ロングセラー作品の秘密は“裏切り”
──今回は有村昆さんからゆるめるモ!のお二人に本作の魅力をレクチャーしていただければと思い、お集まりいただきました。
有村昆 はい! よろしくお願いします。さっそくですが、おそらく仮面ライダーって、ファンでない人にとってはなかなか接する機会もないものですよね。
あの そうですね。ほとんど観たことないです。
ようなぴ お兄ちゃんが仮面ライダーや戦隊ヒーローが好きだったので、その影響で観たことはあるんですけど、それがいつの作品かを意識したことがなくて。ライダーキーック!!みたいなのはわかりますけど……。
有村 だいぶ前ですよ、それ! 藤岡弘、さんの時代じゃない?(笑)
──「アマゾンズ」をご覧になって、率直な感想はいかがでした?
ようなぴ 想像してた仮面ライダーと違いました! もともとは、もうちょっと……明るいと思っていたので。
有村 まあ、かなりダークですからね(笑)。
ようなぴ 楽しい感じっていうか、悪者もかわいいところがある、みたいなイメージが強かったんです。この「アマゾンズ」もそれぞれのキャラにいいところがあるけど、思ったよりも人間の心の深いところが表現されてるなと思いました。
あの ぼくも同じく、想像していた仮面ライダーより……暗くて。
一同 (笑)
あの けっこうグロテスクなシーンも多くて、最初は間違えて違う作品観ちゃってるのかな?って思うくらいでした。仮面ライダーって、もっと悪者も「きゃほー!」みたいな騒がしい感じだと思っていたんですけど、全体的にシリアスなシーンが多くて。仮面ライダーのイメージがまったく変わりました。
有村 うんうん。ではそれを踏まえて、「アマゾンズ」のポイントをいくつかご説明しますね。1971年に始まった仮面ライダーシリーズが世代を超えてロングセラー作品となっているのには、それなりの理由があるんです。それが……“裏切り”なんですよね。
ようなぴ 裏切り!
有村 新しいコンテンツを生み出すには、前のコンテンツを1度破壊しないといけない。「ゴジラ」シリーズなんかも同じです。「シン・ゴジラ」がバーンとヒットしたのは、これまでの作品イメージを裏切って官僚の会議シーンを大幅に盛り込んだから。エンタテインメントは全部そうなんですよ。「バットマン」にしても「スーパーマン」にしても、30年、40年以上続くコンテンツを作るには裏切りが大切。アイドルもそうですよ! 型にはまっているだけでは持たないです。
ようなぴ そうですね。
有村 だから、今日話す「アマゾンズ」の戦略をぜひアイドル活動に組み込んでいただきたい(笑)。
ようなぴ・あの ははは(笑)。
有村 この「アマゾンズ」は、お二人の持っていたような仮面ライダーのイメージをいい意味で裏切ってるんです。その裏切りの工夫が、今回特にしっかりリサーチされているなと思いました。「仮面ライダーはこうあるものだ」っていうもの、例えばショッカー戦闘員の軍団がどこかかわいらしく「イー!」って言いながら出て来るのは、もうやめようって。おそらく企画会議では、ホワイトボードに「仮面ライダーのイメージをみんなで挙げてみよう!」って書き上げて、1つひとつそれを裏切っていくってことが行われたと思いますよ。
子供からおじいちゃんまでを相手にしない
有村 なぜこの「アマゾンズ」はうまく裏切ることができたか? それは、Amazonが作っているからこそできる技なんです。
ようなぴ やっぱり、関係あるんですね。
有村 あるんです! ずばり、会員制だからできるんですね。今のテレビってコンプライアンスが厳しすぎて、過激な表現はやっちゃいけない、グロテスクなものは駄目、エロいのも駄目と言われてしまう。じゃあ子供からおじいちゃんおばあちゃんまで観れるコンテンツを、と言うとまろやかになっちゃって刺激的なものができあがらないんですよ。
ようなぴ ふーん。
有村 そうやって、みんなテレビ離れしていってしまう。そこで強いのが、会員制だからこそできる過激なコンテンツなんですよね。なぜ強いかと言うと、テレビのようにコンプライアンスが厳しくないので、例えば仮面ライダーシリーズの中にグロめの表現やキスシーンなんかも入れることができるようになったんです。海外ドラマの「セックス・アンド・ザ・シティ」や「ゲーム・オブ・スローンズ」っていう人気作品がありますよね。
ようなぴ はい。
有村 今アメリカでガーンと来てるコンテンツって、お客を選ぶビジネスをしてるわけです。みんな有料チャンネルで、「観たくないなら観なくていいですよ」って言うスタンス。そうすると会員の人たちだけに向けて、媚びないとがったコンテンツができる。子供からおじいちゃんまでを相手にしないっていう考え方で、まずは特定の層でしっかりファンを獲得しようっていうやり方なんです。アイドル活動に置き換えることもできますよね。
──楽曲にニューウェイブなどのジャンルを取り入れたゆるめるモ!は、かなりアイドルのイメージを裏切れていますよね。
ようなぴ ありがとうございます!
