「死もまた死するものなれば」|──こいつはミステリじゃないんだ 海法紀光と桜井光、2人は何を始めようとしているのか?

TRPGプレイヤーには、世界を広げる才能がある

──そもそもおふたりはTRPGには馴染みが深いのでしょうか。

桜井 そうですね。海法さん含め、最初に名前が出ていた鋼屋さんや東出さんも昔からリプレイにプレイヤーとして出演されていましたし、近頃では私もよく出させてもらっています。

海法 PCゲームのノベル系とTRPGは繋がっていますからね。

「ロードス島RPG ベーシックルール」(KADOKAWA)

戸堀 自分も中学生のときには普通に「ソード・ワールドRPG」や「ロードス島RPG」といったその当時のスタンダードなTRPGはやっていました。

──TRPGプレイヤー同士の共有感覚みたいなものはあると思いますか?

海法 私見ですが、TRPGをたしなんでいる方はキャラクタービジネスに向いていると思うんですよ。TRPGは世界を共有するゲームなんです。ゲームマスターとプレイヤーが同じ世界を見てプレイするためには、お互いにバランスをとっていかないといけない。つまり、どうやってみんなで世界を広げていくかが大事なんですね。例えば戦争が続いている世界で、戦況を覆す新しい兵器が出てくるとみんな盛り上がるわけじゃないですか。でも一方で、その兵器で戦争は終わりましたと言われると、みんな困ってしまう(笑)。

──ゲームを続けるためには、その世界を終わらせず続けなきゃいけないからですね。

海法 その「広げつつ共有する」ことをTRPGという業界は続けてきたんですよ。だからTRPG経験者は同じ世界設定のもと、さまざまなジャンルに物事を展開できる方が多い。これって本当は無茶な話なんです。例えばマンガとして一番面白いものがあって、それをそのままほかの媒体に移すと言われたら、失敗する気がしません?

桜井 媒体による最適解があって、それが必ずしもほかのメディアに適用できるとは限りませんからね。

海法 作品世界を大切にしつつ深く掘り下げ、それをいろんな人が共有できるようにするにはどうしたらいいかと考える必要がある。そういった呼吸の合わせ方みたいなのが、きっとTRPG経験者には身についているんじゃないかと思うんです。

OVA、伝奇コミック、クトゥルフが好きという世代は存在する

──もう少しクトゥルフについてお聞きできればと思います。日本におけるクトゥルフの広がりというのは、どういったものがあったのでしょうか。

桜井 クトゥルフを扱った作品で言うと、MEIMU先生のマンガ「デスマスク」とか……。

戸堀 「デスマスク」を知っている方はディープな気がしますね(笑)。

「迷宮探偵 久々湊錠(仮)」連載開始前の予告カット。

桜井 「ラプラスの魔」(注:パソコンゲームを原作とした山本弘の小説)も最高ですね。新装版の表紙も好きなんですが、1988年刊行版の表紙の絵が大好きで……。

海法 1980年代後半から90年代前半の作品が多いでしょうかね。

──アニメでいうと、その年代にOVAのブームがありますね。

桜井 そうそう。「戦え!!イクサー1」がOVAでしたけど、あの頃の作品からはクトゥルフの匂いをちらほら感じましたね。マンガでは「邪神伝説シリーズ」(矢野健太郎)が正面からのクトゥルフもので、「妖怪ハンター」(諸星大二郎)には一部にエッセンスがあったように思います。あ、「エコエコアザラク」(古賀新一)はドラマ版と映画版がクトゥルフでしたね。

──レジェンド的なラインナップですね。

桜井 マンガファンの方なら、作家名で「なるほど」と思われる方も多いかもしれません。やっぱりクトゥルフは魅力的な題材なので、偉大な先生方もテーマとして選ばれていたのだと思います。

──このあたりの作品は、おふたりにとってマスターピースになるのですか?

海法 そうですね。

桜井 それこそ本作に限らず、いろんなところで影響を受けているだろうなと思います。

──それは世代的なものなのでしょうか?

海法 そうだと思いますね。OVA好き、伝奇コミック好き、クトゥルフ好きみたいなものが、僕らの世代にはセットとしてあったような気がします。いや、ここは断言しましょう。セットとしてあった。

戸堀 OVA全盛期は自分はまだ幼稚園~小学生ぐらいだったので、なかなか見られなかったんですよね。だからそこにお金が使える先輩たちが楽しそうにしゃべっているのを羨ましいなと思っていました。

桜井 あるある(笑)。ちなみに私が憧れとする世代は、海法さんの世代なんですよ。レーザーディスクを冷蔵庫に入れている世代。

──どうして冷蔵庫に?

桜井 劣化して反ってくるのを防ぐためらしいです。

海法 ごめん。僕はね、レーザーディスクを持っている世代じゃなくて、レーザーディスクを持っている先輩のうちに遊びに行く世代なんだよね(笑)。

「死もまた死するものなれば」
原作:海法紀光・桜井光(協力:モンスターラウンジ)
作画:狛句

さびれた観光地のホテルで、謎めいた殺人事件が発生。ホテルの支配人から依頼されてこの地を訪れた探偵・久々湊錠(くぐみじょう)が真相にたどり着いたとき、何かが終わり、何かが始まる……。月刊ドラゴンエイジ(KADOKAWA)で連載中。WebサイトのComicWalker、ニコニコ静画(マンガ)では1・2話常時解放&最新話を雑誌掲載と同時に公開!

海法紀光(カイホウノリミツ)
海法紀光
小説家・脚本家であり、マンガ原作、さらには翻訳も手がける。代表作は「がっこうぐらし!」(ニトロプラスとマンガ共同原作・アニメシリーズ構成)、「ガンスリンガー ストラトス」(ゲーム設定・アニメシリーズ構成)、「翠星のガルガンティア」(アニメ脚本)、「式神の城 O.V.E.R.S. ver0.81」(小説)、「ROBOTICS;NOTES 瀬乃宮みさ希の未発表手記」(小説)など。
桜井光(サクライヒカル)
桜井光
小説家、脚本家、シナリオライター。ディレクションもこなす。代表作に「Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ」(小説)、「スチームパンクシリーズ」(企画・脚本)、「Fate/GrandOrder」(シナリオ参加)、「乱歩奇譚」(脚本)、「がっこうぐらし!」(脚本)、「PSYCHO-PASS サイコパス 追跡者 縢秀星」(小説)など。TRPGリプレイへの参加も多数。
戸堀賢治(トボリケンジ)
戸堀賢治
モンスターラウンジ代表。アニメ、ゲーム、マンガ、小説などジャンルを問わずIPプロモーター、ストーリーディレクターとして携わる。主な仕事に「夢王国と眠れる100人の王子様 ショート」「revisions リヴィジョンズ」(アニメ脚本協力)、「METAL GEAR SURVIVE」(ゲームストーリー協力)、「WIT STUDIO画集シリーズ」「小説 甲鉄城のカバネリ」「小説 魔法使いの嫁 金/銀糸篇」(編集担当)など。