中国ドラマ「長相思」特集 | 最旬イケメン俳優たちの魅力を大解剖!中国で“推し選び”が過熱したロマンスファンタジー時代劇 (2/2)

ドン・ウェイはかっこいいだけじゃなく、虐げられるさまもハマっている(島田)

──次に「溺愛系見守り男子」こと葉十七ようじゅうしち / 塗山璟とざんけいを演じたドン・ウェイ(鄧為)の紹介を、島田さんお願いします。

島田 璟は九尾孤きゅうびこの末裔で凄腕の商人として名を馳せ、碁や琴の名手、実は防風意映ぼうふういえいといういいなずけがいる塗山氏の族長候補。兄の塗山篌とざんこうの憎悪を受けて生死をさまよっていたところ、玟小六びんしょうりくに助けられます。そして、傷だらけで人とも思われないような存在であった自分に葉十七という新しい名前を与え、温かく愛情をもって接してくれた小六に深い恩義を感じ、少しずつ心を開いていくように。やがて小六が女性だと気が付くと、自然と彼女に思いを寄せるようになる……という、内向的で愛情深く、純粋な心を持ったキャラクターです。十七 / 璟に惹かれるポイントとしては、小六 / 小夭しょうように対する従順さ、一途な愛、優しさが視聴者のときめきを刺激したのではないかと思います。強かな一面もしっかりあって、璟として身分が戻ると商人らしい計算高さも見せる奥深い人物でもあります。十七として小六たちと暮らす日々はとても自由で、観ていて幸せを感じました。小六のあとを従順にくっついて歩くシーンやおんぶのシーンなど、思わず構ってあげたくなる健気なかわいらしさを爆発させる一方で、小六 / 小夭に接触する男性に対しては、露骨に嫉妬心や敵対心をあらわにして、勝ち気な一面を見せるのも面白かったです。恋の初々しさ、ささいなことですれ違うところとか、ときめきがありましたね。

「長相思」より、ドン・ウェイ(鄧為)演じる葉十七(ようじゅうしち)

「長相思」より、ドン・ウェイ(鄧為)演じる葉十七(ようじゅうしち)

沢井 かわいいですよね! 子犬っぽくて。

島田 今回のドン・ウェイは、まさに九尾孤の末裔キャラに相応しい“神仙顔”でしたよね。今までに見たことのないほどの清らさかを持った貴公子の佇まい。そしてどこかはかなげで、かっこいいだけじゃなく、虐げられるさまもハマっていると思います。ジャン・ワンイー(張晩意)は目力、ドン・ウェイはウルウルの涙目に心をつかまれる。そこが彼の強みかなと思います。私は現代劇の「リミット・ラブ~命短し恋せよオトメ!~」の印象が強かったのですが、ドン・ウェイは時代劇のほうがより魅力が引き立つのではないでしょうか。時代劇での活躍を期待する声は今後も続くように思いますね。

小酒 ドン・ウェイって「リミット・ラブ~命短し恋せよオトメ!~」に出ていた子だったと、あとから気付きました。時代劇のほうがより彼の魅力が引き立つのかもしれませんね。2023年の「千紫万華せんしばんか重紫ちょうしに捧ぐ不滅の愛~」「長月輝伝ちょうげつきでん~愛と救世の輪廻~」、それと本作でキラキラの貴公子役を演じて一気にブレイクしました。

「長相思」より、左からヤン・ズー(楊紫)演じる小夭(しょうよう)、ドン・ウェイ(鄧為)演じる塗山璟(とざんけい)

「長相思」より、左からヤン・ズー(楊紫)演じる小夭(しょうよう)、ドン・ウェイ(鄧為)演じる塗山璟(とざんけい)

タン・ジェンツー演じる相柳はヤンデレを超えたこじれっぷり(沢井)

──沢井さんには「俺様系ヤンデレ男子」こと相柳そうりゅうを演じたタン・ジェンツー(檀健次)について、プレゼンをお願いします。

沢井 相柳は九頭蛇きゅうとうだという9つの頭を持った妖族。これだけこじれた男子は珍しいというか、ヤンデレを超えたこじれっぷりなんです。相柳が小六に心を開きかけるシーンは何度もあるんですが、そのたびに小六がけんこと西炎瑲玹せいえんそうげんなり十七こと璟の話をポロッと出して相柳は怒っちゃう。容姿が美しくて独占欲もあっていいなと思うんですが、小六への攻撃性を見ると最悪な人だなという印象を受けます。でも、物語が進むにつれて彼の内面を知ると納得できると思いますよ。あまり深い内容には触れられないのですが、小六 / 小夭と積み重ねてきた出来事がすごく魅力的に感じられて、あとからグッときます。フッと笑みをこぼす場面だけでも、序盤と終盤では意味合いが変わってくるので、そういうところも注目して観ていただけたら。

