コミックナタリー Power Push - 「シティーハンター XYZ Edition」

獠がプロポーズ!? 幻のエピソードがアニメ化 小室×北条「Get Wild」語る対談もお蔵出し!

左から、北条司、小室哲哉。
「シティーハンター」の主題歌はやっぱり「Get Wild!」

TVアニメ1stシリーズでエンディングを飾ったTM NETWORKの楽曲「Get Wild」。「シティーハンター」のイメージそのものと言える、ファンにとっては作品と切り離すことができない重要なナンバーだ。その「Get Wild」が、実は「獠のプロポーズ」にもED曲として起用されている。これまで何度も耳にしたイントロが、新たに作られた映像の上で流れる瞬間は鳥肌もの!

「Get Wild」と「シティーハンター」という組み合わせは、どのように生まれたのか。その経緯を詳しく語った北条司と小室哲哉の対談が、過去に月刊コミックゼノン2012年7月号に掲載されていた。ここでは、その一部を抜粋し掲載する。

小室哲哉×北条司 対談

──「シティーハンター」×「Get Wild」で初タッグを組んで以来、初めての顔合わせとなるわけですが、小室さんは北条先生にどんなイメージを抱いていました?

左から、北条司、小室哲哉。

小室 作品のイメージを壊したくないから、あまりメディアに出ないのかな。もしかしたら、みんなが抱いているイメージとまったく違うタイプの方かもしれないなって。

北条 ああ、なるほど。

小室 だから人物イメージの振り幅を広く持ってこの対談に臨んだんです。だって、お顔を拝見して驚いても失礼じゃないですか(笑)。

北条 「この人が本当に北条司…?」みたいな(笑)。

小室 100kgオーバーの人が来たらどうしようとか(笑)。だからホッとしました。お若く見えますね。

北条 変わらないとは言われます。

小室 僕が言うのもアレですけど、可愛らしいキャラクターというか。

北条 だから髪の毛もこうやって上げて、できるだけ老けて見えるようにしているんです。サングラスも童顔をカバーするためです(笑)。

──「Get Wild」は「シティーハンター」ありきだったのでしょうか?

小室 もちろんです。当時はTMがデビューして3年目くらいで、やっといい感じになってきたかなって時期だったんですよ。「Get Wild」の1つ前のシングル「Self Control(方舟に曳かれて)」で初めて「夜のヒットスタジオ」に出演することができたんです。

──大事な時期ですね。

小室 そう。最初から「次のシングルは絶対売らないとダメ」という空気になっていた。とはいえ主題歌といってもエンディングですからね。「ああ、オープニングじゃないんだ………」っていうのが正直な感想でした。

北条 ただ、結果的にエンディングのほうが印象に残る作りでしたよね。

小室 そうなんですよね。「本編の◯分◯秒でエンドロールに移るから、前向きな感じに入ってきてドーンと広がるような音がほしい…」というようなことを言われた記憶があります。その話を聞いた時点でデモテープはほぼ完成していたんですけど、そこからイントロを足さなくてはいけなくなった。

──では、エンドロールに繋がるイントロ部分は後付けですか?

小室 後から加えました。当時はテープなので、今みたいに簡単に動かせないんですよ。だからまず全体を後ろにズラさないといけなくて。これが本当に大変な作業でした。

北条 僕は最後の決めカットからイントロが流れてエンドロールに移行するみたいな演出に関して、ちょっと懐疑的だったんです。そうなると常にエンディングが同じような画になっちゃうんじゃないかなって。でも本放送を観て「なるほど」と思いましたね。まさしく画と音楽がマッチしている。そこまで計算していたんだなって。

