「鳳舞伝 Dance of the Phoenix」「有翡(ゆうひ) -Legend of Love-」注目の時代劇2本の魅力をコラム&ライタートークで紐解く

「陳情令」の監督チャン・カーラムが手がけた「鳳舞伝 Dance of the Phoenix」のDVD-SET1、レンタルDVD 1~6巻が好評リリース中(U-NEXTにて独占先行配信中)。さらにチャオ・リーインとワン・イーボーが初共演を果たした「有翡(ゆうひ) -Legend of Love-」のBlu-ray / DVD SET1 / レンタルDVD1~7巻が7月6日より毎月順次リリース(U-NEXTにて独占先行配信開始)される。

映画ナタリーでは合同キャンペーンが実施されている両作のソフトリリースを記念し、ドラマの魅力に迫るコラムを展開。さらに中国ドラマに造詣の深いライター・沢井メグと林穂紅の対談をセッティングし、作品のお薦めポイントを聞いた。

文(コラム) / 沢井メグ(「鳳舞伝 Dance of the Phoenix」)、林穂紅(「有翡(ゆうひ) -Legend of Love-」)取材・文 / 金子恭未子

霊力と記憶を失ったヒロイン×愛を封印されたツンデレ貴公子

「鳳舞伝 Dance of the Phoenix」ストーリー

鳳凰真血(ほうおうしんけつ)と呼ばれる特異な血を持って生まれた少女・鳳舞(ほうぶ)は、至高の霊士・牧九州(ぼくきゅうしゅう)の魂に導かれて修行し強大な霊力を得る。しかし彼女をねたむ左青鸞(させいらん)に鳳凰真血を奪われ、胸を刺されて崖から転落。その際、異世界から来た魂が鳳舞の体に入り込む。3年後、かつての記憶も霊力も失って辺境で暮らしていた鳳舞は、霊力を取り戻すために“仙霊果(せんれいか)”を求めて“氷封森林(ひょうふうしんりん)”へ向かう途中、大陸を掌握する君武(くんぶ)一族の御曹司でかつてのいいなずけ・君臨淵(くんりんえん)と出会う。

ビジュアル&キュン度最強のカップルが物語をリード

左からシュー・カイチョン演じる君臨淵、ヤン・チャオユエ演じる鳳舞。

左からシュー・カイチョン演じる君臨淵、ヤン・チャオユエ演じる鳳舞。

「鳳舞伝」は「陳情令」チャン・カーラム監督の新作時代劇だ。舞台を変え、チャン監督はどのように愛と友情を描くのか。中国でも注目を浴びた作品である。

物語は戦いに敗れたヒロイン・鳳舞(ほうぶ)の体に異世界から別の魂が入るシーンから始まる。言わば転生ものだ。敗北により失った霊力を取り戻すべく鳳舞は動き出すが、愛を知り、自分の正体への葛藤を経て、やがて大陸の命運をかけた戦いへと挑んでいく。

異世界転生という完全アウェーの地で、前向きに生きる少女を「シークレット♡ハウス~恋の相手はトップスター!?~」主演のヤン・チャオユエが熱演。美しく、正義感があり、努力家、そして努力をしっかり結実させるヒロイン像は中国でも視聴者の共感を集めた。

その鳳舞の元許婚が君臨淵(くんりんえん)だ。当初、君臨淵は鳳舞に凄まじい塩対応をするが、胸には一途な思いを抱いていて……。訳あって愛を封印された貴公子を「旦那様はドナー」でブレイクしたシュー・カイチョンが絶妙に演じた。君臨淵のツンデレのギャップも見どころだ。

鳳舞の機転が作るテンポ良い展開、そして君臨淵の甘いルックスから繰り出されるスパダリぶり。ビジュアル&キュン度最強のカップルが物語をリードしていく。

「陳情令」キャストが集結!ストーリーに厚みを持たせる個性豊かなキャラクター

ワン・ハオシュエン演じる御冥夜。

ワン・ハオシュエン演じる御冥夜。

左からグオ・チョン演じる風潯、ガオ・ジーツァイ演じる玄奕、チェン・イーハン演じる朝歌。

左からグオ・チョン演じる風潯、ガオ・ジーツァイ演じる玄奕、チェン・イーハン演じる朝歌。

そんな本作に厚みを持たせたのがワン・ハオシュエン演じる御冥夜(ぎょめいや)だ。彼が「陳情令」で演じた薛洋と同様、闇系の役どころである。御冥夜は君臨淵と激しく対立するが、鳳舞への恋心は純真そのもの。鳳舞を思う表情は「悪役がこんなに可愛くていいのか?」と戸惑うほど温かく、見方を変えると彼は「心根の真っ直ぐな人」。そんな御冥夜の人間味が物語に深みを与えた。

ほかにもグオ・チョン(「陳情令」藍景儀役)が君臨淵の親友・風潯(ふうじん)を好演。風潯の明るく快活なキャラクターは作品随一の癒しだ。また君臨淵の継母の甥・高威(こうい)にヤオ・シューハオ(同・金子勳役)、謎めいた影刀客(えいとうかく)にフォン・ミンジン(同・温逐流役)も名を連ねるなど「陳情令」出身のキャストがしっかりと脇を固めている。

わちゃわちゃも楽しめる、尊い学園パート

「鳳舞伝 Dance of the Phoenix」

「鳳舞伝 Dance of the Phoenix」

物語の後半は一転学園ものに。授業、行事、そしてサブカップルの生真面目イケメン・玄奕(げんえき / ガオ・ジーツァイ演)と控えめな朝歌(ちょうか / チェン・イーハン演)の淡い恋模様……。一見、本筋とは関係なさそうだが、日常だからこそ描けるエピソードを通して、敵味方を問わず登場人物の心のうちが丁寧に描写された。味方はもちろん、冷酷な敵キャラも実は己の理想や大切な人のために奮闘する人間だったことが見えてきて……。後に彼らが死闘を繰り広げると思うとこの学園生活はとても尊いパートだった。

