美麗Web原画展 嶋木あこ画業20周年|花木、和装、肉体…巧みな筆致で描かれたイラスト20点を一挙展示

少女マンガ家・嶋木あこ。「月下の君」「ぴんとこな」「ぼくの輪廻」など、数々の作品をCheese!(小学館)で発表してきた彼女は、今年2月にデビュー20周年を迎えた。型にとらわれぬストーリー展開や、個性的なキャラクターで読者を楽しませてきた嶋木だが、何より注目したいのはその磨き抜かれた筆致。20周年という節目に、コミックナタリーではその画力の変遷を辿れる企画を用意した。

本特集ではこれまでに描かれた美麗イラスト20点を、嶋木のコメントとともに“Web原画展”としてお届け。花木、和装、肉体に至るまで、常に進化し続けているその画力を堪能してほしい。より大きな画面でイラストを鑑賞したい人は、PCサイトからの閲覧をお勧めする。なお一部のイラストはサイン入りの複製原画としてナタリーストアで購入することもできるので、1枚1枚じっくりと鑑賞してお気に入りを見つけてみては。

構成 / 熊瀬哲子

嶋木あこ20年の歩み──美麗原画とともに振り返る

「むちゃくちゃ大好き。」(2000年~2002年)

作品紹介
嶋木にとって初の連載作。東京へ引っ越すことになった田舎育ちの素朴な女子高生・あおいと、彼女に一目惚れしたイケてる“東京モン”の男子・剛の恋模様を描く。
嶋木あこ
コメント
最初は3話で完結する予定だった作品。3回の連載を終えて、再び連載をすることになってから2話目のエピソードの中で、ヒーローの男の子に「俺達死ぬまで一緒にいよう?」というセリフを言わせたんです。それをきっかけに、バカップルが悲しい結末を迎えたら切ない感じになるかなと、実験の意味もあってヒロインが死ぬという展開を選びました。
「むちゃくちゃ大好き。」

デビューしてから初めてCheese!の表紙になったイラストです。当時はマンガを描くのに必死で、表紙も「描け」と言われたから描いたという感じで、表紙のありがたみがよくわかってなかった(笑)。絵はまだ模索中の時期で、髪の毛もベタ塗り気味だったんですが、担当編集の指摘を受けてからがんばって細かくスジを描くようになりました。

「むちゃくちゃ大好き。」

これもCheese!の表紙を飾ったイラスト。1枚目と比べると服も若干凝っていて、ちょっとずつ工夫していってますね。瞳はペン入れをしないで、鉛筆描きの上から色を乗せています。当時は少女マンガっぽい、ふわっとした目の塗り方が流行っていた気がするんですが、やり方がわからず自分で「こうやるのかな」といろいろ試していました。

「むちゃくちゃ大好き。」

これは②が表紙だった号の巻頭カラーに使用されたイラストです。初めて巻頭カラーを描いたんですが、見開きだし、あんまり隙間を作っちゃいけないんだろうなと思って後ろに木とか描いてみました(笑)。①も②もこのイラストもそうですが、ベタで黒を入れてますよね。この頃「黒を入れてると画面が締まる」と教えてもらって、毎回忠実に黒を入れてるんですよ。デビューするまでカラーを描いたことがなかったので、試行錯誤しながら、担当に言われたことを素直に取り入れてやってましたね。

「月下の君」(2002年~2004年)

作品紹介
「源氏物語」の光源氏と、彼が愛した少女・紫の君が、1000年の時を経て現代の日本に……? 光の君の生まれ変わりである葉月が、紫の君の生まれ変わりである舟と出会い、すれ違い傷つけ合いながらも運命の恋に翻弄されるラブストーリー。
嶋木あこ
コメント
最初は普通に「『源氏物語』を描いてみて」と提案されたんですが、無理だなと(笑)。こちらからお願いしてファンタジーっぽい方向で描かせてもらいました。和装は大変そうに見えるかもしれないですが、高校生のときに大和和紀先生の「あさきゆめみし」が好きだったので、大和先生を真似てがんばっていたら意外と楽しかったんです。このとき一生懸命考えながら描いていたおかげか、今は割と楽に描けているので、この頃の努力は無駄じゃなかったのかなと思います。
「月下の君」

第1話の扉イラストです。絵を描くための知恵がなかったから、(色がはみ出さないように保護する)マスキングをせずに馬鹿正直に、地道に色を埋めていってますね。この辺りから手の描き方を気にするようになりました。手がしっかり描けていると、ほかが多少ヘタでもちゃんと描けているように見えるかなと。

「月下の君」

これは連載が始まったときの表紙イラスト。男子キャラの和服の柄は、色を塗った上に白黒原稿用のトーンを貼っています。「むちゃくちゃ大好き。」のときに比べると目と眉、まぶたの隙間が狭まってますし、ヒロインのアイラインの厚みも全然違いますね。

「月下の君」

和装の柄って描くのが大変なんですよね。今だとパソコンで素材をペッと貼ることもできますけど。薄衣の部分は色鉛筆を使って表現しています。この頃はさらに髪の毛の描き方が細かくなってますね。あとはこのイラストにもちゃんと黒を入れてる。まだ以前の教えが残ってますね(笑)。

「僕になった私」(2005年-2006年)

作品紹介
高校入学を目前にしたある日、名門高校に通うはずだった双子の兄が失踪したことを知るヒロインの桃子。すると母は、桃子を男として全寮制の男子高に送り込み……。同室の伊藤くんと内緒の恋を育むラブコメディ。
嶋木あこ
コメント
これはいわゆる少女マンガらしいお話で。Cheese!っぽい作品を描いた挑戦の時期でした。正直……あんまり好きではなかった(笑)。この作品に関してはもとの原稿も捨てちゃったんですよ。データもあるし、もう使うこともないかなと思って。もちろん画業の中でこの作品から得たものもあります。「ヒカルの碁」が流行ったこともあり、絵の描き方は小畑健さんから影響を受けていましたね。
「僕になった私」

だいぶ絵が上達してきた感じがします。ヒロインの描き方が変わってきましたね。頬や唇に色を塗っているので、女性らしさが出てる。これは新連載が始まったときにCheese!の表紙になったイラストなんですが、まだ先のストーリーまで決まってない中、「とにかく男をいっぱい描いて」と言われて。だから作中にこんな人(左下)は出てこない(笑)。