ドラマ「チェルノブイリ」 PR

ドラマ「チェルノブイリ」特集|Rotten Tomatoesで視聴者評価98%!未曾有の原発事故描く実録ドラマ

1986年4月26日にソビエト連邦のチェルノブイリ原子力発電所で起きた事故を描くドラマ「チェルノブイリ」が、9月25日よりスターチャンネルで放送される。「ゲーム・オブ・スローンズ」で知られるアメリカの放送局HBOが製作した本作は、IMDb(インターネット・ムービー・データベース)のレビューで9.5点、映画評論サイトRotten Tomatoesの視聴者評価では98%(どちらも2019年9月10日時点の数値)という高い評価を獲得した。

このたび映画ナタリーでは「チェルノブイリ」の特集を展開。事故発生から収束までの過程、被害拡大を食い止めようとした人々の苦悩、政府による事態の隠蔽などを今だから描ける真実とともにリアルかつドラマチックに映像化した、一級のエンタテインメントである本作の見どころを紹介する。

文 / 平野彰

圧倒的リアリズムで描かれる 未曾有の大惨事

スターチャンネルが“忖度”なしで贈るサスペンス

ドラマ「チェルノブイリ」は2019年5月上旬よりアメリカ、ヨーロッパで放送された。世界初の被爆国に住み、東海村JCO臨界事故や福島第一原発事故といった原子力事故を経験してきた日本人にとって、このドラマはあまりにも生々しく感じられるだろう。

海外ドラマファンの間で、いつ日本で放送されるのか?という期待が高まってはいた。しかし3.11以降、深刻な原発事故のいわば“当事国”となった日本で、放射線被曝の症状などを克明に描いたこのドラマが放送されることがあるのだろうかという一抹の不安があったことも否めない。このようなセンシティブなテーマを扱ったドラマを放送できる局は日本にあるのか。過剰な“忖度”が働くのではないか。結果的に、そのような心配は杞憂に終わった。「チェルノブイリ」は9月25日から映画専門チャンネル・スターチャンネルで放送され、翌26日よりAmazon Prime Videoチャンネルの「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」にて配信される。

本作がアメリカで支持され、今年の第71回プライムタイム・エミー賞で19ものノミネートを果たしているのは、ソ連崩壊の最大の原因という説もある重大事故とその余波を受けた人々の物語が、一種のサスペンスエンタテインメントとして昇華されているからだろう。監督のヨハン・レンクが過去に手がけた「ブレイキング・バッド」もそうであったように、観始めると止まらないのだ。

ウソの代償とは?巧みに紡がれた衝撃の全5話

「チェルノブイリ」第1話
「チェルノブイリ」第2話より。左からボリス・シチェルビナ(ステラン・スカルスガルド)、ヴァレリー・レガソフ(ジャレッド・ハリス)。

第1話「1時23分45秒」は、核物理学者ヴァレリー・レガソフの「ウソの代償は?」という言葉から始まる。特に衝撃を受けるのは、地元プリピャチの住民がある橋から事故後の発電所を見物するシーンだ。人々は不思議な光を発する発電所に「美しい」と見とれるが、その体には“死の灰”が降りかかっている。

第2話「現場検証」では、ソ連閣僚会議副議長ボリス・シチェルビナとレガソフが現場に急行。レガソフが原子炉の仕組みをシチェルビナに簡潔に説明するシーンが、そのまま視聴者に対する説明にもなっているあたりがうまい。

「チェルノブイリ」第3話より、ウラナ・ホミュック(エミリー・ワトソン)。
「チェルノブイリ」第4話より。左からバチョー(ファレス・ファレス)、パベル(バリー・コーガン)。

第3話「KGB」は、全話の中でもっとも痛ましい描写を含む回である。事故現場の消火活動に当たった消防士をはじめ、被曝した人々の肉体を急性放射線障害が襲うのだ。

第4話「掃討作戦」では、汚染地域からの避難を余儀なくされる住民の姿や、ゴーストタウンと化した街が映し出されていく。3.11を経た日本人に対して、このシークエンスはデジャヴュを見るような感慨とショックをもたらすはずだ。映画ファンとしては「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」のバリー・コーガンが出演していることも見逃せない。

「チェルノブイリ」第5話

そして最終話となる第5話「真実」では、なぜ事故は起きたのか?という問いへの1つの答えが提示される。レガソフによる告発は、今は存在しないソ連という国家だけに向けられたものではない。事故さえ起きなければ世界に知られることもなかったであろう「チェルノブイリ」という地名をタイトルに冠するこの短いドラマは、重い余韻を残したまま静かに終わる。

ドラマを支える多国籍なスタッフ、キャスト

ここで、この重厚なドラマを支えたスタッフとキャストにも触れておこう。撮影を担当したのは、映画「テルマ」などを手がけたスウェーデン出身のヤコブ・イーレ。プロダクションデザインを、現在撮影中の「ゲーム・オブ・スローンズ」前日譚にも携わるルーク・ハルが手がけた。音楽は映画「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」で知られる、アイスランド出身のヒルドゥル・グーナドッティルが担当。彼女は本作のロケ地である廃炉となったリトアニアの原発に赴き、そこで録音した素材を楽曲の一部として取り込んだ。

熟練の演技アンサンブルを見せる3人のメインキャストは、レガソフ役のイギリス人俳優ジャレッド・ハリス、シチェルビナ役のスウェーデン人俳優ステラン・スカルスガルド、実在した複数の科学者を組み合わせて創造されたウラナ・ホミュック役のイギリス人女優エミリー・ワトソン。スカルスガルドとワトソンはラース・フォン・トリアーの「奇跡の海」で共演した間柄であり、ハリスは2人との共演を「2人ともとても愉快で、地に足が着いていて、エゴが衝突するようなことは一切なかった。相手と張り合うのではなく、互いにベストを尽くしてこの作品に向き合っていたよ」と振り返っている。

前提知識は不要、すべての人に開かれた物語

「チェルノブイリ」第5話

劇中にはいくつかの見慣れない用語が登場し、原子力についての専門的な話題も出てくる。しかし登場人物の言動をしっかりと追っていれば、専門知識はほぼ必要ないと言って差し支えない。あるいは、ドラマを観たあとでチェルノブイリに関連した資料に触れてもいいかもしれない。スベトラーナ・アレクシエービッチによる被災者へのインタビュー集「チェルノブイリの祈り 未来の物語」(岩波書店刊)、ピアズ・ポール・リードによるノンフィクション「こうして原発被害は広がった 先行のチェルノブイリ」(文藝春秋刊)は、本作の脚本家クレイグ・メイジンが参考にした書籍だ。

仮に日本での放送・配信が行われるとしても、2020年以降になるのではないかと思われた「チェルノブイリ」。「広告に依存しない」という強みを持つスターチャンネルが早々に本作の放送・配信を決定したことを、1人の映画・ドラマファンとして喜びたい。