「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」特集|“オレ様王子”なピーター・ホーと“聡明なヒロイン”ハー・ホンシャンが政略結婚で手に入れた夫婦愛とは?ライター対談で深掘り (2/2)

正統派イケメンから腹黒系まで…こんなところにホアン・ヨウミン!(沢井)

──ブロマンス時代劇の人気作「山河令」にも出演していたホアン・ヨウミン演じる呂北逸は、この作品の推進力になるキャラクターだったように思います。彼についてはいかがでしたか?

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、ホアン・ヨウミン演じる呂北逸。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、ホアン・ヨウミン演じる呂北逸。

小酒 普通の医者役かと思ってたら、いきなり華麗なワイヤーアクションをし始めて、武侠ドラマばりに強かったですよね?(笑) それが彼のファンならぐっとくるところであり、ツッコみたくなるポイントでもある。

沢井 私は「山河令」のパイセン(こと葉白衣)の役のイメージが強かったので、普通に受け入れてました(笑)。

──アクションが見られるのはファンとしてはうれしいですよね。

小酒 アクションではピーター・ホーより活躍してましたもんね。私がホアン・ヨウミンを初めて見た「金蘭良縁」の頃は、まだやんちゃでかわいいイメージだったんです。それが近年どんどん一筋縄ではいかないキャラを演じるようになって、時代劇のヒット作にすごくよく出ている。「悪役なのかな、いい人なのかな」とぱっと見ではわからないポジションになっているのもいいと思います。このドラマでも、最初は文武両道のヒーローに見えていたのが、だんだんと変わってくるので、そういうキャラがハマる俳優になってきたんだなと思いました。

沢井 正統派イケメンの役からかわいい系、腹黒系までなんでも演じられる方で、時代劇を観てたら「こんなところにホアン・ヨウミン!」みたいな感じでよくいますよね。今回はなんて不遇な人なんだろうという同情から始まって、ずっと駱青蓮を一途に思い続ける清い青年なのかなと思っていたら、おやおや?となる。でも郡主の賀元雪がげんせつとの出会いによって、救いようのない闇落ちがなかったのはほっとしました。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、ホアン・ヨウミン演じる呂北逸。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、ホアン・ヨウミン演じる呂北逸。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、グワン・シュエイン扮する賀元雪。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、グワン・シュエイン扮する賀元雪。

小酒 呂北逸にとっては“末代まで”賎民というのが、私たちが思う以上に重いんだろうなと。自分だけの名誉じゃなくて一族の名誉を回復しないといけないから……。

沢井 個人としての駱青蓮との幸せじゃなくて、家を選んだっていうのも時代劇ならではの価値観だなと思いました。

ヒロインのライバル役、ホアン・シェンイーとシア・ナンにも注目

──そのほかのキャラクターについても伺いたいです。賀連信と権力争いをする兄弟たちで印象的な人物はいましたか?

沢井 世子の賀連儲がれんちょが印象的でした。狩りに出る前、震えながら父の安王に「中止にしたほうがいい」と訴えるシーンで、ようやくこの人が見えてきた。ほかの兄弟が権力争いをしている中で、地位を脅かされる側の立場だと思うんですけど、それがわかりながらも自分の責務を考えてるのかなと思いました。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、リー・ジンロン演じる世子の賀連儲。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、リー・ジンロン演じる世子の賀連儲。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、シェン・タイ演じる第四子の賀連修。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、シェン・タイ演じる第四子の賀連修。

小酒 私は、賀連信のライバルになる賀連修はずる賢く見えて、彼にも彼なりのがんばりと考えがあったし、奥さんのことを愛していたんだなと思いました。陰謀をやり合っているときは主人公カップルを応援しつつも、観終わってみたら真に悪い人はいなくて、誰も憎めない……! 争わず平和でいたいけどそれが許されない環境だったのかなと、終盤しみじみと感じましたね。ライバルだけど、血のつながった兄弟としての意識もちゃんとあったと思います。

──彼らを取り巻く女性陣も魅力的なキャラクターが多かったように思います。

沢井 濃かったですね!

小酒 ホアン・シェンイー扮する賀連信の側室・慕海瑶ぼかいようは、最初にわかりやすくヒロインの敵になりますけど、賀連信のことが好きだから彼に認めてもらいたいと思っていて、人間味を感じました。すごい悪役っぽいけど、こちらも心の底からは憎めないキャラクター。中国では女性の脇役キャラの中で彼女が一番人気があった気がします。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、ホアン・シェンイー演じる慕海瑶。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、ホアン・シェンイー演じる慕海瑶。

──どういったところが受け入れられたのでしょうか?

