“人救い屋”になってる(中川)
──中川さんは、映画化発表のタイミングで出されていたコメントで、剣持をダークヒーローと表現していました。関さんは剣持をどんな人物だと考えていますか?
関 正義感が強くて周りの人を救いたいと思っている一方で、自分が抱えているものには触れてほしくないと考えている人ですかね。貪欲に人助けをするヒーローの一面と、過去の経験を1人で抱え込もうとするダークな一面を持っているので、ダークヒーローというのはぴったりだと思います。矛盾しているし、自分勝手のように感じますが、そのアンバランスさはみんなが持っているもの。強さの中に弱さが見えるという意味でも、観ている方が一番共感できるのは剣持だと思います。
──中川さんは剣持を演じるにあたって弱さを意識しましたか?
中川 傷や痛みは考えていました。もっと言えば、消せない過去ですね。つらい経験をしてきたからこそ、「大丈夫だよ」と優しく手を差し伸べるだけが救いじゃないことをわかっていて、相手のためになるんだったら強引な行動もいとわない。他人のことにあれだけ首を突っ込むのってめちゃめちゃエネルギーが必要ですし、大げさでなく命を懸けて人を助けることに向き合っている男だと思います。
関 0か100かの人。ちょっとでも踏み込んだら、後戻りという選択肢はない。
中川 腹が据わっていてかっこいいですよね。痛みを知っているからこそ、他人を助けずにはいられないというのは演じるうえでのテーマでした。
──「世界を救うのはいつだって、想像力だ」が口癖の剣持は図書館を襲撃する前、岡山天音さん演じる漆原に「俺は人殺しだ」と伝えます。このときは剣持のダークな部分が出ていて、ネガティブな方向に想像力を働かせてしまっているのですが、後半ではポジティブな想像をするようになります。剣持自身が人助けを通して成長しているのはグッときました。
中川 ラジオ局電波ジャックは図書館襲撃の4年後で、その間にも剣持は定期的に人助けをしています。もう誰かを助けることが生きがいになっていて、“人救い屋”になってるんですよね。その経験を通して、4年で1つ上のステージに行ったということだと思います。
関 4年の間に何があったかは描かれませんが、落合モトキさん演じる菊池に掛けた「忘れられない過去を抱えて生きているのは、お前だけじゃない」という言葉を聞いたときに、剣持の成長を感じました。
中川 ただ、剣持は聖人になったわけではなくて。本人はうさぎの着ぐるみを被って大騒ぎしているときが楽しくて、それをするための「人助けのネタ見っけ」という感じはあります。そしてそれは彼が生きていることを実感する瞬間なんです。
声が聞こえない、視界が狭い、呼吸がしづらい(関)
──3月30日の完成披露試写会で中川さんは、うさぎの着ぐるみを被っての撮影が大変だったとおっしゃっていましたね。
中川 想像以上にきつかったです。原作を読んでいるときから「どんなうさぎなんだろう」と考えていて、もっとマスクっぽいものを想像していたんですが、しっかり着ぐるみでした(笑)。
関 重たかったですね。図書館襲撃の撮影では大志くんがうさぎの着ぐるみを被って何往復もしているのを見ていたんですが、そのあとのラジオ局のパートでは私も被って。声が聞こえない、視界が狭い、呼吸がしづらいの三重苦で……そこで本当にしんどいんだなと思い知りました。
中川 次の日は首にきましたね……。そのリアルな大変さが映像に出ているのはいいことだと思っています。妙にできすぎていても違和感があると思うので。
関 タクシーからうさぎがぴょこぴょこ降りてくるシーン、よかったですよね。シュールだなあと。
中川 なかなか降りてこないんですよね(笑)。あそこは注目してほしいです。
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