映画ナタリー Power Push - メイズ・ランナー
藤岡弘、インタビュー メイズ攻略!“藤岡、流”サバイバルの極意
トーマスは生きることにどれだけ真剣な目をしているか
──じゃあこの映画の登場人物たちは、ランナーという役割を作ったところまでは正しかったけど、もっといろいろな役割を作るべきだったってことですかね。
そうそうそう。まだまだあるんですよ、言いたいことは! 3年もあるんだから、彼らはもっと知恵を使うべきだ。何をやってるんだ! ただ走ってるだけじゃないか! その挑戦はいいんだよ、でも戦術・戦略・備えがないじゃない。
──そうですよね……。
そういうリーダーがいないんだよ。ただこのトーマスという主人公は唯一、挑戦心やあきらめない精神があって、アメリカが求めてる人物像なんだと思う! 私がハリウッド映画で主演させていただいたときに感じたのは、アメリカは非常に映画の影響力をうまく活用しているということ。映画という娯楽の中に、国を創り上げるメッセージを込めているんだ。私がアメリカの映画を好きなわけは、登場人物が自立してるでしょ。これもそうだよ(資料を力強く叩きながら)。たった1人でも戦おうっていう人物しか主役にならないでしょ? こういうアメリカ人がいたらいいなっていう存在しか出てこないでしょ? 日本と違うんだよ、日本の映画はいつも全体で一緒。トーマスは生きることにどれだけ真剣な目をしてるかっていうことだよ(資料のトーマスを指さす)。
──そうですねえ。
まだまだ。この話、1週間は続けられますね。私はこの映画を今の日本の若者に観てもらいたいと強く望んでいるから、このインタビューを引き受けたんだ。この混沌とした状況の中で自立した生き方に触れてほしいと思っている、そのためにこの映画を広く皆に伝えなければと思ったね。だから、この映画について語る要素はたくさんあるんですよ。それくらい私は実体験によって感じる部分があるんだ。これは実践によって得たものだから、本を読んだだけの知識とは違うんだよ。ただね、これを理解できるかどうかなんだよね。
──は、はい。
容赦のない世界の現場を見たことがあるかい?
──ありません……。
私は、願わくば経験したくなかったことや、ここでは話せないようなことも見聞きし経験してきた。実践し行動しチャレンジし、そして失敗や悲しみ、感動からも学ぶものなんだよ。それが力になるんだよ。それが次なる勝利への財産になるんだよ。
──藤岡さんは、「熱血!・藤岡弘、の『人生に喝!』」という本で「現状に満足してしまっては駄目だ」とおっしゃってたじゃないですか。
ええ。(身を乗り出しながら)
──その悪い例がまさに「迷路から出るなんて危険なことをしなくても、ここで平和に暮らしてればいいじゃないか」っていう考えを持つギャリーだなと思って。
このギャリーというのは、絶望しちゃってるんだよ。自分の中で希望を持とうとしなくなっちゃってる。秩序だけを守ろうと、安全圏で考えているだけだから。私は、本で学んだことを言ってるわけじゃないからね。紛争地でボランティア活動しているとき、生死をさまよいながら戦場を歩き、目の前で地雷で吹っ飛ぶ人を見て、死体の山、死体、腐臭、難民の群れ……。はあ……。もう思い出すのも嫌だ……。ごめん……(目頭を押さえる)。
──すみません……。
経験はね、身体が、遺伝子が覚えてる。人の悲しみと痛みに涙を流したことがないやつは駄目だよね。生きて生きて生き抜く、そういう男性を選ばないと女性は安心できませんよね。わかるかな?
──おっしゃる通りです。
「私、イケメンがいい」と言って相手を選んでも駄目なんだよ(笑)。イケメンが駄目だと言っているのではないよ。自分の生き方や目的をしっかり見据えてないと。それをこの物語で表してるんだよ。これを観てそう感じないやつはよほど能天気で平和ボケしてるんじゃないかな。「あ、やばい、このままじゃ俺こいつと同じだ!」と気付いて焦っていく中で自分を発見しないと。
“一眼二足三胆四力”って言う言葉を知ってるかい?
──このアルビーっていうキャラは一応リーダーじゃないですか。一番最初にメイズに送り込まれて、最初の1カ月間たった1人で生き抜いたというキャラクターですけど、やっぱり藤岡さんから見たらまだまだですかね?
