コミックナタリー PowerPush - 梅内創太「四弦のエレジー」

音大出身のルーキーが放つ音楽サスペンス 音が“視える”兄弟のオリジナル楽曲も公開

音楽大学卒業という経歴を持つルーキー・梅内創太がゲッサン(小学館)にて連載中の、クラシック音楽を題材としたマンガ「四弦のエレジー」。19世紀末のヨーロッパを舞台に、自らの音楽を探し求める旅に出た兄弟の冒険を、重厚かつケレン味あふれる筆致で描いている。

この物語に登場するオリジナル楽曲は、梅内が音大時代の友人の協力を得て実際に作曲してもらっているという。コミックナタリーでは単行本の発売を記念し、その音源を作曲者のコメントとともにお届け。また作者の梅内へインタビュー取材を敢行し、自ら「やる気がなかった」と語る音大時代の思い出や、マンガの創作秘話について語ってもらった。

取材・文/安井遼太郎

人物紹介

エンリコ

エンリコ
大作曲家として知られるユリウス・ブロイアーの養子。超絶技巧派のヴァイオリニストとして名を馳せていたが、ブロイアーの音楽堂で彼の曲だけを弾く傀儡としての自分に嫌気が差していた。義兄であるアリョーシャの作曲の才能を見抜く。

アリョーシャ

アリョーシャ
ブロイアーの本当の息子。「音楽が視(み)える」と語り周りから狂人扱いされるが、エンリコに直接触れることでその風景を見せることができる。精神病院に入院させられそうになったその日、エンリコとともにパリを目指して家を出る。

この兄弟については自分自身を、冷静型と直情型に分解して作り出しました。私は多くの意見が頭の中に混在しているタイプなので、2人以上に分解すると、自分の思っていることを同時進行で描きやすいのです。

ユリウス・ブロイアー

ユリウス・ブロイアー
ドイツを代表する大作曲家。傲慢な天才で、自らの音楽を演奏するエンリコを「我が音楽の半身」として高く評価していた。実子であるアリョーシャとともに逃げたエンリコを、どんな手を使ってでも連れ戻そうとするが……。

私はドイツの作曲家があまり好きではないんですが、その嫌いな固いイメージを具現化させました。音大でもワーグナーやブラームスについての授業は本当につまらなかったな……(笑)。

兄弟に視えた音楽はこの曲だ!

♪「Debussy/リラの花」よりスケッチ(第1話登場)

「四弦のエレジー」より、「リラの花」の演奏シーン。

ドビュッシーの歌曲を元に、アリョーシャがヴァイオリンの独奏曲として書き直したもの。エンリコが演奏すると、2人の周りにはリラ(ライラック)の花が咲き乱れ、花の香りまで感じられる。

楽譜ダウンロード(PDF:約36KB)

作曲者コメント

フランス歌曲ならではの繊細さ柔らかさを、アリョーシャが表現するとしたらどうなるかな? と想像しながら書きました。

♪「卵のワルツ」(第2話登場)

「四弦のエレジー」より、「卵のワルツ」の演奏シーン。

旅先でお金に困った2人が路上演奏で身銭を稼ぐべく、アリョーシャが即興で作り上げた曲。通行人も足を止めて踊り出すほどの楽しい曲に仕上がっている。

楽譜ダウンロード(PDF:約44KB)

作曲者コメント

未知からのスタートであり、ワクワクするものであり、輝く将来がいまや飛び出さんとしている……ふわりとした「卵」のイメージを持った一曲です。

梅内創太「四弦のエレジー(1)」 / 2015年4月10日発売 / 596円 / 小学館 / Amazon.co.jp
梅内創太「四弦のエレジー(1)」
“囚われの兄弟”の旋律は国境を越えて──

19世紀末、ドイツ。囚われの兄弟は、
自分達の自由な旋律を求め、
国境を越えパリへ──
音大出身の気鋭が綴る音楽サスペンス始動!!

試し読みはこちらから

梅内創太(ウメウチソウタ)

梅内創太11月23日生まれ。神奈川県出身。血液型O型。音大を卒業後、漫画の道へ進むことを決意。2009年6月に第1回ゲッサン新人賞佳作受賞。2010年6月に第66回新人コミック大賞入選。2010年9月に「ヴァラドラ」でプロデビュー。その後も読切に加え「Bloody Rose」「ドン・バルバッツァの息子達」という2作を短期集中連載し、「四弦のエレジー」で本格連載デビュー。