バレエ経験者かどうかは百発百中で当てられます(吉澤)
──ダンスシーンが多く登場すると思いますが、練習で大変だったことや、楽しかったことを教えていただきたいです。
戸塚 僕は0からのスタートだったので、まず“人の体ってこんなに曲がるんだ”と。バレエをやっている方は本当に曲がるんです。でも僕はどうやったって曲がらないので、自分の体の限界が見えました(笑)。またバレエはお芝居の動きの中で会話をしたり、物語を見せたりするんですが、僕は顔の表現に逃げちゃうんです。なので「表情ではなく体で表現してほしい」「顔がうるさい」と指導されていました(笑)。悲しい踊りを悲しい顔でやらない。哀愁といった心の機微を表現するその難しさ。体が動かないとか、そんなに柔軟に伸ばせないとかそういうことではなく、精神的な部分ですね。それがバレエの難しくも魅力的なところだと教えていただいた気がします。
大東 バレエと真剣に向き合ったことで、体中の筋肉が「やっと気付いてくれた!」と(笑)。体の中にこんなにたくさんの筋肉があって、そのささいな部分がバレエにとってすごく重要になるんだと知りました。人間という造形が作り出す最大限の美のようなものを、手取り足取り教えていただけた。“意識を向ける”ということがどれほど大切かもすごく感じて、これはもう美学だなと。習ったことをただ見せるのではなく、真の意味で美しいものを瞬時に表現するということを学べました。
吉澤 アドバイスをいただいた中ですごく印象に残っているのは、「バレエダンサーは言葉よりも先に体が動く。お芝居の中でもそれを出すといいと思うよ」という言葉です。確かに現場でもダンサーの皆さんはまず体が動いていました。僕は長年バレエをしていたわけではありませんが、話している相手がバレエ経験者かどうかは百発百中で当てられます。普段の立ち姿、足の形、物を拾うときに、ひざを曲げないで後ろに足をアラベスク(※バレエのポーズ)のようにぴんと伸ばしていたりと、やっぱりやっている人だってわかるんです。バレエダンサーの方は踊っていないときでも常にバレエダンサーなんだなと感じました。自分の体がバレエと一体化しているという感じで。自分の演技においてもそういう部分を勉強させていただきました。
究極の表現に至るまでの過程、人間ドラマも観てほしい(戸塚)
──今作はバレエをテーマにした“お仕事コメディ”と銘打っています。最後にぜひ伝えたいお薦めポイントを教えてください。
戸塚 奥深いバレエの魅力を題材にしていますが、その究極の表現に至るまでの過程、人間ドラマも観てほしいポイントです。たぶん誰もが経験したことがある壁や悩みが描かれている作品。とにかくドラマの撮影が本当にめちゃくちゃ面白かったんですよ。誰に向けてと限定せず、いろんな人に観ていただきたいです。
大東 深夜ドラマなので、何も考えずに観ていただければいいなと。楽に観ている中で、いろんなお土産をもらえるような作品じゃないかなと思うんです。社会で生きていくうえで、人と付き合っていくことの苦しさや、人の顔色をうかがって自分のことを後回しにしちゃうような生きづらさってありますよね。バレエの場合はまず自分と向き合って、自分を追求することから始まると思います。自分を高めた状態で、他人と1つの作品を作り上げていく。これは人間関係や社会生活を送るうえでもものすごく大事なことだと思います。人に与えるために、まず自分と向き合って自分を育むことの重要性を改めて感じました。なので日々の生活に疲れた方々たちが自分と向き合うきっかけとなる作品になればうれしいです。
吉澤 僕はバレエにはあまりなじみがない方にもぜひ観てほしいなと思います。ダンサーの日常を描いていて、バレエの魅力を感じていただける作品なので、このドラマを通してバレエに興味を持っていただけたらうれしいです。
プロフィール
戸塚純貴(トヅカジュンキ)
1992年、岩手県出身。2011年のドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011」で俳優デビュー。近年の出演作にドラマ「虎に翼」「だが、情熱はある」「アンサンブル」、映画「ある閉ざされた雪の山荘で」「赤羽骨子のボディガード」「スオミの話をしよう」「まる」、ミュージカル「グラウンドホッグ・デー」などがある。フジテレビ系ドラマ「波うららかに、めおと日和」が現在放送中。
戸塚純貴 (@junki_tozuka) | Instagram
ヘアメイク / 中島康平
スタイリング / 森大海
大東駿介(ダイトウシュンスケ)
1986年3月13日生まれ、大阪府出身。2005年デビュー。2009年から2010年にかけて放送された連続テレビ小説「ウェルかめ」で注目を集め、近年は映画「罪と悪」「マイホームヒーロー」「劇場版 アナウンサーたちの戦争」、連続テレビ小説「らんまん」、ドラマ「あのクズを殴ってやりたいんだ」などに出演した。映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」が2025年5月23日に公開され、大河ドラマ「豊臣兄弟!」が2026年1月より放送される。
大東駿介 (@shunsuke_daitoh) | Instagram
ヘアメイク / 佐藤友勝
スタイリング / 服部昌孝
吉澤要人(ヨシザワカナメ)
2003年7月12日生まれ、東京都出身。ダンスボーカルユニット「原因は自分にある。」のメンバーとして活動中。ドラマ「FAKE MOTION」シリーズや「家政婦クロミは腐った家族を許さない」に出演し、映画「BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~」でダブル主演を務めた。2025年2月14日にはファースト写真集 「ナニモノ」を発売した。
吉澤要人/Yoshizawa Kaname (@kaname.y_712) | Instagram
ヘアメイク / 井下成美
スタイリング / 藤長祥平