「怪盗クイーンの優雅な休暇」特集 | はやみねかおる作品を愛する栞葉るり、山本祥彰(QuizKnock)が喝采!加藤和樹×Cocomiのキャスト対談も

あの“怪盗クイーン”が華麗に舞い戻る! 時代を超えて愛され続ける、はやみねかおるの人気小説をもとにしたアニメーション映画シリーズ第2弾「怪盗クイーンの優雅な休暇(バカンス)」が5月23日に全国で公開。舞台は豪華客船──新たな物語の幕が上がり、まるで休む暇もないスリリングな事件がクイーンたちを待ち受ける。

本特集には、はやみね作品の愛読者であるVTuber・栞葉るり、QuizKnock・山本祥彰の鑑賞コメントを掲載。クイーンの仕事上のパートナーであるジョーカー役の加藤和樹と、新キャラクターである王女イルマ役のCocomiが、収録裏話やキャラクターの魅力を語り合ったインタビューもお見逃しなく。

取材・文 / 金須晶子

映画「怪盗クイーンの優雅な休暇」予告編公開中

著名人2名がつづる“クイーン愛”

栞葉るり

栞葉るり

豪華客船に遙か遠い異国の地、カジノ……煌びやかな世界をクイーンが駆け回る! 幼少期に夢見た光景が映像になって動いていることに大興奮です。
探偵卿・ジオットと冥美ちゃんはお茶目で可愛いし、クイーンへの復讐に燃える暗殺集団「初楼」とクイーンの戦闘はドキドキしちゃう。RDは前作に引き続き良い味を出していて、クイーンは常変わらず美しく絢爛……! ですが、本作で最も印象に残ったのはやはりジョーカーとイルマ姫の交流です。怪盗のパートナーとお姫様という正反対な立場でありながら、どこか通じ合うところのある二人。定められた運命の中で必死に前進しようと頑張るイルマ姫に、温かく寄り添うジョーカーの関係性が染み入る……! そして若い二人を見守り、さりげなく導くクイーンが本当に格好良い。クイーンはいついかなる時も華麗なる怪盗クイーンで最高なんですよね。
子どもの頃に憧れたワクワクがぎゅぎゅっと詰まった「怪盗クイーンの優雅な休暇」、ぜひ劇場でご覧ください。
それでは怪盗クイーン、良い休暇を!

プロフィール

栞葉るり(シオリハルリ)

2023年11月、VTuberグループ「にじさんじ」よりデビュー。YouTubeのチャンネル登録者数は30万人を超える(※2025年5月時点)。趣味は読書。古典をテーマにした著書「ゆるゆる古典教室 オタクは実質、平安貴族」が2025年7月25日に発売される。

山本祥彰(QuizKnock)

山本祥彰(QuizKnock)

はやみねかおる先生の作品に触れると、必ず小学生のころの感覚が蘇ります。この世界のどこかに存在する未知の世界の多さを知りワクワクしたこと。大人はみな譲れない価値観をもつのだろう、ということ。
怪盗クイーンの魅力は、緊張と緩和にあると感じています。独自の「怪盗の美学」をもつ腕利きの怪盗ながら、その人間味のあふれることあふれること。本作でも、クイーンの魅力をたっぷり味わえました。信念を貫くかっこよさをもちながら、お茶目なかわいさも持ち合わせているんですよね。
そして、クイーンのパートナーであるジョーカーと、グーコ王国の王女であるイルマ姫の交流も本作の魅力のひとつ。この2人にもそれぞれの信念があり、その信念が次第に交錯していきます。
多彩なアクションバトルや人間ドラマを楽しみつつ、自分の中の「正しさ」について考えるきっかけを与えてくれる作品。ご覧になったあとは、ぜひ自分が大切にしている価値観について考えてみてください。

プロフィール

山本祥彰(ヤマモトヨシアキ)

1996年生まれ。早稲田大学先進理工学部卒業。2017年9月に知的エンタメ集団・QuizKnockに加入し、現在はYouTube動画への出演のほか、謎解きやクイズの制作・監修を主に担当している。「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」「ネプリーグ」などのクイズ番組でも活躍中。2022年3月に漢検1級を取得した。特技はクイズ・謎解きで、謎解き能力検定では満点を取ったこともある。

加藤和樹(ジョーカー役)×Cocomi(イルマ役)
インタビュー
左からCocomi、加藤和樹

左からCocomi、加藤和樹

昔の自分を見ているようでした(加藤)

──完成した作品をご覧になって、いかがでしたか?

