コミックナタリー PowerPush - 朝霧カフカ / 仲村ユキトシ「汐ノ宮綾音は間違えない。」
「文豪ストレイドッグス」原作者の原点となる作品は「わらしべ長者」!?
「文豪ストレイドッグス」の原作者・朝霧カフカと、作画担当・仲村ユキトシがタッグを組んだ「汐ノ宮綾音は間違えない。」1巻が、角川書店から発売中。女子高生・綾音を主人公に、異能力同士の戦いを描いていく物語だ。勝者が敗者と能力の交換を行えるという設定が、ほかの能力バトルマンガとは一線を画している。
この世界観を詳しく知るため、コミックナタリーでは朝霧カフカにインタビューを実施。いかにして「汐ノ宮綾音は間違えない。」が誕生したのか、そして作品に込めた狙いを聞いた。
取材・文・撮影/井上潤哉
絵の雰囲気で読者は騙される
──4月に「文豪ストレイドッグス」の特集(参照:「文豪ストレイドッグス」イケメン文豪の誕生秘話を語る朝霧カフカ、春河35インタビュー)を掲載してから、早くも2度目のご登場となりました。今回は2013年6月発売の月刊少年エース8月号(角川書店)から連載がスタートした、「汐ノ宮綾音は間違えない。」のお話をお伺いします。
よろしくお願いします。2作品ともまったく毛色が違うので、話すことは前回とだいぶ変わるんじゃないのかなと思ってます。
──「汐ノ宮綾音は間違えない。」1巻を読んで、後半の悲劇的な展開に大変驚きました。前半のライトなムードからの急展開に、騙された読者も多いのではないでしょうか。
ギャップを狙いましたからね。仲村ユキトシさんの萌え系の絵が、そこでひと役買ってくれています。
──今日はそのあたり、朝霧さんが読者を騙すために仕掛けた演出についてお聞きしていきたいと思います。まずは作品ができた経緯から聞かせてください。
「わらしべ長者×能力バトル」
以前に「文豪」のインタビューでお話したことと繋がるんですが、僕がマンガ原作者になったきっかけは、ニコニコ動画にアップしていた作品を観た角川の方が、「うちで仕事しませんか」と声をかけてくださったことなんです。それで「何か企画を3つくらい持ってきて下さい」と言われたときに持ち込んだ企画のひとつがこれなんです。「わらしべ長者×能力バトル」という企画でした。
──企画内容を具体的にお聞きできますか。
わらしべ長者って、自分の持ち物よりちょっといい物と交換していくじゃないですか。そして最終的にすごくいい物を手に入れる。で、これが物じゃなくて能力だったら面白いかなと。「汐ノ宮綾音は間違えない。」の世界には異能力者が存在するんですが、その人たちは能力を交換することもできるんですね。
──能力の交換という設定は、この作品の大きな特徴ですね。
主人公は能力がすごく弱いところからスタートして、自分よりちょっと強い敵と戦い、勝ったらその能力と交換ができるという。でも綾音が能力を交換しながら冒険していくのは2巻からなんですけどね。これは別にネタバレではないので、お話ししても大丈夫。
──その着想はどのように得たのでしょう。
まだサラリーマンの頃に、車を運転しながら思い付いたんだったかな。「有名な昔話や童話は、何百年も語り継がれ生き残ってる。桃太郎や浦島太郎を知らない日本人はいない。昔話って、実はものすごく強靱で魅力のあるストーリー骨格を持ってるんじゃないの? 現代風にアレンジしたら、最高に面白い話ができるんじゃない?」と頭に浮かんで、遊びで考え始めたんですよ。その結果生まれたのが、わらしべ長者で能力バトルをやる、というアイデアでした。
──ということは「文豪ストレイドッグス」よりも先に生まれていた?
そうですね。僕の中ではこれが処女作だと思ってます。1年の準備期間にがっちり企画を練りなおしたりして、相当気合が入ってるんです。
汐ノ宮綾音は窮地に立っていた。それは綾音を慕っている妹の胡桃に、パンツを盗まれたからだ。ノーパンになり怒り心頭な綾音は、異能の力で胡桃に襲いかかるのだった!? 異能と知略が融合するエクスチェンジバトル!
朝霧カフカ(あさぎりかふか)
シナリオライター。テーブルトークRPGのリプレイ風動画をWEBで発表したことで人気を博し、「文豪ストレイドッグス」で商業デビュー。現在は少年エース(角川書店)連載の「汐ノ宮綾音は間違えない。」、ニコニコエース(角川書店)連載の「水瀬陽夢と本当はこわいクトゥルフ神話」の原作も担当している。