そして物語は衝撃のラストを迎える。この結末は中国で反響を呼び、どの人物の視点に立つかでラストの解釈が異なると議論された。これも「鳳舞伝」の人物描写の豊かさがなせるわざだろう。1回目の視聴はヒロイン目線で、2回目以降は視点を変え、それぞれの物語を味わいたい。

最強ヒロイン×高貴な身分を隠す世渡り上手な軽功の名手

「有翡(ゆうひ) -Legend of Love-」ストーリー

江湖の四十八門派を集めて作られた四十八寨(しじゅうはちさい)の掌門の娘・周翡(しゅうひ)は、洗墨江で謝允(しゃいん)と名乗る青年に命を救われる。彼女は恩を返そうと謝允を助けるが、彼の出現によって愛する父が自分を置いて山を降りることに。その後、修業の成果を認められ、ある任務のために初めて山を降りた周翡は思いがけず謝允と再会。2人はともに江湖に渦巻く陰謀に立ち向かうことになる。

チャオ・リーイン×ワン・イーボー、2大スター夢の初共演で最強カップル誕生!

左からワン・イーボー演じる謝允、チャオ・リーイン演じる周翡。

左からワン・イーボー演じる謝允、チャオ・リーイン演じる周翡。

乱世を舞台に、武芸者の集う砦で育った少女・周翡と謎の青年・謝允が試練を乗り越えて成長する姿をみずみずしく描くアクション・ロマンス。キュートな魅力で現代ドラマでも時代劇でも大活躍のチャオ・リーインと、「陳情令」のクールな仙師役で大ブレイクしたワン・イーボー、飛ぶ鳥を落とす勢いの2人が夢の共演! その顔面偏差値の高さはまさに目の保養、アップになるたび一時停止ボタンを押して鑑賞したくなるほど。

周翡はぶっきらぼうだが情に厚くてめちゃくちゃ強い“ヒーロー”と呼ぶにふさわしいキャラクター。大きな瞳のベビーフェイス、小柄で守ってあげたくなるようなチャオ・リーインとのギャップに萌える。

一方の謝允は、周翡を「山猿」「美人さん」「水草の精」など取っ替え引っ替え可愛いあだ名でからかいながらも大きな愛で包む。寡黙なワン・イーボーのイメージを覆す、おしゃべりで自由気まま、お茶目だが品のあるキャラクターだ。スター2人のこれまでにない魅力が花開く、新たな代表作が誕生した!

ゾクゾクするカッコよさ、ヒロインの本格アクションが炸裂!

「有翡(ゆうひ) -Legend of Love-」

「有翡(ゆうひ) -Legend of Love-」

全編を彩るアクションは絶対外せないポイント。江湖を渡る達人たちが披露する武芸の数々は見応え十分。しかも本作ではヒロインの周翡をはじめ、その母で「四十八寨」の当主・李瑾容(りきんよう)、最凶の毒の使い手・胡天瑛(こてんえい)、強大な内功の持ち主・段九娘(だんきゅうじょう)など女性たちによる本格アクションが炸裂! 周翡役のチャオ・リーインは大ヒット作「楚喬伝(そきょうでん)~いばらに咲く花~」で演じた女刺客とはまた違う、ダイナミックで痛快な刀さばきを見せてくれる。背中の刀を鞘から外す瞬間のゾクゾクするカッコよさ、気迫のこもった目力のパワーに圧倒されること間違いなし!

そんな周翡を謝允は得意の弁舌と軽巧の絶技でアシスト。ダンスで鍛えたワン・イーボーの流れるようなアクションは軽快かつ美しく、周翡ならずとも見惚れてしまう。いよいよの場面で封印している必殺技を解き放つシーンも必見だ。武術指導は「岳飛伝-THE LAST HERO-」など多くのヒット作を担当したチェン・ウェイタオ。リアリティを追求しつつ、キャラクターごとに特徴を持たせた絶品コレオグラフィーの数々を堪能したい。

しみじみと心を打つ、三代にわたる愛と成長の物語

「有翡(ゆうひ) -Legend of Love-」

「有翡(ゆうひ) -Legend of Love-」

ツンデレな周翡に軽いノリの謝允。いつもからかい合う2人だが、複雑な事情を背負う謝允を本当の意味で理解しているのは周翡だけ。自然に深まっていく主人公カップルの愛はベタベタしないが細やかで、周翡が謝允のくれた贈り物を肌身離さず持っていたり、謝允が周翡の髪を結ってあげたりといった、何げない描写がグッと来る。

出会った瞬間から惹かれあい、いざとなれば互いに背中を預け、相手のためには命も惜しまない2人の強い絆は、ヒロインの父母の代、祖父母の代それぞれが紡ぐ夫婦愛の物語とあいまって厚みのあるラブストーリーを織りなし、感動を呼ぶ。

そして三代すべてが関わる秘宝「海天一色」のありかを巡って起こる、敵対する地煞山荘(ちさつさんそう)や朝廷を巻き込んだ争いの中で、周翡やその仲間たちはさまざまな人々に出会い、友情を育み、成長をとげてゆく。最終回を見届ける頃には、周翡たちと長い冒険の旅に出たような充足感が味わえることだろう。奥深いストーリー展開は「山河令」の原作者Priest女史による原作小説と「楚喬伝(そきょうでん)~いばらに咲く花~」のウー・ジンユアン監督の黄金タッグの賜物。2度、3度と味わえば、巧妙に張られた伏線の数々、何気ないセリフに込められていた深い想いに、きっと胸が熱くなる!