Cocomi 「次はもっとこうしよう」と反省点ばかりでした。

加藤和樹 いやいや、とても素敵でしたよ。

Cocomi ありがとうございます……。周りの皆さんの声がどれも聞いたことのある声ばかりで、アフレコのときはずっと興奮していたんです。それを出さないようにがんばっていたんですけど、完成した作品を観たら、皆さんの技術が伝わってきて。0.01秒レベルの息遣いとか、そういう繊細な部分まで、声優さんってすごいなあと、より一層強く思いました。

──加藤さんは前作から続投でしたね。

加藤 今回もとにかく痛快で、たくさん笑わせてもらいました。特にジョーカーとイルマ姫のシーンが多くて、ジョーカーの心情や過去、生い立ちに触れる場面もあって。ドラマ性が増している一方で、クイーンの活躍にはスカッとさせられて楽しく観られました。(クイーン役の)大和悠河さんとは、時間が経ってもパートナーシップみたいなものがお互いにあったので。そこもしっかり表れていたかなと思います。

クイーンの仕事上のパートナーであるジョーカー(声:加藤和樹)

クイーンの仕事上のパートナーであるジョーカー(声:加藤和樹)

新キャラクターの王女イルマ(声:Cocomi)

新キャラクターの王女イルマ(声:Cocomi)

──収録現場はどんな雰囲気でしたか?

Cocomi すごくにぎやかでした! 私が初めて声優を経験した「漁港の肉子ちゃん」のときはコロナ禍で、ブースに1人ずつしか入れなかったんです。でも今回は皆さんと一緒に収録できて。大人数でのアフレコ現場って「進撃の巨人」のドキュメンタリーとかで観たことはあったんですけど、いざ自分がその中にいると思うと、手汗が(笑)。自分の出番が来ると、スッと立ってマイク前に行ってセリフを言うんです。そのたびにすごく緊張して……シビれましたね。

加藤 なんだか昔の自分を見ているようで(笑)。親心じゃないですけど、シンパシーを感じて温かく見守っていました。僕自身も経験のない状態で声優さんの現場に入って、そこからたくさんのことを吸収してきたので。Cocomiさんもすごく真剣に臨んでいて、セリフを重ねるごとにどんどん成長していくんです。やればやるほどよくなるのが目に見えてわかって、現場でみんな「すごい」と話してましたよ。

Cocomi 本当ですか……? このアフレコは、これまで生きてきた23年間で一番、短期間で食らいつかなきゃ!と感じた時間でした。監督からアドバイスをたくさんいただき、「次はこう言ってみて」といった指示も受けながら、その場で微調整していく。そんなやり取りが自分にとって大きなチャレンジでした。

性別・年齢・国籍不明。狙った獲物は必ず盗む、神出鬼没な怪盗クイーン(声:大和悠河)

性別・年齢・国籍不明。狙った獲物は必ず盗む、神出鬼没な怪盗クイーン(声:大和悠河)

左からジョーカー、クイーン、イルマ

左からジョーカー、クイーン、イルマ

どうしよう、自分がダミーヘッドマイクになったみたい!(Cocomi)

──クイーンが主人公でありつつ、今作ではジョーカーとイルマも物語の中心になっていきます。お二人は「初めまして」から、どのように関係性を築いていったのでしょうか?

加藤 お芝居しながら、ですね。ブースに入ったらすぐ「じゃあ、やりましょう」という感じで。Cocomiさんも「え、もう!?」と思ったんじゃないですかね。事前に話し合う時間もなく、いきなり本番だったので、お互いの声を聞きながらテンポを探っていきました。でも物語が進むにつれて、演じる側の気持ちの距離感もぐっと近くなった感じはありました。ジョーカーとしては、クイーンの命令でイルマ姫を見張っているわけですが、どこか彼女を放っておけないというか。僕自身もCocomiさんがどんなお芝居をするんだろうと見守っている感覚があったので、そういう意味では役に入り込めていたように思います。

加藤和樹

加藤和樹

──Cocomiさんは、加藤さんと共演されていかがでしたか?

Cocomi あの、私、普段からアニメやゲームが大好きで。加藤さんが演じられている推しキャラをゲームのホーム画面に設定していて……。なので、加藤さんがスタジオに入って来られて「おはようございます」とおっしゃった瞬間、うわー! あの声が聞こえる!って変な汗が出てきてソワソワしちゃいました。

──そのことはご本人に伝えたんですか?

