コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第12回 椎名軽穂「君に届け」

“孫”みたいにキャラクターを愛でる

風早に「壁」はないけど「ライン」はある

──風早くんは、連載開始頃の「超爽やか男子」というイメージから、巻を重ねるごとに、ヤキモチを焼いたり、人間らしい魅力があふれていきました。風早くんについてどんな思いをお持ちですか。

風早

風早は、龍とかピンとかケントに比べたら普通の男の子なんじゃないかなと思って描いてます。龍は少女マンガにしかいないかなと思うので。私はあんまりリアルな人間っぽいキャラクターは描けなくて、風早もやっぱり「少女マンガの男の子」ではありますが、言うほど爽やかでもないでしょうしね(笑)。風早は、基本は引いた目線で、広範囲に人とか物事を見ていて。だから割と博愛主義だったり、一定以上は踏み込まないみたいな感じかなと思います。壁はないけどラインはあるんですよね。

──壁ではなく「ライン」!

で、その分人に対して冷静で、冷たいといえば冷たい部分もあるんでしょうね。ただ自分の目の前のこと、自分自身のことについてはなんにも見えないっていうか。爽子は風早の目の前にいるから、爽子のことに関するといろいろ見えないことが多いんだろうなって思います。

──なるほど……確かに、あれだけいろいろ周りが見える風早くんが爽子のことになると見えなくなるのはそういうことだったんですね。

はい。頑固でわがままで、至らないのが風早のいいところかなと思います。なにげにケントに心を開いているので、なんかよかったなと思います(笑)。ちづに対しては、ほとんど男友達に対するノリで接していますね。

──風早くんだけでなく、龍、ケント、ピン、と読者それぞれが「この人いい!」と思える男子キャラがいるのも大変楽しいです。それぞれの男子について、改めてどう思っているか教えてください。

龍と千鶴。ケントとあやね。

龍は、先ほども言ったように、少女マンガにしかいないかなーとは思います。あんまり完璧だとかわいくないので抜けてる子でいてほしい(笑)。思ったことしか言わないし、しないので、描くのにあんまり悩まないかな。ケントは、兄貴肌で他人のことをほっとけない人。なんでこんなに女の涙に弱いかなーって思います。幸せになってほしいなと思うけど、たぶん勝手に幸せになるだろうなと。以前アニメのアフレコにお邪魔したときに、ケント役の宮野真守さんが「ケントは報われるんですか?」って聞いてくださったんですけど、ケントとあやねのその後の展開がすでに決まっていたので、煮え切らない返事をしてしまったような気がします……。宮野さん、あのときはすみませんでした!

──そんなことがあったんですね! ではピンはいかがですか?

ピンは、「大人ポジション」なので20代にしては老けてるなと思いますが……キメッキメなカッコいいピンは恥ずかしいから見たくないので、アホでいてほしいと思います(笑)。どのキャラも、至らない人でいてくれた方が、個人的にはいいですね。

爽子とくるみは同じ重さでいてほしい

──23巻で、あやねちゃんが「いつも本気じゃない」自分とついに向き合って、決意し、行動に移した姿が感動的でした。あやねちゃんにはどんな思いをお持ちですか?

「君に届け」23巻より、自分と向き合い本気になろうとするあやね。

あのエピソードは、私も印象に残っています。あやねが決断するための材料が揃って、その上でどう決断を描くか、ちゃんと描けるのかな?と思ったんです。あやねは、主人公としては絶対に描かないタイプだと思うので、描けてよかった。悩むともう本当にめんどくさいので、好き放題やればいいなって思う(笑)。ケントとも、自分を壊したい、もうひと伸びしたいんだー!みたいな時期じゃなくて、落ち着いた時期に恋愛のタイミングがきていたら、かわいいカップルになってたと思うんですよね。普通に、穏やかに好きになったと思います。あやねは、自分は優しい人間ではなくて、千鶴や爽子の方が優しいって思ってるけれど、相手が男でも女でも、好きな人にいわゆるお母さん的な優しさで接することができるのは実はあやねかな?って思います。爽子も千鶴もそこそこ勝手ですからね。

──なるほど! 確かに懐が深い感じがします。千鶴に関してはいかがですか。

「君に届け」2巻より、爽子とすれ違いショックを受け怒る千鶴。

千鶴は、最初思い描いていた千鶴像よりもボーイッシュになりましたね。ちづにもやっぱりアホでいてほしいです(笑)。2巻あたりを描いてたころ、この子はショックなことがあると怒るんだな、と気づいてからかわいらしく感じるようになりました。龍に対して、恋愛相手としてどう向き合うのかというのが最大の難関でしたが、とりあえずちづも龍もおつかれさま、お幸せに!という感じです。

──ここ最近の流れでより思うのですが、くるみちゃんというライバルの存在が、あやねちゃんやちづとはまた違った力を爽子に与えてくれている気がします。くるみちゃんという女の子に対してどんな気持ちをお持ちですか?

「君に届け」11巻より、爽子のよきライバルとなったくるみ。

くるみは……くるみはなんていうか、かわいいんですよね。どっかから、かわいくなりましたね。どこだろう? 汚いこととかもして、子供の頃の自分だったら心から嫌いなキャラクターかもしれないんですけど。河原和音さんが、「くるみちゃんは爽子ちゃんのことをキッと見上げてるイメージ」と言っていて、ああそうそう、そういうイメージ!って思いました。なんかこう、ちっちゃいんだけど負ける気はなくて……そして爽子もくるみから目をそらさずじっと見てほしいみたいな……同じ重さでいてほしいみたいな……。

──同じ重さ、という感じ、非常に伝わってきます。

マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 特集一覧・連載作品年表はこちら
第1回 河原和音
第2回 咲坂伊緒
第3回 神尾葉子
第4回 中原アヤ
第5回 森下suu
第6回 あいだ夏波
第7回 やまもり三香
第8回 水野美波
第9回 幸田もも子
第10回 宮城理子
第11回 佐藤ざくり
第12回 椎名軽穂
第13回 小村あゆみ
第14回 いくえみ綾
第15回 ななじ眺
第16回 八田鮎子
番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー

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椎名軽穂(シイナカルホ)
椎名軽穂

10月23日北海道生まれ。1991年、別冊マーガレット(集英社)にて「君からの卒業」でデビュー。同誌での読み切りを活動の中心にしていたが、2003年に長期連載「CRAZY FOR YOU」が開始すると、天然で冴えないヒロインが懸命に恋する姿が読者の共感を呼び話題に。2005年、同誌にて「君に届け」を読み切りとして発表。好評を受け翌年より連載開始となった。陰鬱な外見とは裏腹に純粋なヒロインに魅せられたティーンエイジャーが続出し大ヒットを記録。2008年度第32回講談社漫画賞少女部門を受賞したほか、アニメ化、実写映画化もされた。


2016年1月22日更新