小酒 かっこいいんだけれども、九頭蛇としての怖さもちゃんとあるんですよね。そして、好きになってはいけないという怖さも。

沢井 タン・ジェンツーは「猟罪図鑑 ~見えない肖像画~」でかわいらしいイメージがあったんですが、この「長相思ちょうそうし」では冷徹で俺様なキャラクターを演じていて、ビジュアルだけでなく俳優としても彼の評価が上がった気がします。

「長相思」より、タン・ジェンツー(檀健次)演じる相柳(そうりゅう)

「長相思」より、タン・ジェンツー(檀健次)演じる相柳(そうりゅう)

島田 タン・ジェンツーはいわゆる“闇堕ち”のイメージが強かったのですが、それが昇華されたというか、ここまで美しいキャラクターにできたのは素晴らしいなと思います。今回は2役も演じていますし、OST(オリジナルサウンドトラック)でもヤン・ズー(楊紫)とともに活躍していて、彼の多彩な魅力が詰まっているなと感じました。

私は一番に豊隆をお薦めしたい!(島田)

──ワン・ホンイー(王弘毅)演じる「爽快系サポート男子」こと赤水豊隆せきすいほうりゅうについてはどう思われますか? 4者4様のイケメンたちがそれぞれの立場でヒロインと恋愛模様を繰り広げることで「長相思」版“F4”とも表現されています。

島田 お育ちもよくて心持ちもすこぶるいい、賢くて忠実で、責任感、向上心、義理堅さもあって……。もうどこにも欠点がない(笑)。4人の中で誰を選ぶか迷っていたら、私は一番に豊隆をお薦めしたい!

小酒 わかります! 理想の夫のタイプですよね。結婚するならすごく条件がいい。

沢井 ほかの3人はなかなかに個性が強いので、豊隆にも何かしらのとがっているところがあるんだろうなと思いながら観ていたら……めっちゃいいやつだった(笑)。

「長相思」より、ワン・ホンイー(王弘毅)演じる赤水豊隆(せきすいほうりゅう)

「長相思」より、ワン・ホンイー(王弘毅)演じる赤水豊隆(せきすいほうりゅう)

小酒 ちょっと思ったのは、賢いんだけれど、女心がわからないのが唯一の欠点。

沢井 そうですね。でも仕事上では察しがよくて鋭いけれど、プライベートでは女性に慣れていないところのギャップがたまらない。

小酒 物語の後半ではけっこう登場シーンもあって見どころもあるので、ワン・ホンイーの演技にも注目して観ていただきたいですね。

島田 本当に魅力的なキャラクターでしたし、演じるワン・ホンイーにも惹かれました。

白髪のタン・ジェンツーは眼福である(沢井)

──中国では「長相思」にまつわる“推し選び”が過熱し、SNSでもたびたびトレンド入りしていました。

小酒 キャラクターの人気ランキングの結果はリサーチ会社ごとに違いが出るものですが、この作品で1位・2位の人気を争っていたのは間違いなくタン・ジェンツーの相柳とドン・ウェイの璟。どうしても3位になってしまうのが、ジャン・ワンイーの瑲玹(笑)。これは作品におけるポジション的にしょうがないんですけど。物語が進むにつれてそれぞれの登場人物の見どころシーンがあって、小夭の思いも変化していくので、継続的に推し選びが盛り上がったんじゃないかな。

「長相思」より、ドン・ウェイ(鄧為)演じる塗山璟(とざんけい)

「長相思」より、ドン・ウェイ(鄧為)演じる塗山璟(とざんけい)

「長相思」より、左からヤン・ズー(楊紫)演じる玟小六(びんしょうりく)、タン・ジェンツー(檀健次)演じる相柳(そうりゅう)

「長相思」より、左からヤン・ズー(楊紫)演じる玟小六(びんしょうりく)、タン・ジェンツー(檀健次)演じる相柳(そうりゅう)

島田 過去の出来事から添い遂げられる存在を求めていた小夭には、まっすぐ思いを伝える璟が大切な存在になっていくので、やはり璟というキャラクターを応援するファンは多かったと思います。ドン・ウェイはこの作品で注目を集める存在になって、現地のネット記事で報じられた95后(1995年から1999年生まれ)の男性俳優の古装男子ランキングでは、ワン・ホンイーやシュー・カイ(許凱)らを抑えて堂々の1位を獲得していました。それくらい、今回はハマり役だったのかなと思います。

沢井 相柳は美しすぎて「形容できない」「絶世の美人」と表現されていました。2023年・2024年の美しすぎる白髪キャラクターランキングでもトップに食い込んでいます。白髪のタン・ジェンツーはもう美しくて色っぽくて、見ているだけでハッとさせられるというか。眼福であるなあと思います。

──こだわりのセットについても教えていただけますか。ドラマ前半の舞台となる清水鎮せいすいちんのセットは設計に6カ月、建設に7カ月を掛けて約2万㎡の敷地に50棟以上が建築されています。

