ディズニー / ピクサーが贈る記念すべき20作目の長編アニメーション「インクレディブル・ファミリー」が、8月1日より全国で公開される。
本作はかつてスーパーヒーローとして活躍するも、その活動を禁じられたボブ・パーと家族の闘いを描いた作品。大迫力の爽快アクションのみならず、子育ての難しさがユーモアを交えながら丁寧に描写されている。ひと足早く封切りを迎えたアメリカでは、アニメ作品における全米歴代興行収入で新記録を打ち立てた。
ナタリーでは本作の公開を記念し、映画、音楽とジャンルを横断した特集企画を展開。映画ナタリーでは、映画好きとして知られるお笑い芸人・スピードワゴンの小沢一敬に話を聞いた。試写室を出た直後、「ありがとう。面白かった」と言い放った小沢。そんな彼が自身のエピソードを交えながら語る本作の魅力とは?
取材・文 / 奥富敏晴 撮影 / 佐藤友昭
ヘアメイク / 尊妃 スタイリング / 作山直紀
家族におばあちゃんがいたらさらに最高だった
(記者の手元を見て)……それは何?
──撮影用に用意しているパー一家とおそろいの黒いマスクです。
あの変身マスクか。俺も今着けたい。顔を写さないでほしい(笑)。
──ちょっと準備が必要なのでまたあとでお願いします(笑)。まず小沢さんの映画観についてお聞かせください。
若い頃は映画に意味を求めてたの。2時間かけるからには、何かを得たいと思って観てた。でもこの歳になってみても俺がわかるのは面白いか、面白くないかだけ。だから「この映画はこうだからこう観てほしい」と言っちゃうとミスリードしてしまう。個人的には映画を観に行くときに絶対しちゃいけないのは、ネタバレとかではなく映画に対する評価とか前情報を入れること。だからこの記事も読んじゃ駄目(笑)。
──このあとのインタビューがやりづらいです(笑)。前作「Mr.インクレディブル」はご覧になってますか?
観てないです。でも事前知識を入れなくても「インクレディブル・ファミリー」は絶対に楽しめる。もちろん観終わると1作目を観たくなったけどね。俺ってさ、水をコンビニで買うことに抵抗がある世代なの。昔は水道水でも当たり前のように飲めたから。それと一緒で若い頃は、いつもテレビで観てるアニメを映画館で観るのって水を買うのと一緒だと思ってた。わかるかなこの感覚。でもこの歳になって水を買う意味もわかるし、めちゃめちゃおいしい水も増えた。
──これまで映画館でアニメを観る機会はあまりなかったんでしょうか?
そんなこともないんだけど(笑)。小さい頃は東映まんがまつりで「キン肉マン」の映画を観てた世代だからね。あとおばあちゃんが出てくる映画に弱い。「サマーウォーズ」とか、同じディズニー / ピクサーだったら「リメンバー・ミー」はボロ泣きしちゃった。昔は夏休みに毎年、おばあちゃんちに親戚が集まってたことを思い出すの。だから「インクレディブル・ファミリー」も、家族におばあちゃんがいたらさらに最高だった(笑)。
脇役が好きなのは努力が描かれないから
──では「インクレディブル・ファミリー」の率直な感想をお聞かせください。
シンプルに面白かった! どの世代の人が観ても楽しめるし、男女関係なく誰が観ても面白い映画。この映画はキャラクターそれぞれがスーパーパワーを持ってるよね。マンガでも俺が好きなのって「ジョジョの奇妙な冒険」「HUNTER×HUNTER」とか能力者バトルを描いたもの。いろんな能力のやつが集まって戦う。それがいい。そしてやっぱり主人公はシンプルな能力なんだよね。
──Mr.インクレディブルこと一家の父ボブも“怪力”だけですね。
そうそう。敵キャラはワープホールを作り出したり、重力を操ったりするし、赤ちゃんのジャック・ジャックはいくつもスーパーパワーを持ってるのにね。でも俺はやっぱり主人公は好きじゃないんだよ。
──それはなぜでしょう?
(週刊少年)ジャンプの「友情、努力、勝利」じゃないけど、主人公は努力しなきゃ駄目じゃん。でも俺はヒーローが努力してるところを見たくないの。その点、脇役は努力してるところがあまり描かれないからいい。「SLAM DUNK」でも三井(寿)、宮城(リョータ)、「キン肉マン」でもロビンマスク、ブロッケンJr.が好きなの。だから俺は、この映画だったらフロゾンが好き。最終的にフロゾンがいい働きをするしね。「ジョジョ」の5部にもフロゾンの能力と似たようなスタンドがいたな。
──やはりマンガのキャラクターが思い出されるんですね。映画ではイラスティガールこと母ヘレンのアクションが際立っていました。
女性が外に出て、お父さんが家を守るって構図はいいよね。自分の母親は家でずっと内職をして暮らしてたの。そんな母を見て育ったから働いてる女性が好きなんだけど、家の外に出る出ないは関係なく、今は誰もがやりたいことをやれる時代になってるんじゃないのかな。それが映画にも反映されてるよね。
──アクション以外に、ボブが3人の子供の育児に悪戦苦闘するシーンもありました。
思春期ならではの悩みを抱えた娘のヴァイオレットには胸キュンしちゃった。家族の仲がいいのは本当にうらやましい。ジャック・ジャックがいろんな能力で周囲を困らせるのも、赤ちゃんならではだよね。俺も子供がすごい好きで、友達とか後輩とかの家族みんなを連れて旅行に行くの。最高で26人と。そのときは知らない子供が6人もいた(笑)。でも俺が一番子供と遊ぶの。夜の8時に寝て朝の5時に起きて、1日中子供と遊んでた。だからあのときはボブみたいにぐったりしてたね。
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手塚治虫のタッチを感じた
- 「インクレディブル・ファミリー」
- 2018年8月1日(水)全国ロードショー
- ストーリー
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彼らは、どこにでもいる普通の家族ではない。パパもママも3人の子供も、それぞれ異なるスーパーパワーを持ったヒーロー家族である。超人的なパワーを持つパパ・ボブ、伸縮自在なゴム人間のママ・ヘレン、鉄壁バリアで防御できる長女ヴァイオレット、超高速移動できる長男ダッシュ。さらに、スーパーパワーに目覚めたばかりの赤ちゃんジャック・ジャック……その潜在能力はまだ未知数だ。“家事も育児”も“世界の危機”も、驚異のスキルと家族の絆で乗り越える姿を描いた一家団結アドベンチャー。
- スタッフ
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監督・脚本:ブラッド・バード
音楽:マイケル・ジアッキーノ
- 日本版キャスト
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ボブ:三浦友和
ヘレン:黒木瞳
ヴァイオレット:綾瀬はるか
ダッシュ:山崎智史
アンダーマイナー:髙田延彦
ヴォイド:小島瑠璃子
ヘレクトリクス:サンシャイン池崎
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- 小沢一敬(オザワカズヒロ)
- 1973年10月10日生まれ、愛知県知多市出身。1998年12月に井戸田潤とお笑いコンビ・スピードワゴンを結成。2年連続で「M-1グランプリ」決勝進出を果たし一躍全国区へ。著書にはTwitterなどでの発言をまとめた「失恋出来るなら恋したってかまわない」がある。出演番組「オザワナイト」が毎週金曜深夜にTBSで放送中。毎週火曜にはMBSラジオ「アッパレやってまーす!」に出演するなど、バラエティ番組や連載など多方面で活躍を見せる。スピードワゴンとしては毎月最終月曜日に下北沢にて主催ライブを開催中だ。
2018年8月3日更新