映画「
2021年の本屋大賞を受賞した町田の同名小説を原作とする本作は、自分の人生を家族に搾取されてきた三島貴瑚が、母親から虐待され「ムシ」と呼ばれている少年と出会い、自身の“声なきSOS”を聴き救い出してくれた安吾との日々を思い出す物語。貴瑚を杉咲、安吾を志尊が演じた。
杉咲は「自分にとってかけがえのない出会いになりました」と冒頭に挨拶し、「物語で描かれる出来事を1つひとつ知っていくにつれて、聞こえる周波数が少しずつ広がっていくような気がして」と言葉を紡ぐ。志尊はオファーを受けたときのことを回想し「簡単に演じられる役ではなかったので悩みました。監督と話して思いを聞いたことで『一緒にやっていきたい』と覚悟が生まれた」と述懐した。そして杉咲との共演が出演の決め手の1つだったことを明かし「俳優が作品に向き合う姿勢ってこういうことだよなと。今にも倒れそうな熱量で、誰よりも前に立って突き進む姿には尊敬しかなかった」と称賛。杉咲も「探り探りのコミュニケーションの中で、志尊くんは絶対的な味方でいてくれて。安吾のまなざしをカメラの外でも向け続けてくれた」とたたえた。
貴瑚の高校時代からの親友・牧岡美晴役の小野は杉咲とプライベートでも仲良しだそうで「1カ月、花の家にお泊まりしてたこともあるんです」と明かして周囲を驚かせたあと「公私混同はしないように、過剰に距離を取ったりしたこともありました(笑)」と声を弾ませる。一方で杉咲は「友達が仕事場にいるっていう感覚に慣れなくて」と前置きしつつ「お芝居が始まると、目の前で演じている花梨を目の当たりにして背筋が伸びる思いがありました」と回想。小野が「現場での佇まいとか、スタッフさんへの気配りとか普段は見れない姿を見せてくれて、勉強になりました」と話すと、杉咲は「ちょっといじられているような(笑)」と恥ずかしそうな様子を見せた。
貴瑚が海辺の街で出会う、声を発することのできない少年を演じた桑名は、初めての舞台挨拶への参加に緊張した様子。「(現場では)何が楽しかった?」と質問する杉咲には「飛行機に初めて乗ったからワクワクしました」と回答し観客を和ませる。そして「みんなの演技に圧倒されちゃって、腰抜かしちゃいそうでした!」と元気いっぱいに発言した。小野は「(桑名は)撮影現場のアイドルでしたよ。それでいてしっかりしてるんです」としみじみ。志尊が「大分で一緒に遊んだりしたよね」と話しかけると「お話ししたぐらい……」とクールな一面も見せ、観客を笑わせた。
書き下ろし主題歌「この長い旅の中で」を提供した石原は原作を読んだうえで楽曲制作に取り掛かったそうで「(楽曲を)スラスラ書けるぐらい、心の中にすっと入ってくる物語でした。普段も自分自身の経験をもとに楽曲を作ることが多いので、『自分はこういうときにどう乗り越えたっけ?』と考えながら作りました」と振り返る。杉咲は「エンドロールが流れる間って、観てくださる方がそれぞれの生活に戻っていく心構えをするような時間だと思っていて」と言及し「劇場を出たときにそっと背中を押してくれる楽曲がこの映画の最後に流れるのがうれしい」と話した。
「自分の書いた原作にはない、新しい感動がグッと迫ってきた」と興奮した様子の町田は「たくさんの人が、原作者である私以上の情熱を持って作り上げている。ありがたいですし、人の心と情熱ってすごいんだなと思いました」とねぎらう。成島はその様子に「最高にうれしいです。完成まで長い旅でしたけれど、今ここにいられてよかった」と返した。
最後に杉咲は「この物語を本当に大切に思っていて。どのように届けることができるだろうかと、ずっと議論し続けてきました。隣にいる人のことを想像できるような作品になっていたらうれしい」と丁寧に呼びかけ、イベントの幕を引いた。
「52ヘルツのクジラたち」は、3月1日に東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開される。
映画「52ヘルツのクジラたち」本予告
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はみ @hamihami302
みたいなこの作品。
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