小室 僕も放送が始まってから「こういうことか」と把握しました(笑)。

「シティーハンター」はフランスでも絶大な人気

──今でも「Get Wild」といえば「シティーハンター」、「シティーハンター」といえば「Get Wild」というイメージは強烈です。

北条 そういうふうに仕掛けたんだもん(笑)。アニメの本放送が終わって、金曜ロードショー枠でスペシャルをオンエアしていた時期(91年~99年)があったんです。そのときに主題歌がタイアップ的なものになるのがイヤだったんですよ。「シティーハンター」といえば「Get Wild」でしょう。だから、「Get Wild」にしてくれって口を酸っぱくして言い続けたんですよ。

左から、北条司、小室哲哉。

──言われてみると、97年のスペシャル「グッド・バイ・マイ・スイート・ハート」のエンディングはNAHOが歌った「GetWild ~ CITY HUNTER SPECIAL VERSION ~」だし、99年のスペシャル「緊急生中継!? 凶悪犯冴羽獠の最期」ではTMの「Get Wild」に原点回帰しています。

北条 この作品にはこの曲というものがあって然るべきだと思うんですよね。

小室 今でもこの2つは対ですからね。実はこの対談の前日にglobeのマーク・パンサーと飲んでいたんですよ。彼はフランス出身なんですけど「明日、北条先生と対談するよ」って言ったら、「フランスでも『シティーハンター』の人気はハンパじゃないよ」って興奮気味にまくしたてるんです。

北条 ずいぶん前から放送していますね(仏での作品名は「Nicky Larson」)。

小室 とにかくハイテンションで「『シティーハンター』を知らないヤツなんていないよ 」って。まあ基本的に大げさなヤツなんですけど(笑)。

──フランス版のオープニングはぜんぜん違うアーティストですけど、「Get Wild」は本編に被っているからフランスでも流れたんですよね。

小室 そう。マークも「フランスで『Get Wild』を演ったら観客が爆発するよ」って言っていました(笑)。

──海外にまでその名が轟くお2人ですが、それぞれのフィールドで30年近く最前線を走ってこられた秘訣をお聞かせいただけますか?

左から、北条司、小室哲哉。

北条 うーん、僕は昔から最前線にいる感覚ってないんですよ。小室さんと違ってコンサートをやるわけではないので、人気の度合いがダイレクトに伝わらないんですね。アンケートの順位が何位だとか単行本が何万部売れたとか、そんなことを言われても数字の話でしかないので実感がない。だから最前線でやっていたつもりもないし、なんとなく続けてきているだけなんですけど(笑)。

小室 今でもペンで描いていらっしゃるんですか?

北条 ええ。時代遅れかもしれないけど手描きにこだわっています。パソコンを使えば簡単なのはわかりますけど、一発勝負の感覚がなくなりますから。手描きだと失敗したら修正がきかない部分があるじゃないですか。デジタルはいくらでも修正できるんですよね。それがちょっと気に食わない。

小室 音楽もそうなんですよ。今は誰でもパソコンで簡単に音楽を作れるでしょう。シンセサイザーがなくても出来てしまう。だから北条先生と同じく、僕も手弾きにこだわっています。先日、日本武道館でTMのライブがあったんですけど、最初から最後までずっと弾いていましたからね。

──打ち込みと手弾きではぜんぜん違いますよね。

小室 生身の人間がやることなので、いくら決めた音があったとしても、ツマミ1ついじれば、まったく同じ音は一生出てこないんですよね。北条先生と同じく一発勝負なんですよ。

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北条司(ホウジョウツカサ)

北条司

1959年福岡生まれ。1980年、週刊少年ジャンプ(集英社)にて読み切り「おれは男だ!」でデビュー。代表作に3人組の女怪盗を描いた「キャッツ♥アイ」、新宿で生きるスイーパー・冴羽獠を主役にした「シティーハンター」など。「シティーハンター」の世界をベースにしたパラレルワールド作品「エンジェル・ハート」を2001年より開始。同作は「エンジェル・ハート 2ndシーズン」のタイトルで、現在も月刊コミックゼノンにて連載中。

©北条司/NSP 1985