劇場版「名探偵コナン ゼロの執行人」|古谷徹(安室透役)インタビュー 大人のしたたかさと色気をテーマに、安室透の新たな魅力をお届け

“赤い人”の存在

──安室が劇場版でメインキャラクターとして描かれるのは、「純黒の悪夢」以来、2作目となります。改めて2年前を振り返ってみて、共にスポットが当たった赤井秀一役の池田秀一さんとの掛け合いはどのように印象に残っていらっしゃいますか?

2016年に公開された映画「名探偵コナン 純黒の悪夢」の青山剛昌描き下ろしティザービジュアル。©2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

赤井と安室は、静と動のような対象的なキャラクターだと思うんです。普段は抑えていますけど安室はホットなキャラクターで、それに対して赤井はクール。その対極をなす2人が、お互いの存在を引き立てあっているような関係だと思うんですよね。だから「純黒の悪夢」のときはすごくお芝居に入りやすかったですし、特に池田さんとは「ガンダム」の頃からの長いお付き合いですので、お互い気心も知れている。隣に立っていると安心もできますし、お芝居も作りやすいんです。そういう意味でいうと、今回は“赤い人”がいなかったので、ちょっとさみしかったです(笑)。それに今回は“赤い人”の魅力に頼ることができないので、2人分がんばらないといけないなとも感じました。

──「純黒の悪夢」のときは池田さんと劇場版「機動戦士Zガンダム」以来、10年ぶりに一緒に収録をされたとのことですが、それくらい時間が空いていてもすぐに入り込むことができたんでしょうか?

映画「名探偵コナン 純黒の悪夢」より、赤井秀一と安室透の格闘シーン。©2016 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

そうですね。アニメの現場だけだとそれくらいの時間は空いていましたが、イベントだったり、いろんなところでご一緒していましたので。そういう意味では長年ともに歩んできた戦友みたいな存在なんです。

──ちょうど先日、4月11日発売の週刊少年サンデー20号(小学館)で「名探偵コナン」の連載が再開すると発表がありましたが(取材は4月上旬に行われた)、新シリーズは安室と赤井が対峙するシーンから始まるそうですね(参照:「名探偵コナン」4月11日より連載再開!新シリーズは安室透VS赤井秀一で幕開け)。

4月11日発売の週刊少年サンデー20号(小学館)にて始動した「名探偵コナン」新シリーズより、拳銃を突き合わせる赤井秀一と安室。©青山剛昌/小学館

いずれテレビシリーズで演じられるのが、早くも楽しみですね。「なんで赤井と安室が銃を突きつけあってるんだろう!?」って気になりますよね。青山先生はそこの理由については教えてくれませんでしたから。

──あ、先日青山先生のご自宅に伺われてましたよね(参照:古谷 徹 Toru Furuya (@torushome) | Twitter)。

そうなんです。招いていただいて、お邪魔しちゃいました。そのときにひと足先にその原稿を見せてくださって。でも、吹き出しにセリフが書いてなかったので、内容までは僕も知らないんですよ。なのでどんなストーリーなのか、読むのが楽しみですね。

同性から見ても理想的な男性

──そもそも、古谷さんが安室を演じられることが決まった際のお話もお伺いできればと思うのですが、古谷さんは以前から「コナン」のファンだったんですよね。

キック力増強シューズでサッカーボールを蹴るコナン。劇場版の見どころのひとつであるアクションシーンは本作でも健在だ。

そうなんです。だから安室透というキャラクターが作中に登場して、お声をかけていただいたときは「ついに来た!」と思いました。赤井秀一という、いかにもな名前のキャラクターを池田さんが演じられていたこともあって(「赤井」は池田が「ガンダム」シリーズで演じていたシャア・アズナブルの異名“赤い彗星”から、「秀一」は池田の名前から付けられた)、青山先生はきっと「ガンダム」ファンじゃないのだろうかと、いずれお声がかかるんじゃないかとずっと期待していたんです。

──そうしたらついに安室透というキャラクターが登場することになり。

ええ、うれしかったですね。実際にお声をかけていただいたあと、安室の設定資料などを見せていただいたときは、「ルックスからして絶対人気出そう!」と思っていて(笑)。そうしたらルックスだけではなく、内面からもたくさんのカッコいい魅力が出てきて。そのうちにファンの方もどんどん増え続けて、「純黒の悪夢」がピークになったんですけど……。

──いやいや、まだまだピークは更新し続けるんじゃないんですか?

ふふふ(笑)。そうですね、「ゼロの執行人」でそうなるように期待したいですね。

──では、テレビシリーズを含めて、安室が登場したエピソードの中で印象的なシーンはありますか?

