コミックナタリー Power Push - 小栗かずまた「花さか天使テンテンくん」
祝・文庫化で桜くんの本当の才能が明らかに!? 主人公たちの12年後を描く完結編を収録
試し読みあり!
©小栗かずまた/集英社
才能がわかることが幸せとは限らない
──いまのジャンプはもっと年齢層が上がってるでしょうね。ちなみに、才能の種(サイダネ)の発想はどこからきたんでしょう?
最初は種じゃなくて、仁丹みたいな薬だったんですよ。「テンテンくん」って、ダメな少年と特殊能力を与えるキャラクターという、「ドラえもん」に代表されるオーソドックスな組み合わせのお話なんです。テンテンくんが薬を与えて桜くんがパワーアップする。
──「ドラゴンボール」に出てくる仙豆みたいなものですね。
そうそう。まあ薬を与えてパワーアップって、いまだとちょっと際どいですけど(笑)。でも薬じゃなんとなくおもしろくないなと思って、種っていうアイデアがひらめいたんですよね。種を飲んだら芽が出て花が咲く。それを目に見えるようにしたら面白いかな、全員が種を最初から持っていたらどうだろう、とだんだん広がっていって。そしたら、この話は普遍的なテーマにもなり得るんじゃないかと思ったんです。
──自分の才能が何かわかったら、そんなに楽なことはないですよね。それをがんばったらいいんですから。
でも、それが本当にその人にとって幸せな才能かどうかっていうのはわからないですよ。「こんな才能嫌だ」って思う人もあると思うんです。自分の才能が何かを知るっていうのは、実はとても怖いことです。
──連載当時、小栗先生はご自身でこの「テンテンくん」で自分のマンガの才能を見つけたっていう認識はあったんでしょうか。
それは自分がいちばんわからないことですよね……。とくにマンガ家や小説家、映画監督だったり、エンターテインメントを作る人における才能があるかないかって、ヒットしたかどうかじゃないですか。結局周りからの評価でしかないから。例えば、ゴッホの絵って生前は全然売れなかったけど、後世ではこんなに評価されていて、まさに絵の才能の塊だった。でもその時代、ゴッホはなんの才能もないまま死んだって言われているんですよね。そういう表現の才能を測ることって本当に微妙で難しい。……スポーツ選手だったらわかりやすいんですけどね。(ウサイン・)ボルトは誰が見ても走る才能あるじゃないですか。
──では連載当時、「テンテンくん」を読んでいた子どもたち読者はいま20代半ばくらいの揺れ動いている世代だと思うんですが、そんな読者にメッセージをお願いします。
メッセージなんて贈れるような立場でもないですけど、もしエンターテインメントの世界でプロになりたいっていう人は、やり続けて人の目に触れるようにするしか方法はないんじゃないですかね。続けていれば見てくれている人がいるんだって信じるしかない。それはほかの仕事にも言えることですけどね。
作品解説
何の取り柄もない少年・桜ヒデユキの前に、天使のテンテンくんが舞い降りた!秘めた才能を開かせる不思議な種・サイダネを持ち、ヒデユキの才能を探すために天の国から来たんだけど、グータラでドジばかり……。こんなダメ天使に、本当に才能を見つけられるの!? 週刊少年ジャンプ1997年11号から2000年30号(集英社)まで連載されたギャグマンガより、笑って泣ける感動作ばかりを集めた傑作選。
続刊スケジュール
- 「花さか天使テンテンくん 感動セレクション」2巻 / 2012年7月18日発売 / 予価780円(税込) / 集英社 / 集英社文庫〈コミック版〉
- 「花さか天使テンテンくん 感動セレクション」3巻 / 2012年8月17日発売 / 予価780円(税込) / 集英社 / 集英社文庫〈コミック版〉
- 「花さか天使テンテンくん 感動セレクション」4巻 / 2012年8月17日発売 / 予価780円(税込) / 集英社 / 集英社文庫〈コミック版〉
小栗かずまた(おぐりかずまた)
1974年生まれ。東京都出身。1994年、「トウフノカド」で第40回赤塚賞準入選を受賞。同年、少年ジャンプSummer Special(集英社)にて同作でデビュー。代表作に、週刊少年ジャンプ(集英社)にて1997年より連載された「花さか天使テンテンくん」、集英社わくわくキッズブックより刊行された「グータラ王子」シリーズなどがある。笑いの中にも心温まるエピソードを盛り込んだギャグマンガ作品で、子供たちを中心に人気を獲得している。2011年より、最強ジャンプ(集英社)にて「ヘンテコ忍者 いもがくれチンゲンサイ様」を連載中。