小酒 あそこまでのセットを一から作るのはすごい。「長相思」はやはり期待とお金を掛けた大作なだけある。小夭と瑲玹のシーンでよく出てくる鳳凰樹ほうおうじゅの赤い花もCGではなくちゃんと作られた小道具なんです。回春堂かいしゅんどうの部屋の様子も細かいところまでよく作り込まれているなと思います。クオリティの高さを感じさせますよね。

「長相思」より、ヤン・ズー(楊紫)演じる小夭(しょうよう)

「長相思」より、ヤン・ズー(楊紫)演じる小夭(しょうよう)

島田 相柳の貝殻の家もすごいですよ。クールなイメージとは裏腹に、かわいいところに住んでいるなあと(笑)。

小酒 水中のシーンも素敵です。あれはワイヤーを使って撮影しているんですよね。ハリウッド映画の「アクアマン」と同じ技術を駆使しているそうです。

島田 衣装も国ごとに寒暖差を感じさせるような細かい演出がありました。温暖な皓翎国こうれいこくでは明るい色合いの薄い衣をまとい、雪が降る西炎国せいえんこくではダークな色調で、モフモフ付きの重厚感のある外衣を羽織っていたり。

沢井 それぞれの国でカラーというか、特徴が反映されてますよね。それにセットなのかCGなのか、違和感なく楽しめたのでそういう意味でも没入感があるなと思います。

島田 CGで描かれたかわいいキャラクターも2体ちょこちょこ出てきましたよね。相柳に仕える毛球もうきゅうが特に人気を集めたようです。

「長相思」は中国ドラマが初めての方でもスッと世界観に入ることができる(沢井)

──「長相思」は魅力的なキャラクターが登場するロマンスファンタジー時代劇ですが、どのような方にお薦めでしょうか。

小酒 ラブストーリーというだけでなく国盗り合戦のストーリーでもあるので、大河ドラマが好きな方にもお薦めです。ファンタジー要素はありながらも控えめ。逆にそれがすごくよくて、その分人間ドラマにフォーカスされている。ファンタジー時代劇が苦手という方でも観やすいと思います。

島田 神族、妖族といった架空の種族が登場しますが、見た目は人間と同じ形態をとって共存している世界観なので、キャラクターに親しみやすく、「ファンタジーはちょっと……」と思っている方でも物語が入ってきやすいかな、と。小酒さんがお話しされたように、ロマンスファンタジーというだけではなく、家族のつながり、友情、成長なども見どころ。幅広い層に楽しんでいただけるドラマなのではないでしょうか。

「長相思」より、左からヤン・ズー(楊紫)演じる玟小六(びんしょうりく)、ジャン・ワンイー(張晩意)演じる西炎瑲玹(せいえんそうげん)

「長相思」より、左からヤン・ズー(楊紫)演じる玟小六(びんしょうりく)、ジャン・ワンイー(張晩意)演じる西炎瑲玹(せいえんそうげん)

沢井 中国史の知識が必要でもなく、ものすごく設定が細かいわけでもない。「長相思」は大作だけれども設定は意外とシンプル。予備知識として覚えておいていただきたいのは、人間だけでなく神族や妖族が住んでいる世界であること、劇中の時間の流れが私たちの思う時間の流れと違うこと、3つの国が対立していることくらい。中国ドラマが初めての方でも、ファンタジー時代劇が初めての方でもスッと世界観に入ることができると思います。

──物語の後半パートについてもお聞かせください。

小酒 やっぱり小夭が誰と結ばれるのか、波乱万丈なラブストーリーの行方が大きな注目ポイントだと思います。タン・ジェンツーが演じるもう1人のキャラクター、防風邶ぼうふうはいも重要な人物なので、こちらも見逃せません。

沢井 小夭と結ばれなかったキャラクターの結末もぜひ見届けていただきたいです。

島田 最後まで自分の推しを信じる思いで観るのが一番だと思います! ぜひじっくりと楽しんでください。

中国ドラマ「長相思」第1話特別公開中

プロフィール

沢井メグ(サワイメグ)

大学時代に中国近代文学と出会い上海に留学。2010年上海万博日本館での勤務を経てライター / 翻訳者となる。中国・台湾エンタメや文化を中心にCinem@rtなどのWeb媒体や「ハマる人続出!定番作から新作まで 中国ドラマガイド」、「見るべき中国時代劇ドラマ」などで執筆。訳書にルアン・グアンミン「用九商店」、毎日青菜「DAY OFF」ほか。

小酒真由子(コサカマユコ)

映画界・出版界での会社勤めを経てフリーライターに。雑誌「月刊スカパー!」や「見るべき中国時代劇ドラマ」「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」「華流ドラマガイド」などのムック本、Cinem@rtなどのWeb媒体でアジアから欧米までドラマについて執筆している。

島田亜希子(シマダアキコ)

ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆するほか、中文翻訳もときどき担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「アジア俳優名鑑」「中国エンタメニュース」を連載中。「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」(キネマ旬報社)、「見るべき中国時代劇ドラマ」(ぴあ)などにも執筆している。