「バースデー・ワンダーランド」原恵一(監督)×松岡茉優(アカネ役)×イリヤ・クブシノブ(キャラクター / ビジュアルデザイン)|“普通の女の子”を生み出した声と画の力 / ここでしか見られない松岡茉優の似顔絵も!

人生の中で一番楽しい仕事だった!(イリヤ)

──先ほどイリヤさんが2年前は今ほど日本語を話せなかったというお話がありましたが、まさに制作期間中はスムーズにコミュニケーションが取れなかったということですよね。言葉の面で苦労があったのでは?

「バースデー・ワンダーランド」

 でもイリヤは理解力が高くて、僕のつたない英語から大きなことをつかんでくれるので。ストレスを感じたことはありませんよ。

イリヤ 原さんが写真やイラスト集をいっぱい見せてくれたから、こういう感じにすればいいんだとイメージが伝わってきやすかったです。あとは画を描けば言いたいことがお互いに一発で伝わりました。

──確かに言葉より画のほうが伝わるものが大きそうですね。イリヤさんはイラストレーターとして活躍されていましたが、映画のキャラクタービジュアルを手がけるのは初めてでした。“大抜擢”とも言えるオファーを受けて自分でも驚かれたのでは?

イリヤ ずっとアニメを作りたいという夢がありました。だから「来たか!」って。イラストを描くのも好きだけど、ストーリーのある作品が好きなのでアニメもやってみたかったんです。経験はないけど、一生懸命がんばりたいと思いました。

「バースデー・ワンダーランド」

 彼がすごいのは、人物だけじゃなく背景を含むすべてを自分でできるんです。最初はキャラクターデザインだけのつもりだったけど、試しに異世界の設定を描いてもらったら面白いデザインが上がってきて、イリヤの潜在能力に気が付いた。だから最終的に“向こうの世界”の景色、小道具、メカニックなどもほぼイリヤにやってもらいました。こんなに大変で重要な仕事、初めてアニメに参加する人に頼むことじゃないんです。でも描かせたら予想以上のものが返ってくるし、ストーリーの中でそれがどういう役割を果たすのかまで、彼はわかっていました。非常にやりやすかったですよ。楽しかったね。イリヤと仕事するの。

イリヤ 楽しかったねー、本当に。人生の中で一番楽しい仕事だった!

「バースデー・ワンダーランド」

──イリヤさんの画集を見た原監督が、絵に惹かれてオファーされたんですよね。

 そう。見た瞬間に「あ、これだ」と思って。ちょうどキャラクターデザイナーをどうするか決めかねていたときに彼の画集と出会ったんです。プロのキャラクターデザイナーやマンガ家さんとかも考えていたんですけど、イリヤの絵を見て「これしかない」と。

左から原恵一、松岡茉優。

松岡 素敵です! ……あの、監督。自分で言うのは恐縮ですし、監督は嫌かもしれませんけど。

 何?

松岡 怒らないでくださいね……? 私に似てるなって思いました。アカネの顔が。

 はははは! やっぱり目なのかな。

「バースデー・ワンダーランド」ポスタービジュアル

松岡 私が小学生のときに似ているかもと思っちゃって。こんなにかわいくなかったですけど。この間のジャパンプレミアのときにも、市村(正親)さんと杏さんが、特にポスタービジュアルのアカネに似ていると言ってくださったんです。それに原監督の今までの作品で見たことのないテイストがありますよね。色彩や見た目の華やかさで海外の方にもすんなり受け入れてもらえる作品だと思うし、イリヤさんの母国であるロシアの方々にも観てもらいたいですね。

──「やりやすかった」とおっしゃっていましたが、言葉以外の面で困難はありましたか?

イリヤ 最初はありました(笑)。僕が自分の個人イラストと同じように描いてみたら、ヘアスタイルやファッションが不自然になってしまって、原さんが「これは普通の子ではないですね」って。アカネは普通の12歳の女の子ですから。自然なヘアスタイルってどんなだろうって考えました。

「バースデー・ワンダーランド」

 12歳の女の子って微妙な年頃なので。大人っぽい子もいれば、子供っぽい子もいる。そういうどっち付かずの年頃だというのを表現したかったんです。だからアカネのイメージに近い子役や女優さんの写真をいろいろ見せて、最終的にこのデザインになりました。

イリヤ アニメのキャラクターってデフォルメされたビジュアルが多いので。「バースデー・ワンダーランド」では現実に近いキャラクターにすることが大事でした。

 普通が一番難しいからね。

“原世代”ってすごく広い(松岡)

──ワンダーランドを冒険する壮大な物語であっても、あくまで主人公が“普通の子”であるところに原監督らしさのようなものを感じました。

松岡茉優

松岡 私は小学生のときに「クレヨンしんちゃん」の映画を、中学生のときに「河童のクゥと夏休み」を観て。歳を重ねていくうちにほかの作品も観ました。そう考えると“原世代”ってすごく広いと思います。

──同じ作品でも、子供の頃と大人になった今で感じ方が変わることもありますよね。

松岡 小学校低学年だったとき、「オトナ帝国」のしんちゃんが階段を駆け上がるシーンで泣きました。今観ればしんちゃんの気持ちを理解したうえで理性的な涙を流すでしょうけど、当時はなんで自分がこんなに泣いているのかわからなくて。整理のつかない感情のあふれ方だったんです。「たくさん泣いてください」みたいな宣伝の映画ってどこか信じられないけど、原監督の作品に関しては感情を説明できないから「泣いた」と表現するしかなくて。監督の作品を観ると、しんちゃんが走る姿にボロボロ泣いたときの気持ちを取り戻せる気がするんです。監督の作品を観るたび、あの気持ちになれる。それが監督から私たちへの“贈り物”だなと思います。