小酒 女優さんの人気もあると思うんですけど、カリスマ性があって序盤かなり話題を持っていきましたからね。

沢井 海瑶夫人は「20年前の私のことを好きだった旦那様に会いたいわ」と言っていて、“いろんな出来事を起こすことにつながるのはその執着心だったのか”と思いました。

小酒 賀連信に嫌われたくないあまりにちょっとごまかしたことが、大事になっちゃう。しかも、賀連信は駱青蓮にぞっこんになるじゃないですか。ほかの妻たちが逆にかわいそうになってきて(笑)。ほかの作品に比べてこのドラマに出てくる女性たちは、政略結婚だと割り切っているというより、ちゃんと賀連信のことが好きなんです。

沢井 これは「恋心は玉の如き」との違いかもしれないですね。

小酒 それだけ賀連信がモテるキャラだったとも言えますね。あとは、南如珍なんじょちん役のシア・ナンもよかった。彼女は「安楽伝」で正義感のある女将軍の公主、「永安夢~君の涙には逆らえない~」ではヒロインの優しいお姉さんを演じている。「恋心が芽吹く頃」では妖艶でかなり手強い敵役だったので、作品ごとに全然違うイメージです。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、シア・ナン演じる南如珍。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、シア・ナン演じる南如珍。

──正直このドラマの中で一番怖かったです。

沢井 ですよね。海瑶夫人が去って平和が来るかと思ったらもっとすごい人が来て、どうなるの!?と思いました。

お勧めの視聴シチュエーションは…「みんなでワイワイ」(小酒)、「イッキ見」(沢井)

──さまざまな要素がある本作ですが、どんなシチュエーションで観るのがお勧めですか?

小酒 賀連信のキザなセリフなどツッコめるところもあったので、そういう意味では誰かと一緒にワイワイ観たら楽しいだろうなと思いました。

沢井 ストーリーに着目すると、イッキ見できる作品だとも思います。陰謀に次ぐ陰謀に、駱青蓮が切り込んでいくのを見ていると先が気になるので。あとは個人的な感覚かもしれませんが、ミニ宮廷ドラマということで、お昼下がりにまったりしながら1日2、3話ずつ観たい気持ちもあります(笑)。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、ピーター・ホー演じる賀連信(後方)とハー・ホンシャン扮する駱青連(前)。

中国ドラマ「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」より、ピーター・ホー演じる賀連信(後方)とハー・ホンシャン扮する駱青連(前)。

小酒 初心者の人でも観やすいかもしれないですね。歴史がベースでも、ドラマ内で起こることはわかりやすいですし。

沢井 ドロドロ系の少女マンガが好きな人や、政略結婚ものを読む方にもお薦めしやすいかも。舞台が中国ですけど、あなたにも刺さりますよ!と。

小酒 今、大河ドラマ「光る君へ」を観ている人にもいいかも! 最初に好きだった人と結ばれず歳の差結婚をしますしね。

──逆に、普段から中国ドラマを観ている方にはどう薦めますか?

小酒 宮廷ドラマ好きの方や、「瓔珞」とかが好きだった方にはお薦めしたいですし、「宮廷の諍い女」と比べながら歴史と重ね合わせて観る面白さもあるかもしれません。中国ドラマでおなじみの俳優がたくさん出ているので、「この前のドラマと全然違う役だ!」と楽しむのもいいと思います。

沢井 私は、最近の軽めのラブ史劇や古装劇に親しんでいる方には、主人公カップルと2番手男子の関係性が新鮮かもしれないのでお薦めです。(主人公たちに)恋心が芽吹いたときは「やった!」となりました。それまでに関係性の丁寧な積み重ねがあったから、このカップルをいつの間にか応援できたんだと思います。

「恋心が芽吹く頃~Blooming Days~」第1回特別公開中

プロフィール

小酒真由子(コサカマユコ)

映画界・出版界での会社勤めを経てフリーライターに。雑誌「月刊スカパー!」「見るべき中国時代劇ドラマ」「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」などのムック本、Cinem@rtなどのWeb媒体でアジアから欧米までドラマについて執筆している。

沢井メグ(サワイメグ)

大学時代に中国近代文学と出会い上海・同済大学に留学。2010年上海万博日本館での勤務を経てライター / 編集者となる。中国・台湾エンタメや文化、時事ニュースなどを中心に記事を執筆、翻訳。主な訳書にルアン・グアンミン「用九商店」シリーズ、毎日青菜「DAY OFF」がある。