ワインリスト読んでるときの俺の気持ち

椎名軽穂　……うーん。

──椎名さん、さっきからモジモジしていますが（笑）。

YO-KING（真心ブラザーズ）　こういう取材はあまりないんですか？

椎名　ないですー（モジモジしながら）。

──ホントに大ファンなんですね。

YO-KING　今度のツアーもチケット買っていただいたそうで。しかも2日間。

桜井秀俊（真心ブラザーズ）　えー！ それはそれは。ありがとうございます。

──椎名さんは以前から、真心が北海道に来るたびライブ会場に足を運んでいたそうで。札幌の会場に実はマンガ家さんがいた、ってのはヘンな感じですよね。

YO-KING　不思議な感覚ですね。でもやっぱりライブにはいろんな職業の方が観にきてくれてて。ときにレストランなんかで帰り際に「ライブ行ってますよ」とかささやかれたり。先に言ってよ！みたいな（笑）。ワインリスト読んでるときの俺の気持ち、どんなんだったかわかるか！

一同　アハハハハハハ！（笑）

YO-KING　でもね、そういうことがあると歌い方にも幅が出るというか。たくさんの人が集まってくれてるけど、ここにはいろんな人生を歩んでる人がいるんだなと思うと、歌に対する考え方も変わってきますね。最初の頃は女性のお客さんが9割だったけど、だんだん男性の人も増えてきたし。あと、親父ほどの年齢ではないけど50は過ぎてるよねっていうおじさんが3人ぐらいでいて、一緒に歌ってくれてたりすると幸福な気分になりますよ。おじさんキャンディーズって呼んでますけど（笑）。

桜井　ラン、スー、ミキが（笑）。

YO-KING　あれ？ 今日立ち位置違うぞ、みたいな（笑）。

「君に届け」と「君にだけ」

──最新アルバム「Keep on traveling」に収録される「君にだけ」が、実は椎名さんの作品「君に届け」にインスパイアされた楽曲とのことで。それで今日はこうして、椎名さんがお住まいの札幌で鼎談をしましょうという話になったわけです。

YO-KING　そうそう。きっかけをお話しすると、まずKi/oon Musicの有能女子A&Rが（笑）、僕らにいろいろとマンガをおすすめしてくれるんです。その中に「君に届け」があって、それで読んでたら、登場人物が真心のツアーTシャツやトレーナーを着てたのを発見したんですよ。

──見覚えのあるトレーナーが（笑）。

YO-KING　そうそうそう。「おーっ！」と思って。スタッフはそれに気付かず（笑）、単に面白いマンガとしてすすめてくれただけで。

椎名　今回のお話をいただいたとき、最初は「勝手にマンガに使って訴えられるのかな」と（笑）。私の中では、この登場人物のお兄ちゃんが真心のライブに行ってて、そのお下がりを着てる設定なんです。私、実際にあのトレーナーめちゃめちゃ着てたんですよ。2～3年ぐらい前まで着てたんですけど、さすがに穴が開きすぎちゃって（笑）。

──同じく今回のアルバムに収録されている「サニー」は、桜井さんが小山宙哉さんの「宇宙兄弟」にインスパイアされて作った楽曲なんですよね。ナタリーでは「サニー」が配信リリースされた際に、真心のお2人と小山さんの鼎談を掲載しましたが、桜井さんはこのとき、いいライブを観て曲を書きたい気持ちになるのと同じように、マンガでも同じような衝動に駆られるんだとお話しされていて。そして今回はYO-KINGさんと。

YO-KING　そうですね。とはいえ40男なんで（笑）、さすがに完全にマンガの世界観に入り込むことはできないですけど。こういう世界があるんだなあっていう、カルチャーショック的な。

──あの甘酸っぱい青春世界を描くんじゃなく、自分なりの甘酸っぱさを表現するという。

YO-KING　恋愛はもちろん音楽の大事な要素なんで、大きい意味でのラブソングとしてとらえました。

──真心のアルバムに自分の作品からインスパイアされた楽曲が入るというのは、ファンとしてはえらいことですよね。

椎名　……えらいことですよ。「どうしよう、泣いちゃう！」と思ったんですけど、聴いたらすごい、ニヤニヤしちゃって（笑）。

──そもそも「君に届け」というフレーズは、「RELAX～OPEN～ENJOY」（1998年発売の7thアルバム「I will Survive」に収録）の歌詞から取られてるのかなと思ったんですが、実際はどうなんですか？

椎名　そうなんですよ。以前の連載作品を描いてるときに「RELAX～OPEN～ENJOY」の歌詞の世界観がすごくいいなと思っていて、その頃に「あ、次の作品は『君に届け』ってタイトルにしよう」って、付箋に書いて机にペッて貼っといたんです。……ホントにすいません。

YO-KING　いえいえ（笑）。僕らも全然そういうことあるんで、わかります。「あれ、これってあの曲のあの部分だよな」ってCDができあがった後で気付くこともある（笑）。