原恵一

 「バースデー・ワンダーランド」のジャパンプレミアで松岡がお客さんにクライマックスのシーンを熱く語ってくれたのが俺はものすごくうれしかったよ。あそこで流れる曲を歌うmiletさんも実は「河童のクゥと夏休み」が好きだったみたいで。毎回そうだけど、今回もいい出会いがたくさんあった。松岡とアニメで一緒にやるのも初めてだし、イリヤとも仕事ができて。いい出会いをしたみんなで同じ方向を向くと、あんなに力のあるものができるんだと改めて確信しました。

──本作は“平成最後に公開されるアニメーション作品”という位置付けにもなっています。原監督は「エスパー魔美」で昭和から平成へ、「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」で20世紀から21世紀へと、節目節目で印象的な作品を世に出してきたイメージがあります。偶然ではあると思いますが、本作がこのタイミングで公開されることに何か思うことはありますか?

「バースデー・ワンダーランド」

 公開のタイミングは本当に偶然なので。でも何か特別な意味を感じてくれる人たちがいたら、それはいいことだと思います。アニメーション映画って1本作るのにどうしても3年ぐらいかかるんですよ。監督にとっては3年の月日をその映画に専念するということで、非常にリスクの大きな仕事なんです。だからこそ後悔がないように毎回作ってきたつもりで。今回も本当に自信を持って届けられると思っています。早くたくさんのお客さんに松岡の声を聴いてもらいたいし、イリヤの画を見てもらいたいです。

CHARACTER

キャラクター紹介

アカネ(CV:松岡茉優)
Akane
アカネ(CV:松岡茉優)
自分に自信がなく、思ったことを言えない内気な性格で「できっこない」が口癖。半ば強引に連れ出された冒険を通して、人生を変えるような決断をくだすことに。
チィ(CV:杏)
Chii
チィ(CV:杏)
骨董店を営むアカネの叔母。アカネとは正反対の好奇心旺盛で自由奔放な性格。アカネの保護者として冒険をともにする。
ミドリ(CV:麻生久美子)
Midori
ミドリ(CV:麻生久美子)
アカネの母。考えが読めない謎めいたところがある。アカネへの誕生日プレゼントを、骨董店から自分で受け取るよう頼む。
ヒポクラテス(CV:市村正親)
Hippocrates
ヒポクラテス(CV:市村正親)
堅物で少し偉そうな大錬金術師。骨董店の地下室から現れ、アカネに“向こうの世界”を救ってほしいと頼む。
ピポ(CV:東山奈央)
Pipo
ピポ(CV:東山奈央)
アカネたちの冒険を助けてくれる小人。ヒポクラテスの弟子で、錬金術師を目指している。
ザン・グ(CV:藤原啓治)
Zang
ザン・グ(CV:藤原啓治)
ワンダーランドを荒らし回るゴロツキ。目的は不明。
ドロポ(CV:矢島晶子)
Doropo
ドロポ(CV:矢島晶子)
ザン・グの手下。魔法で人を変身させられるが、失敗してばかり。
「バースデー・ワンダーランド」
2019年4月26日(金)全国公開
ストーリー

自分に自信のない12歳の平凡な女の子、アカネ。誕生日の前日、彼女の前に謎めいた大錬金術師のヒポクラテスとその弟子ピポが現れた。「私たちの世界を救ってほしいのです!」と必死に請う2人。アカネは「できっこない」と断るが、好奇心旺盛な叔母のチィに促され、地下室の扉から幸せな色に満ちたワンダーランドへ連れて行かれてしまう。色が失われる危機に瀕したワンダーランドの救世主にされてしまったアカネは、ヒポクラテスとピポ、そしてチィとともに町を巡っていく。

スタッフ / キャスト

監督:原恵一

原作:柏葉幸子「地下室からのふしぎな旅」(講談社 青い鳥文庫)

キャラクター / ビジュアルデザイン:イリヤ・クブシノブ

テーマソング:milet「THE SHOW」(SME Records)

イメージソング・挿入歌:milet「Wonderland」(SME Records)

声の出演:松岡茉優、杏、麻生久美子、東山奈央・藤原啓治、矢島晶子・市村正親ほか

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原恵一(ハラケイイチ)
1959年7月24日生まれ、群馬県出身。1982年にシンエイ動画に入社し、テレビアニメ「ドラえもん」の演出を経て「クレヨンしんちゃん」の監督になる。主な監督作に「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」「河童のクゥと夏休み」「カラフル」など。2013年には初の実写監督作「はじまりのみち」を発表した。2015年公開「百日紅~Miss HOKUSAI~」は第39回アヌシー国際アニメーション映画祭で長編作品審査員賞を受賞。2018年には紫綬褒章を受章した。
松岡茉優(マツオカマユ)
1995年2月16日生まれ、東京都出身。主な出演作に「桐島、部活やめるってよ」「はじまりのみち」「ちはやふる -下の句-」「blank13」「ちはやふる -結び-」など。第42回日本アカデミー賞では「勝手にふるえてろ」で優秀主演女優賞、「万引き家族」で優秀助演女優賞のダブル受賞を果たした。2019年10月4日に主演作「蜜蜂と遠雷」、秋に白石和彌監督作「ひとよ」の公開を控える。
イリヤ・クブシノブ
1990年2月20日生まれ、ロシア出身のイラストレーター・マンガ家。現在は日本で活動している。TwitterやInstagramでオリジナル作品を発表して注目を集め、Instagramのフォロワー数は150万人を超える(2019年4月現在)。2016年に初の画集「MOMENTARY」(パイ インターナショナル)を出版。2019年11月19日には画集第2弾「ETERNAL」(パイ インターナショナル)が発売予定。