Cocomi はい、収録の一番最後に。

加藤 遅いよね(笑)。

Cocomi いろんな緊張が入り混じってしまって……。

加藤 最初に言ってくれたら、もっと気軽にコミュニケーション取れたのに。でもまあ、気持ちはよくわかります。

Cocomi しかもアフレコは席が自由だったんですけど、加藤さんが私の左隣に座られて。左耳から加藤さんの声、右耳からは(ナレーションの)諏訪部順一さんの声が聞こえてきて……どうしよう、自分がダミーヘッドマイクになったみたい!って。家族のトークグループに「助けて」とSOSを送ってしまいました。

Cocomi

Cocomi

──さまざまな緊張があったんですね……! ジョーカーとイルマの関係性って、人によっては“ほのかな恋”のように感じる部分もあると思うんです。でも、加藤さんは「自分の過去を重ねて温かく見守っているんだと思う」とアフレコ時にコメントされていました。今日のお話を聞いていると、Cocomiさんに向ける目線と似ていますね。

加藤 本当にそうなんです。だからすごくやりやすかった。ジョーカーとイルマ姫について、あくまで僕個人としては恋とは違うと思っていて。イルマ姫って、無邪気で気丈なんだけど、どこか弱い部分もある。ジョーカーはそんな彼女に、少し強めだけど優しく接する。見る人によっては恋みたいに見えるかもしれないけど、個人的にはもっと、そういうのを超えた関係性なのかなと思っています。

Cocomi 私もそう感じていました。兄妹のような愛情だったり、心からの感謝みたいなものでしょうか。特に好きなのが、2人が船の上で話すシーンです。イルマが初めて自分の気持ちを他人にさらけ出せたことで、きっと彼女自身も少し救われたのかなと思います。

はやみね先生の作品は、時代が変わってもずっとそこにあり続ける(加藤)

──お互いに、相手のこんなところが役柄と似ているなと思う共通点はありますか?

Cocomi (即答で)かっこよさですね。ジョーカーって普段はスンッとしてますけど、クイーンにはちょっと甘いところがあったり、イルマに対しても世話を焼いたり、優しさがにじみ出る瞬間があるんです。クールなのに優しいところが、ジョーカーと加藤さん、どちらにも共通するギャップだと思いました。

加藤 もう、ここまでの話でわかると思うんですけど、彼女、オタクなんですよ。イルマ姫も、ある意味“怪盗オタク”みたいな部分があって。クイーンに初めて会うシーンでもテンションが高かったですよね。だから好きなものに対して気持ちがあふれ出ちゃう感じは、本人とすごく似てるなと思います。

Cocomi それ、別のインタビューで自分でも言いました(笑)。(イルマと自分が)同じだなって。

加藤 やっぱり(笑)。

小さい頃に読んだ物語の影響で、自由な怪盗に憧れているイルマ(右)は、クイーン(左)のことも尊敬している

小さい頃に読んだ物語の影響で、自由な怪盗に憧れているイルマ(右)は、クイーン(左)のことも尊敬している

──ご本人同士も納得ということですね。この「怪盗クイーン」シリーズをはじめ、はやみねかおる先生の作品は時代を超えて愛され続けています。作品の持つユーモアや登場人物たちのまっすぐな姿が、多くの読者の心に残るのではないでしょうか。

Cocomi 今作をご覧いただくとわかるのですが、クイーンはただ敵と戦うだけではなく、戦った相手の心までも救うんです。笑えたりほっこりするシーンに加え、観る人にいろいろなことを考えさせてくれる深さがあります。はやみね先生の物語に触れることで、自分自身も少し成長できるような感覚があって、そこが本当に素敵だなと感じます。

加藤 大人になると、夢をあきらめたり、現実との折り合いをつけたりすることがあると思うんです。でも、はやみね先生の作品は、時代が変わってもずっとそこにあり続けて、さっそうと登場するクイーンの姿も変わらない。子供の頃に目をキラキラさせて読んでいた大人たちも、今は夢を叶えた人もいれば、道半ばであきらめてしまった人もいるかもしれません。それでも、作品の中には「好きなことを追い続ける素晴らしさ」や「探究心の大切さ」といった、あの頃の素直な気持ちを思い出させてくれる魅力があります。大人の方々には、お子さんと一緒に観たり、昔の友達を誘ったり、そういう楽しみ方をしていただけたらうれしいです。

左からCocomi、加藤和樹

左からCocomi、加藤和樹

プロフィール

加藤和樹(カトウカズキ)

