映画「ビー・バップ・ハイスクール」大好き芸人ケンドーコバヤシが、その魅力をニューヨークに熱弁! (2/3)

ケンコバさん世代の芸人、みんな学生時代の写真がちょっとヤンキーですよね(屋敷)

──直撃世代のケンコバさんにお聞きしたいのですが、劇中のヤンキー描写はどれくらいガチだったのでしょう?

ケンコバ 俺らの世代って、3年生はヒゲを生やしてましたからね。

屋敷 あ~。

ケンコバ でも今の中学生は……。

屋敷 え、中学校の話ですか!?

ケンコバ 今の中学生なんか、毛穴がないやないですか。俺が中学1年生の頃には、3年生は細い口ひげ生やして、ウィスキーの瓶を首からぶら下げてたんですよ。めちゃくちゃ怖くて。

屋敷 そんなのいないですよ!

ケンコバ これはね、医者とか学者を呼んで、アカデミックに研究したほうがいいと思いますね。日本人の遺伝子が変化したんじゃないかと。

屋敷 なんやろう?

──中学校でその騒ぎだと、高校なんてもう……。

ケンコバ だから「ビーバップ」の菊リン(菊永淳一)とかは、全然「そんなバカな」じゃないというか。

映画2作目「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌」より、石井博泰扮する菊永淳一(中央)。立花商業の大将で、トレードマークの口ひげと老け顔のせいで本職のヤクザに間違えられやすい ©︎東映

映画2作目「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌」より、石井博泰扮する菊永淳一(中央)。立花商業の大将で、トレードマークの口ひげと老け顔のせいで本職のヤクザに間違えられやすい ©︎東映

嶋佐 リアルなんですね、あれ……。

ケンコバ ああいう人おったよ。

屋敷 「ビーバップ」の影響でめっちゃ不良が増えたみたいな話も聞いたことがあります。

ケンコバ お正月はビーバップやったからね。(編集部注:「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズは6作中3作が12月に公開され、いわゆる「お正月映画」だった)

屋敷 そんな「ドラえもん」みたいな。

ケンコバ 感覚的には寅さんやね。

屋敷 客層はやっぱり男ばっかりなんですか?

ケンコバ 全員ヤンキーやね。

屋敷 やっぱそうなんや。

ケンコバ でも、格好がヤンキーなだけで、みんな中身は真面目で。僕もファッションだけ見たらヤンキーでしたけど、中身は別にっていう感じでしたよ。ヤンキーのハードルが低かったというか。

屋敷 確かにケンコバさんの世代の芸人さん、みんな学生時代の写真がちょっとヤンキーですよね。サンドウィッチマンさんとか。

左からケンドーコバヤシ、嶋佐和也、屋敷裕政

左からケンドーコバヤシ、嶋佐和也、屋敷裕政

ケンコバ ファッションは学年の9割がヤンキーやったと思うなぁ。ニューヨークは、学年でヤンキーっぽい見た目の子、何人くらいおった?

屋敷 ほとんどいなかったです。1人か2人でしたね。それもツッパリとかヤンキーとかって感じじゃなかったです。

嶋佐 中学のときの不良は、まんま「IWGP(池袋ウエストゲートパーク)」のキングみたいな格好してましたね。カラーギャングの真似事みたいな。

ケンコバ 俺の世代はそれと比率が逆。普通の制服を着ているのが1人か2人やったから、普通やと逆に変わり者っていう扱い。地元の商店街に変型ズボン屋が4つあったくらいやから。俺もとっくりを着とったし。

屋敷 ああ、とっくりセーター! その世代の不良は着ているイメージがあります!

ケンコバ 首のところに「MICKEY」って書いてるセーターね。ミッキーマウスと関係あるか知らんねんけど(笑)。それがおしゃれとされてたね。マンガ雑誌の通販ページでは「ビーバップ」にも出てくる特殊警棒やらメリケンサックやら売ってたし、あと私服は国士舘ジャージね。

屋敷嶋佐 国士舘ジャージ?

ケンコバ 勝手に「国士舘」って刺繍されてるジャージ。

屋敷 そんなんあったんですか!?

ケンコバ 黒に金の糸で「国士舘」。みんな私服は国士舘ジャージやった。(編集部注:当時、国士舘高校は非常にコワモテな学校として有名だった)

僕は当時、学校でランクアップイベントがあったんですよ(ケンコバ)

屋敷 やっぱりヤンキーの格好しとったほうがモテたんですか?

ケンコバ いや、上の人たちはヤンキーやったし、女子もスカートが長かったけど、ちょうど俺の学年からスカートが短くなって。サーファー文化が入って来て、「ヤンキーはダサい」みたいになったね。俺らの頃はちょうど、二輪より四輪、趣味はサーフィンって、そういう感じに変わっていく過渡期やったんよ。

──でも、ファッションだけにはとどまらない人も……?

ケンコバ みんな「ビーバップ」に影響されて喧嘩するんですよ。毎年正月に、大阪やったら天王寺とか難波とか、そういう繁華街に映画を観に行くんですけど、3~4人で行かんと危ないぞと。

屋敷 なるほど、すぐ喧嘩になるから。

ケンコバ 映画を観た直後やから、みんな「ビーバップ」モードになってる。あっちこっちで喧嘩が起きてましたね。それを見るのも楽しかった。一大イベントでしたね。だから俺、「東京リベンジャーズ」が公開されたときも劇場にチェックしに行ったんですよ。そしたら喧嘩が一切起きていなくて。

嶋佐 ないでしょ!

左からケンドーコバヤシ、嶋佐和也、屋敷裕政

左からケンドーコバヤシ、嶋佐和也、屋敷裕政

──ヤンキー関連で危ない目に遭われた経験も多いのではないでしょうか?

ケンコバ 僕はその頃にランクアップイベントがあったんですよ。

屋敷 どういうことです?

ケンコバ 柔道部だったんですよ。そしたら僕が2年生のときに、地域の伝説の不良3人が「もっと強くなるために、喧嘩の下地が欲しい」と入部してきたんです。1人は俺の学年の番格、2人目はキレたら何するかわからんヤツ、3人目はヤンキーではないんだけど、タイマンなら誰にも負けんという男。この3人が入部してきたんですけど、こっちは柔道に関しては1年のアドバンテージがあるから、ボンボン投げたんです。そしたら俺の地位が学園内で爆上がりして。

──ヤンキーたちの“師匠”に収まったわけですね(笑)。

ケンコバ それに本当に悪い人っていうのは、あの時代やと“本職”に行ってしまうからね。ヤンキーっていうのは、ちょっとおしゃれに気を使っている人、くらいの感覚やったんやないかなぁ。

屋敷 でも、そんなに映画の影響力が強い感じだと、親の立場からしたら、子供には見せたくない作品的なところもあったんじゃないですか?

ケンコバ まぁ、それはね。1本につき少なく見積もっても40回は「コーマン」という単語が出てくるから。俺は40周年を機にどういう扱いにするか、見届けさせてもらうつもりよ。東映の覚悟を。「コーマン」を消したら承知しないよ。

東映スタッフ ……(苦笑)。