テレビアニメ「名探偵コナン」第770話「ギスギスしたお茶会(前編)」より。©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

いくつかあるんですが……「ギスギスしたお茶会」(テレビシリーズでは第770~771話)のときに、初めて安室透の少年時代の姿が登場して。「だって……」のたった一言だけではありましたが、(灰原哀の母親である宮野)エレーナさんとの会話のシーンが描かれて、エレーナさんとのつながりがあることがわかったのはとても興味深かったですね。あとは「甘く冷たい宅配便」(テレビシリーズでは第722~723話)。あのエピソードで初めてボクシングのスキルを披露したときは「おおっ! カッコいい!」と思いました(笑)。あのシーンも印象に残っています。

──安室は本当になんでもできちゃう人ですよね。

そうなんですよね。テニスも得意だし、ピッキングとか爆弾の解体なんかもできちゃうし、美味しいハムサンドも作れるし(笑)。ギターも弾けちゃうじゃないですか。

福山雅治「零 -ZERO-」のダウンロード用期間限定ジャケット。

──映画の主題歌である福山雅治さんの楽曲「零 -ZERO-」のダウンロード用期間限定ジャケットでは、ギターを手にした福山さんと安室透が肩を並べていました(参照:劇場版「コナン」×福山雅治の主題歌コラボMV公開、青山剛昌描き下ろしジャケも)。

しかも今回の映画の中で梓さんから言われているように、若い女の子からもモテモテですからね。本当困っちゃいますよね、自分とのギャップがありすぎて(笑)。なんでもできちゃうイケメンなので、同性から見ても理想的な男性だなと思います。

一筋縄ではいかないキャラクター

──2012年に放送された「ウェディングイブ(前後編)」でテレビシリーズに初登場して以来、これまで約6年間安室を演じてこられましたが、最初に安室を演じたときからこれまでの間に、キャラクターの解釈や役作りに変化はありましたか?

古谷徹

最初はさわやかな青年探偵として登場して、毛利小五郎に弟子入りする。そのときに「実は裏の顔があります」ということは聞いていたんですけど、それが具体的にどんなものなのかは知らなかったんです。なのでその頃はとにかくさわやかに演じようと考えていたんですが、実は黒ずくめの組織の一員・バーボンであることがわかり、「ええっ!?」と驚いて(笑)。そこからは2つの顔の演じ分けを考えるようにして、安室透は明るい好青年として演じていたので、バーボンはミステリアスでクールな印象を受けてもらえるようにしようかと。そうしたら、正体は公安警察の警察官で、本名は降谷零と知って……またまた「ええっ!?」って(笑)。だから僕が知っていることは、ファンの方とそんなに変わらないですよ。降谷零という名前に関しては、聞いたときはあまりにも安易すぎませんか?と思ったんですけど(笑)。

──あはは(笑)。確かに安室透も降谷零も、古谷さんご自身と古谷さんが「ガンダム」で演じたアムロ・レイから名付けられてますもんね。

ええ(笑)。そこから安室透、バーボンに加え、さらに降谷零というもう1つの顔を演じなければいけないことになり。

──その都度、新たな引き出しを開けて演じていかないといけないのは、素人目からしてもすごく大変そうです。

安室は「毛利小五郎のことになると君は一生懸命だね。それとも蘭姉ちゃんのためかな?」とコナンを挑発する。

そうなんですよ。「純黒の悪夢」で安室を演じて、やっぱり安室は正義感が強くてカッコいい男だなと思ったんです。ただ、冷静に見えるけど、スコッチという親友を間に挟んだとき、赤井に対しては憎悪を燃やして熱くなってしまうという。そういう意味でも幅のあるキャラクターだなと思ったんですけど、今回の「ゼロの執行人」ではそれにプラスして“したたかさ”を持ち合わせていて。正義の公安警察なのにちょっとした“怖さ”も見せていかないといけない。一筋縄ではいかないキャラクターだなと、僕自身も改めて感じましたね。

──それでもまだはっきりとしたバックボーンが描かれているわけではないですもんね。

なので、今後もまた新しい一面が出てくると思うんですよね。いずれスコッチが死んだ真実も知ることになるでしょうし、そのときはまた大変なお芝居を要求されると思います(笑)。

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安室透の人気の理由

劇場版「名探偵コナン ゼロの執行人」
2018年4月13日(金)より全国東宝系にてロードショー
劇場版「名探偵コナン ゼロの執行人」

原作:青山剛昌「名探偵コナン」(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:立川譲
脚本:櫻井武晴
音楽:大野克夫
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、古谷徹 ほか
配給:東宝
製作:小学館 / 読売テレビ / 日本テレビ / ShoPro / 東宝 / トムス・エンタテインメント

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古谷徹(フルヤトオル)
古谷徹
7月31日生まれ、神奈川県出身。声優、俳優、ナレーターとして活動。青二プロダクション所属。幼少期に劇団ひまわりに入団し、子役として活動を開始。10歳のときに映画「ローマに咲いた恋」の吹き替えを務め、声優デビューを果たす。1966年にはアニメ「海賊王子」の主人公・キッド役でアニメに初出演。1968年、当時15歳でアニメ「巨人の星」の主人公・星飛雄馬役を演じ注目を集める。代表作に「機動戦士ガンダム」(アムロ・レイ役)、「ドラゴンボール」(ヤムチャ役)、「聖闘士星矢」(ペガサス星矢役)、「美少女戦士セーラームーン」(地場衛 / タキシード仮面役)、「名探偵コナン」(安室透役)、「ONE PIECE」(サボ役)など。

2018年4月13日更新