1984年10月7日生まれ、愛知県出身。2005年、「ミュージカル『新テニスの王子様』The Imperial Match 氷帝学園」で初舞台を踏み、翌年にミニアルバム「Rough Diamond」でCDデビューを果たす。近年の主な出演作はミュージカル「フランケンシュタイン」「ファントム」「ローマの休日」「BARNUM」「キングアーサー」、舞台「冬のライオン」「裸足で散歩」など。声優としても活躍し、ゲーム「B-PROJECT」シリーズや「ディズニー ツイステッドワンダーランド」、劇場アニメ「ベルサイユのばら」などに参加している。アーティスト活動も精力的に行い、2025年6月11日にはニューシングル「Chocolate」をリリース。全国7カ所を巡るライブツアーも開催する。同年6月に朗読劇「告白 コンフェッション」、10月から11月にかけてミュージカル「マタ・ハリ」への出演も控える。

Cocomi(ココミ)

2001年5月1日生まれ、東京都出身。フルート奏者。3歳からヴァイオリン、11歳でフルートを始める。桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コースを経て、現在は同大学のソリスト・ディプロマ・コースに在籍中。2019年に日本奏楽コンクールで管楽器部門第1位とともにフランス近代音楽賞を受賞するなど、数々のコンクールで優秀な成績を収めてきた。2022年4月にデビューアルバム「de l'amour」をリリース。2023年11月にセカンドアルバム「Mélancolie」、2024年10月にサードアルバム「Neos」を発表した。2021年公開の劇場アニメーション「漁港の肉子ちゃん」では声優に初挑戦。音楽活動と並行してモデル活動も行っている。

登場人物たちの関係性を紐解く
3つの視点

①クイーン、ジョーカー、RDのチームワーク

どんな仕事も華麗にこなす怪盗クイーン、頼れるパートナー・ジョーカー、仕事を支える世界最高の人工知能・RD。三者の関係は“主従”ではなく、あくまで対等で自由な“チーム”だ。RDのアメとムチが冴え渡るツッコミも手伝って、テンポのよいやり取りには「怪盗クイーン」シリーズらしさが詰まっている。クイーンいわく「親愛なる友人」である一方、ジョーカーとRDはあくまで「仕事上のパートナー」「一介の人工知能」だと言い張る、その絶妙な距離感も実にほほえましい。
今作は、クイーンがジョーカーの子供時代の写真を大切そうに眺め、その写真をジョーカーが奪い返そうとする小競り合いから開幕。監督の池田重隆が「今回はクイーンからジョーカーに対して“親”としての顔が垣間見える場面がある」と語るように、長年連れ添ってきたからこその絆の深さが、さりげなく観客の胸を打つ。

ジョーカーの子供時代の写真を手にするクイーン

ジョーカーの子供時代の写真を手にするクイーン

②イルマ姫との出会い

豪華客船で出会うクイーンとイルマ。性別・年齢・国籍不明のカリスマ性あふれるクイーンに対し、グーコ王国王位第一継承者である王女イルマもまた、型にはまらない芯の強さを秘めている。まったく異なる立場ながら、不思議な共鳴が感じられる2人。それぞれの信念を胸に、自分の道をまっすぐ突き進む姿は、どこか通じ合っているようにも見えてくる。
そんなイルマのお目付け役として、クイーンはジョーカーに同行を命じる。厳しい言葉を投げつつ彼女を見守るジョーカーと、ツンケンしながらも素直な感情をさらけ出すイルマ。過ごした時間は短くとも、その交流は確かに互いの心に変化をもたらしていく。イルマが最後にどんな覚悟を決めるのか──ぜひスクリーンで見届けてほしい。

ジョーカーが変装した“ジル”(左)とイルマ(右)

ジョーカーが変装した“ジル”(左)とイルマ(右)

③暗殺組織・初楼とのぶつかり合い

かつてクイーンに敗れ壊滅したはずの暗殺者集団・初楼(ういろう)が、船上に姿を現す。世界最強と呼ばれた彼らは、クイーンにとって脅威であると同時に、作品に鋭い緊張感をもたらす存在。暗殺という“仕事”に矜持を持つ彼らと、華麗なる怪盗クイーンの対峙は、まさにプロ同士の真剣勝負だ。劇中では“優雅な休暇”というタイトルからは想像できない迫力のアクションが展開され、クイーンの身のこなしが映えるシーンが次々と繰り出される。単純な勧善懲悪では終わらない、ほろ苦い余韻は「怪盗クイーン」の神髄!

“優雅な休暇”の全貌はスクリーンで!

“優雅な休暇”の全貌はスクリーンで!