まだまだ、足りない。リーダーとして、チーム1人ひとりとその役割分担をちゃんと見据えて、新入りが来たときからその個性を見極めないと駄目。“一眼二足三胆四力”っていう言葉を知ってるかい? 最初に見るのが “一眼”、まず相手の眼に現れている人柄をきっちり見て、どういうやつかを見抜く。目は口ほどにものを言うからね。その次が“二足”、相手の足、すなわち行動力を見る。3番目の“三胆”は度胸だよ、勇気だよ! そして最後に “四力”は知力、体力、忍耐力、持久力、集中力、洞察力、気力。このすべてを看破しないと。それぞれを見抜いた上で役割分担を決めていく、こいつ(アルビー)はそれが足りなかったね。
──そうですね。
それとこの子供(チャック)がね、人間臭いんだよ。パパやママのことを思ってね、子供らしいんだよ。
──最年少のチャックは、両親を思ってお守りを大事にしている描写もありますね。
そう。感性が豊かでね、これが本来の子供の姿。この子供は、大人たちの姿を見ることによって、生きるにはどの人についていったらいいか見抜くことを学ぶんだよ。だからチャックは、やっぱりトーマスを選んだんだよ。
──最後にはトーマスについていきますからね。
今、同じなんだよ日本は。子供たちはそういうリーダーや先輩を探してるんだ。でも、それに大人が気付いてないんだよ。「あの人の言うことだったら聞こうかな」「あの人はハッタリだ、口だけだ、格好だけ」、そういうのを見抜いてるのが子供なんだ、純粋だから。チャックがその象徴なんだよ。
──そういう意味があってこのキャラクターがいたんですね。
そうそうそう。この副リーダー(ニューク)、彼はものすごく分析力があるよ。彼は政治家的で、ちゃんと見極めてるんだよ。「あっこの人間は走らせておいたほうがいい、この人間はこういう能力があるからこっちに使おう」って全体を把握する、これはリーダーとして必要な能力なんだ。話の中で、これ(ニュート)はこれ(トーマス)から学び始めるでしょ。それでこれ(テレサ)からも、そしてこの探究者(ミンホ)からもいろいろなことを学ぶ。管理者ですから。1人が全能力を持つっていうのは不可能に近いんだけど、この映画はそこをうまく作ってるよね。
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2009年に発表されたジェームズ・ダシュナーのベストセラーを、ウェス・ボール監督で映画化した3部作の第1弾。テレビシリーズ「ティーン・ウルフ」のディラン・オブライエン、2017年公開の「パイレーツ・オブ・カリビアン」最新作のヒロインに抜擢されたカヤ・スコデラーリオ、「ラブ・アクチュアリー」のトーマス・ブローディ・サングスターら注目の若手俳優が集結し、謎の巨大迷路に放り込まれた少年たちの脱出劇をスリルたっぷりに描き出す。日本では2015年5月より上映され、10月23日には第2弾「メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮」の公開を控えている。
- 監督:ウェス・ボール
- 脚本:ノア・オッペンハイム、グラント・ピアース・マイヤーズ、T・S・ノーリン
- 原作:ジェームズ・ダシュナー
- 出演:ディラン・オブライエン、カヤ・スコデラーリオ、トーマス・ブローディ・サングスター、ウィル・ポールター、アムル・アミーン、キー・ホン・リー、ブレイク・クーパー ほか
- Blu-ray / DVD「メイズ・ランナー」好評発売中 / 20世紀フォックスホームエンターテイメント
- 初回生産限定 / Blu-ray+DVD 4309円 / FXXA-57508
- DVD 3590円 / FXBA-57508
初回生産限定特典映像
- 未公開シーン集(ウェス・ボールによる音声解説付き)
- 迷路の世界:メイキング映像集
- チャック・ダイアリー
- NGシーン集
- VFXについて
- ショート・フィルム「Ruin」(ウェス・ボールによる音声解説付き)
- ウェス・ボール(監督)と T・S・ノーリン(脚本)による音声解説
- スティル・ギャラリー
- オリジナル劇場予告編
藤岡弘、(フジオカヒロシ)
俳優、武道家。1965年、松竹映画にてデビュー。青春映画シリーズで主演後、1971年には初代「仮面ライダー」として一躍名を馳せ、当初はスーツアクターも兼任していた。映画「日本沈没」「野獣死すべし」「大空のサムライ」やテレビドラマ「勝海舟」「特捜最前線」など多くの作品に主演し、アクション俳優として映画界を牽引してきた。1984年にはハリウッド映画「SFソードキル」の主役に抜擢され、日本人で初めて全米映画俳優組合のメンバーとなる。2002年より水曜スぺシャル「藤岡弘、探検隊」の隊長として、アマゾン奥地やラオスの密林などでのサバイバルに果敢に挑む。著書は「あきらめない」「藤岡弘、の人生はサバイバルだ。」など多数。武道家としても知られ、世界各国で真剣による演武を行なっている。また、国内はもとより、世界数十ヶ国の紛争地域、難民キャンプへ救援物資を直接届ける支援活動も精力的に行ってきた。2015年、芸能生活50周年を迎え、2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」へ本多忠勝役にて出演する。世界を渡り歩いてプロデュースしたこだわりのコーヒー「藤岡、珈琲」の販売も行っている。
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