コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第11回 佐藤ざくり「マイルノビッチ」「たいへんよくできました。」
“這い上がる女子”の描き応え
上がっていくほうが描き応えがある
──「たいへんよくできました。」のぼたんは“ぼっち女子”でしたが、「マイルノビッチ」のまいるはおブス女子、「オバカちゃん、恋語りき。」の音色はおバカな怪力女子と、ざくり先生の作品は主人公の子がマイナスからスタートを切るケースが多いと思うのですが、これは何か思うところがあるんでしょうか。
クラスの端っこにいる人とか、弱い、下のほうの人を描くのが好きなんだと思います。なんでもうまくやれる人が主役だと話が盛り上がらないんです。
──なるほど。初期作「otona♥pink」の主人公は、クラスで目立つタイプの子でしたね。
勝ち組の子でしたね。たぶんその頃は無理してたんです、私も(笑)。結局そういう子を描いてもスカッとしないというか……上がっていくほうが描き応えがあることにだんだん気がつきました。
──ぼたんもまいるも、弱い立場の子ではあるけど心根がキレイというか、まっすぐで一途ですね。
そうですね、さすがに主人公なので(笑)。言うときは言う、度胸だけはある感じです。
──キャラクターたちは、ご自身に似ている部分もありますか。
自分にないところは描けないと思うので、似てるところはあると思います。全部のキャラにちょっとずつ自分が入ってるかな。
──甘藤くんは、どの辺りがざくり先生ですか?
あ、自分が入ってるっていうのは女性キャラだけですね。男キャラは、出会った男の人やテレビで見た人の一部を抽出して作ってます。見かけもだし、インタビュー読んで「こんな人なんだ」って浮かび上がってきた印象を内面に投影したりとか。甘藤くんは誰でしょうね。田舎のヤンキーの人かな……。マイルドなほうの。
マイルドヤンキーを描きたかった理由
──短編集「少女、少女、少女なの。」でも田舎を捨てて都会で芸能界入りを夢見る少女の話を描かれていて、「マイルドヤンキーを描いてみたかった」と綴っていらっしゃいましたね。
本物のヤンキーや、本物のマイルドヤンキーはつらくないと思うんですよ。でも私の作中のあの人たちは本物じゃないからつらいんだと思うんです、田舎にいることが。本で読んだり、そういう人がいじられてるバラエティとか見てると、自分もそのときは笑うんですけど、その後に「なんだかなあ」と思ってしまって。
──最近だと、海水浴に訪れる“パーリーピーポー”なはっちゃけた若者たちに一句詠んでもらって、スタジオで鋭いツッコミが入るというようなバラエティ番組も話題になりましたね。
まさにあれです! めっちゃ好きなんですけど、テレビを消したときに、ちょっと悲しい気持ちにもなって。笑いにしちゃっていいのかな、この人たちこそが一番純粋なんじゃないのかな、と思っちゃって。
──どこに目を向けていても、そういう人たちの存在が目に入ってくるんですね。
はい。たぶん、自分が笑ってしまっているからだと思います。例えば散歩してても、目に入ってくる人のことを無意識にバカにしてるなーってときがあって。オシャレな人を見たらオシャレだなって思うけど、完璧な人っていないから、「あの服にあの服合わせる?」みたいなのを無意識に考えちゃってる。
──「ボーダーにストライプかよ」みたいな。
そうそう。でもよく考えたら「ああ、今のって悪口言ってたのかな」と思うと、「よくない散歩だったな」って思う。でもそんなことをまったく思わず歩く人も世の中にはいっぱいいて、そういう、他人を笑わない人こそが、ボーダーにストライプ着てる人だったりするんですよ。だからちょっと自己嫌悪な気持ちになります。次回作もそういういじられてしまっている人を描こうとぼんやり思ってるんですけど、悪口ばっか言ってる人にしようかなって今思いつきました。悪口いっぱい言っちゃうけど、それを悩む子にしようかな。
──まさにざくり先生を投影したようなキャラになりますね。
そうですね。新しい連載を始めるたびに、主人公がどんどん自分に近くなる(笑)。
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佐藤ざくり(サトウザクリ)
9月20日生まれ。大阪市出身、京都市在住。2001年、マーガレット(集英社)に掲載されたNEWまんがゼミナール入選作「同じ星に生まれて」でデビュー。同誌にて2008年より「おバカちゃん、恋語りき」を、2011年より「マイルノビッチ」を連載。2014年より”ぼっち女子”を主人公とした「たいへんよくできました。」を連載する。そのほか著作に「MiLK」「otona♥pink」「少女、少女、少女なの。 佐藤ざくり短編集」などがある。
2016年1月22日更新