有村 じゃあアイドル界のアマゾンズじゃないですか!
一同 (笑)
ようなぴ やっぱり、型にはまらないっていうことを普段から意識してる部分はありますね。今までと同じことをしてるだけじゃいけないなって。ゆるめるモ!っていうグループの形を保ちながら、どうしたら新しいことをやっていけるだろうって悩んだりもしてたので、今の話はなるほどって思いました。
有村 例えば洋楽のアーティストで、マイケル・ジャクソンにしてもマドンナにしても、長続きしてる人の歴史を見ると裏切りの繰り返しですよ。曲調が変わったり、衣装デザイナーを新しい人にしたり。それが嫌いっていう人もいると思いますが、それならそれでいいじゃん!って言える、捨てられる勇気が必要ですよね。「アマゾンズ」はその勇気があったからこういう面白いものができたんです。
ようなぴ・あの なるほど。
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いかに今のエッセンスを入れてリミックスするか
- 「仮面ライダーアマゾンズ」シーズン2(全13話)
- Amazonプライム・ビデオにて配信中
※2017年4月7日(金)より毎週1話更新
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1974年から、仮面ライダーシリーズ第4弾としてテレビ放送された特撮ドラマ「仮面ライダーアマゾン」。仮面ライダー生誕45周年を迎えた2016年、そのリブート的作品としてAmazonプライム・ビデオにて配信されたのが「仮面ライダーアマゾンズ」シーズン1だ。そして2017年4月7日、キャスト・スタッフたちが「『アマゾンズ』を超えるのは『アマゾンズ』だけ」という言葉を掲げて作り上げたシーズン2の配信がついにスタート。新たな主人公とおなじみのキャラクターたちが、さらなる大混戦を繰り広げていく。
- スタッフ / キャスト
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原作:石ノ森章太郎
脚本:小林靖子
監督:石田秀範、田﨑竜太
アクション監督:田渕景也(Gocoo)
キャスト:前嶋曜、白本彩奈、藤田富、谷口賢志、武田玲奈、東亜優、三浦孝太、田邊和也、籾木芳仁、赤楚衛二、俊藤光利、小林亮太、宮原華音、勝也、小松利昌、神尾佑ほか
©2017「仮面ライダーアマゾンズ」製作委員会 ©石森プロ・東映
- ※シーズン1もAmazonプライム・ビデオにて配信中
©2016「仮面ライダーアマゾンズ」製作委員会 ©石森プロ・東映
- 有村昆(アリムラコン)
- 1976年7月2日生まれ、マレーシア出身。テレビ、ラジオ雑誌等で活躍する映画コメンテーター。オンラインサロン「有村昆のバカデミーシネマラボ~日本で最もマニアックB級映画サークル~」主宰。MXTV「ひるキュン」やYTV「クギズケ!」、CX「バイキング!」、テレビ朝日「お願い!ランキング」30秒映画ショーにも出演中。
- ゆるめるモ!
- 「窮屈な世の中を私達がゆるめるもん!」というコンセプトのもと2012年10月に結成された女性アイドルグループ。楽曲はニューウェイブを軸にさまざまなジャンルが取り入れられており、Neu!、ESG、Suicideなどの名盤をオマージュしたCDジャケットも毎回話題を呼んでいる。2015年10月公開の「女の子よ死体と踊れ」で映画初主演を務めた。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在のメンバーは、けちょん、しふぉん、ようなぴ、あのの4人。最新作は「孤独と逆襲EP」。2017年6月にミニアルバムを発売し、7月23日の東京・赤坂BLITZ公演を含む全国ツアーを行う。