお母さんに「あなたが1番なのよ」と言ってもらいながら成長するところを、自分で自分に言ってあげなければいけないんです。自ら「私は特別な子なんだ」って言い続けなければ、ダメな子になってしまう。

──そのせいか、アスカはエリートという立場を誇示する場面や「あたしは特別」というようなセリフが多く感じます。

そうですね、加えてシンジくんの苦しみや、レイの諦観した雰囲気も28歳になった今わかってきたように思います。「よくも14歳でこの境地に……!」って。初めて観た大学生の頃と、響き方も変わってきたように感じます。

──例えばどういうポイントでしょうか?

「新世紀エヴァンゲリオン」より、葛城ミサト。

ミサトさんに対して、最初はなんてぐうたらな大人なんだと感じていたんですが、今は私も「毎日お酒飲みたい……じゃないとやってられない!」と思っています(笑)。またミサトさんの苦しみって、ある程度自分の限界がわかっている人が抱えるそれですよね。誰かに託さざるを得ない苦しみもあって、14歳の少年少女にあんな残酷なことを頼まなきゃいけないことに対する葛藤や、やっていることが正しいのか?と感じてしまう悩みもある。なんだかんだミサトさんも中間管理職ですから、そういう立場の人が抱える葛藤もこの歳になってわかるようになってきました。

──宇垣さんは来年には29歳を迎えられて、ミサトさんの初登場時の年齢と同じになりますね。

うわ、本当だ……(うつむく)。でもそう思うと、昔思い描いていた29歳ってとても大人ですね。今の自分に置き換えてみるとまだ全然ペーペーだし、ほかの仕事でもきっとそうだと思います。まだまだ若手で、そう考えるとNERVの中でミサトさんはよくがんばっていたよなあ……。大人だと思っていたミサトさんもあがいていたんだなと感じます。

──自宅ではシンジとアスカの面倒を見ていますし。

自分1人で精いっぱいになっちゃいそうですよね。今改めて見返すと、大学生の頃には特に気にしていなかったミサトや(赤木)リツコといった“チーム大人”の感情がすごく刺さるんです。最初は頭がおかしいおじさんだと思っていた(シンジの父親の碇)ゲンドウも、少し理解できる部分があります。「悲しいけど、立ち直らないといけないじゃん!」と思っていたのに、今は「まあわからんでもないな」という気持ちになってきました。そういう意味では歳を取ったことを感じました……。

──将来的にゲンドウに共感できるご自分って想像できますか?

彼の心情は人を愛して、ときに失うというプロセスを経験しないと理解できないと思います。今でさえ少し理解できるんだとしたら、もっと歳を取って結婚したり子供ができたりして狂気にまで至るような愛がわかったときに、彼の心情が理解できるんでしょうね。

──シリーズ後半には謎の少年として渚カヲルも登場します。

登場人物の中ではダントツで“お耽美”ですよね。そして石田彰さんの声がとてもいい! 見た目もよくて声もいい……「本当にありがとうございます」と感じるキャラです。

明確な答えがないものはずっと心に残る

──ビルよりも大きなエヴァンゲリオンたちが躍動する戦闘シーンも、本作の大きな魅力です。

エヴァをロボットと呼んでもいいかは自分の中でも疑問ですが、これまでのロボットにはない曲線美がすごく好きで。いっそエロいと言ってもいいようなあのライン! なまめかしい感じが観ていてとても楽しいですね。戦闘シーンも殴って終わり、というわけではなくて、毎回どういう段階を踏んで使徒を倒していくのかというポイントも楽しみでした。停電したり、2機が息を合わせて同時に複雑な攻撃をしないといけなかったり、戦いに外的なハンデがかかるエピソードもありますよね。

──第9話 「瞬間、心、重ねて」は、シンジとアスカが2体に分裂する使徒を音楽に合わせて撃破する回でしたね。

「新世紀エヴァンゲリオン」

私その話がすごく好きなんですよ! 2人の距離が近付いたシーンだし、戦闘も観ていてすごく楽しい。あの話がまさしくそうなんですが、「エヴァ」シリーズってしっかり魅せるドラマパートのあとにかっこいい戦闘シーンというように、話の緩急がある部分も好きなポイントです。

──シリーズ後半にはシンジをはじめとして登場人物の内面に迫る描写が増えてきます。

宇垣美里

テレビシリーズを最後まで観たとき、正直に言って訳がわからなかったんですよ。でも、リアルタイムで放送されていた時代は「エヴァ」とか「少女革命ウテナ」とか、何を見させられていたんだ?と感じるものがいくつかありましたよね。「あれはなんだったんだろう、どう解釈したらいいんだろう?」というように、明確な答えがないものはずっと心に残るんですよ。そして2007年の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズからは少し内容が変わっていて、「なるほど」と思いながら友達とどっちが好きか話し合えるのがいいところだと思います。

──考察の楽しみということですね。明確な答えがないからこそ、ずっと議論し合えるというか。確かに「エヴァ」シリーズはファンによる考察がとても盛んな印象です。

議論の幅が生まれますよね。ある種私たちにゆだねられている部分があるのかも。あと最近のアニメはどこで人気が出るのかなって考えたら「関係性萌え」だと思ったんです。「おそ松さん」だってみんなだいたい同じ顔なのに、なんであのアニメが人気なのかっていうと、個々の関係性が見えやすいからだと思うんです。