「ウルフェス」の熱狂も取り入れたかった
──全10話の中で3つのチャプターが展開していくという壮大なストーリーで、第1話から怒涛の場面転換と情報量に驚きました! 各話10分強なので各チャプター30分ほどですよね。通常のテレビシリーズ1話分と同等の尺なのに、映画をまるまる1本観たかのような感覚でした。
いつも企画が動き出すときに脚本の足木淳一郎さんと僕とで、どういうことをやりたいか、どのウルトラマンを出したいかを話し合うんです。ただ2人ともプラス思考なので、情報量もプラス、プラスになってしまう(笑)。なかなかマイナスにならず、てんこ盛り状態になるので、その交通整理がいつも大変です。
──久々に登場するキャラクターの勇姿や、意外なキャラクター同士の絡みはファンもうれしいですよね。
基本的には自分たちも含めてファンの方々が見たいであろう共演や、最近スポットが当たっていなかったウルトラヒーローにスポットを当てて、彼らの魅力を再認識するという目的もあります。あれもこれもと欲張った結果、ぎゅうぎゅう詰めになってしまうのがお決まりです。そのぶん1分1秒たりとも目を離さず観ていただきたい。あと配信媒体の作品は気軽に繰り返し観られるので、いろいろ情報を詰め込んだほうが何度も観てもらえるのでは?という計算があるのも正直なところです(笑)。
──新たに加わった設定もちりばめられていますが、ファンサービス的な感覚でしょうか? 例えば「ウルトラマンフェスティバル2018」のオリジナルキャラクターとして生まれたウルトラウーマンのソラが、ウルトラマンリブットの幼なじみとして登場していたり。
足木さんは「ウルフェス」の構成も担当されていて、ソラはまさに足木さんが作り出したキャラクターなんです。思い出深いキャラクターですし、ぜひ「ウルフェス」のキャラもどんどん出しましょうという流れになりました。ファンの方々は毎年夏(に開催される「ウルフェス」)を楽しみにしているし、僕も毎年必ず参加しています。会場で感じた熱気を映像作品にも持ち込めたらと思いました。リブットとソラの関係には、ほっこりしてもらえたならうれしいです。それぞれのバックグラウンドや性格の違いも含めて、“仮面劇”ならではのウルトラマン同士のドラマを作りたいと毎回思っています。
──本作を観たことで、今まで知らなかったキャラクターやエピソードに付随して過去作を見返す人も多いのではないでしょうか。
いろいろな作品から設定を引っ張ってきていますからね。それぞれのウルトラヒーローの歴史や物語を知れば知るほど楽しめるのが「ウルトラギャラクシーファイト」なので。テレビシリーズの「ウルトラマン」とは違う視点と言いますか、「ウルフェス」や「ウルトラヒーローズEXPO」のライブアクションショーを観る感覚で盛り上がっていただきたいです。
諏訪部さんのタルタロスは想像以上
──ウルトラマン80の声はオリジナルキャストの長谷川初範さんが担当し、ウルトラマンパワードは日本語版では森川智之さん、英語版ではケイン・コスギさんが担当されました。
メインとしてフィーチャーされてセリフも多いウルトラマンは、当時のファンが観ても違和感ないように心がけました。可能な限りオリジナルキャストにお声掛けして、スケジュールを調整できた方々が参加してくださいました。長谷川さんも僕が監督した「破裏拳ポリマー」からお付き合いがあり、ちょうど「ウルトラマン80」が2020年で40周年記念でもあったので快く引き受けてくださいました。ウルトラマンマックスの中井和哉さんも出ていただけてよかった。英語版ではケイン・コスギさんが引き受けてくださったので、だったらそのまま日本語版のウルトラボイス(主に戦闘シーンなどのウルトラ戦士の声)もケインさんの声を使おうということになりました。
──ウルトラマンジャスティス役の潘めぐみさんなど、ファンだけでなくご本人も喜ばれるようなキャスティングも素敵ですね。
僕もうれしいです。声優の方々も「ウルトラマン」を観て育った人が多いので、皆さん喜んでくださるんですよ。「どんなに小さい役でもやりたい」とおっしゃる人もいますし。最終的に主役級の方々がそろって、あまりにも豪華で驚きました。
──新キャラクター・アブソリュートタルタロス役の諏訪部順一さんは「ウルトラマン」シリーズ初参加ということで、二つ返事でオファーを受けたとおっしゃっていました。
いやあ、よかったですよ! タルタロスは重要なキャラクターなので、声優さんも実力人気ともにある方にお願いしたいと気合いが入っていました。キャスティング会議で諏訪部さんの名前が挙がり、快諾してくださって。「ウルトラマン」のネームバリューすごいなと(笑)。
──タルタロスの禍々しい雰囲気と声がぴったりハマっていましたが、坂本監督はどのような印象を抱きましたか?
