コミックナタリー Power Push - 小栗かずまた「花さか天使テンテンくん」
祝・文庫化で桜くんの本当の才能が明らかに!? 主人公たちの12年後を描く完結編を収録
試し読みあり!
©小栗かずまた/集英社
「才能が見つかった!」だけでは終われない
──今回、最終回から12年後を描く完結編が描き足されるということで、まずは最終回の執筆当時から振り返っていければ。結局桜くんの才能は見つからなかったわけなんですけど、あの着地点はいつごろ決まったんでしょう?
はじめから決まっていたわけじゃないんです。3年半くらい連載して、アニメも終わって、人気もちょっと落ちてきたころ、僕自身の体力的にも段々ときつくなってきて。じゃあ終わり方どうしようかな、と考え出して。いろいろ今までの連載を読み返してみたら、桜くんは本を読んでるシーンがいっぱいあったので、じゃあ「実は小説家の才能だった」っていうのが収まりいいな、と。
──では桜くんが本を読んでるシーンがたくさん出てきますが、あれは意識せず描いてたんですか? かなりありましたけど……。
探してみたらありましたね(笑)。で、「桜くんの本当の才能は、小説家だった」っていうところで、才能探しに注目していた読者には、納得してもらおうと思ったんです。ただ、桜くんは才能が見つかることよりも、テンテンくんと一緒にいることを求めているような気がして。才能が見つかってしまったら、桜くんとテンテンくんは離れ離れになってしまう。それじゃ「才能見つかった!やったー!」っていう風には終われないんじゃないかなって思ったんです。ふたりの生活がこれからも続いていくほうが、いい最終回なんじゃないかな、と。だからあえてああいう形の最終回を選んだんですよね。
みんなが納得する12年後の姿を描きたい
──その最終回から12年経ったいま、あの続きが描き下ろしで読めるわけですね。
実は描き下ろしはまだ全然手をつけてないんですよ……(インタビューが行われたのは5月29日)。集英社の担当さんの前では言いたくないんですけど(笑)。
──まだ構想の段階ですか?
このキャラクターはこうなってたらいいかなっていうのは、ぼんやりと頭の中であるんですけど、まだバシっとこういう形にしようっていうのはできてなくて。読者が12年後の「テンテンくん」に求めるものは何か、ずっと考えてます。やっぱりそれなりに続いた作品ですし、ファンに「こんな蛇足の作品ならないほうがよかった」って思われるのは嫌なので。でも、もし自分自身が読者で、あの「テンテンくん」の12年後の話があるって言われたら、どんな感じか読んでみたいと思うので、ちゃんと描き上げたいですね。
──ものすごく読んでみたいですよ! みんなの才能花がどうなっているのかも気になります。
クラスメイトみんながみんな、才能花が咲いてるっていうのも、ちょっとウソ臭いなと思うんですよね。12年後って言ったら22歳でみんな大人ですから、成長途中だったり、枯れちゃってる人もいると思うし。ただそんな「闇金ウシジマくん」みたいな世界になっても……、そこは「テンテンくん」なんでね(笑)。キャラクターから外れない程度に、みんなが納得する12年後の姿を描きたいです。
児童マンガでは絵のインパクトが大事
──描き下ろし、楽しみにしています。でも確かに、よく考えたらめちゃくちゃシビアな世界ですよね。才能が枯れてたりするのも見えたりするわけですし。
現実に才能が見えてたら、ものすごくシビアですよね。実は「テンテンくん」でも全然才能花を咲かせられずに死んでしまうおじさんの話を描こうとしたときがあったんですけど、あまりにもヘビーすぎるなと思ってボツにしました。
──ジャンプですもんね。
やっぱり少年マンガなんでね。今回、文庫版1巻に収録される「ぎゃる♡エン」に出てくるおじさんは、あんまり才能に恵まれた人ではないんです。これは青年誌だから描けたお話だったんですよ。そういう悲惨な才能の話を「テンテンくん」でやってしまうのはちょっと違うなと思っていたので。
──青年誌と少年誌で、そういう部分を意識して描き分けていたんですね。いまは最強ジャンプという低年齢層向けの雑誌で「ヘンテコ忍者 いもがくれチンゲンサイ様」を連載されていますが、逆に児童誌ではどういうところを意識するんでしょう?
「テンテンくん」と違って、下ネタをバンバン使ってます(笑)。やっぱり少年誌と児童誌ってちょっと違うんですよね。当時のジャンプでうんこチンチンの下ネタをいっぱい使っていたら、ちょっと読者に引かれてたんじゃないかなと思います。当時のジャンプ読者って平均年齢が13歳くらいだったんですけど、13歳の子どもって、うんこチンチンではもうそんなに笑わないんですよ。その下の層にはウケるんですけどね。
作品解説
何の取り柄もない少年・桜ヒデユキの前に、天使のテンテンくんが舞い降りた!秘めた才能を開かせる不思議な種・サイダネを持ち、ヒデユキの才能を探すために天の国から来たんだけど、グータラでドジばかり……。こんなダメ天使に、本当に才能を見つけられるの!? 週刊少年ジャンプ1997年11号から2000年30号(集英社)まで連載されたギャグマンガより、笑って泣ける感動作ばかりを集めた傑作選。
続刊スケジュール
- 「花さか天使テンテンくん 感動セレクション」2巻 / 2012年7月18日発売 / 予価780円(税込) / 集英社 / 集英社文庫〈コミック版〉
- 「花さか天使テンテンくん 感動セレクション」3巻 / 2012年8月17日発売 / 予価780円(税込) / 集英社 / 集英社文庫〈コミック版〉
- 「花さか天使テンテンくん 感動セレクション」4巻 / 2012年8月17日発売 / 予価780円(税込) / 集英社 / 集英社文庫〈コミック版〉
小栗かずまた(おぐりかずまた)
1974年生まれ。東京都出身。1994年、「トウフノカド」で第40回赤塚賞準入選を受賞。同年、少年ジャンプSummer Special(集英社)にて同作でデビュー。代表作に、週刊少年ジャンプ(集英社)にて1997年より連載された「花さか天使テンテンくん」、集英社わくわくキッズブックより刊行された「グータラ王子」シリーズなどがある。笑いの中にも心温まるエピソードを盛り込んだギャグマンガ作品で、子供たちを中心に人気を獲得している。2011年より、最強ジャンプ(集英社)にて「ヘンテコ忍者 いもがくれチンゲンサイ様」を連載中。