想像以上でした! タルタロスはいわゆる“悪ボス”ではなく、もっと上品というかスマートさがあり、それでいて迫力もある難しいキャラクターです。諏訪部さんが候補に挙がったときからこれ以上ないキャスティングだと思っていましたが、収録した音声を聴いたときは想像以上にぴったりで。おかげでタルタロスの魅力もぐっと高まりました。声優さんのパワーは偉大だなと改めて思い知らされました。
──いまだに謎が多いタルタロスですが、人を引き付ける魅力を感じます。
今回の「大いなる陰謀」は、いわばタルタロスというキャラクターの紹介編。かっこいいなと興味を持ってもらい、なんだかわからないけどもっと知りたいと気になってもらうのが目的でした。次回作も含めてタルタロスという存在が重要な役割を担っていくと思うので、楽しみにしていただければと思います。
次まで3年も待たせません!
──坂本監督からお預かりしていた質問に、先ほど諏訪部さんからお答えいただきました。「今後の本シリーズに向けて、タルタロスとして演じてみたいシーンやチャレンジしてみたいことは?」という質問だったのですが、ウルトラヒーローたちとの戦いに闘志を燃やしており、フィジカル面での強さもアピールしたいとのことでした。特に戦いたいのは、諏訪部さんが思い入れのあるウルトラマンレオだそうです。
レオがお好きなんですね! 僕と同じじゃないですか。レオと何か一緒のシーンができればいいのですが。なんせタルタロスは強敵ですからね、いったいどういう戦いになるのか。
──本作の終盤では、タルタロスのフィジカル的な強さが発揮されていました。策士なイメージが強かったタルタロスですが、今後は1対1の体当たり勝負でも活躍しそうですか?
確かに本作ではタルタロスの強さは未知数でした。物語の終盤で、ウルトラマンゼロのウルティメイトシャイニングゼロという全部乗せ状態と互角に張り合える。そこでタルタロスがどれぐらい強いのか多少伝わったと思います。タルタロスの目的などが明らかになっていく今後の展開はもちろん、戦士として強さを発揮していく過程も面白くなっていくので期待してもらいたいです。
──クライマックスの展開、そして終わり方には思わず驚きました。今後がとても気になります!
その作品単体でも楽しめるし、でもラストで続きが気になってしかたなくなる。そういう次作へのつなぎ方は海外ドラマがうまいなと日頃から感じています。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の世界観もそうですよね。「ウルトラマン」というコンテンツは、そういった世界観に対抗できるリッチなコンテンツだと思っているので、長期にわたって続けていくことが僕たちの夢なんです。中でもこの「ウルトラギャラクシーファイト」がそうなればいいなと思っています。今回のようなエンディングにするのは大きな賭けですけど、反響があれば僕らは作り続けられるので。今後も一緒にコンテンツを盛り上げていきましょう。
──確かに「大きな賭け」でもありますね。
僕の感覚では、原体験として「スター・ウォーズ」シリーズがあるんです。「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」が公開され、そのあと「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」を観に行って。最後はどうなるんだろうとワクワクしていたら、ここで終わるの!?とびっくりしたのを覚えています。だから僕の中で「大いなる陰謀」は「エピソード5/帝国の逆襲」と同じような位置付けの作品です。「スター・ウォーズ」はその後の次回作まで3年待たされましたけど、こっちは3年も待たせません!(笑)